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2003年05月23日(金) 湖国で燃えろ!!春季近畿地区高校野球大会(2)

インターバルの間に初めて訪れたこの県立彦根球場をウロウロと探訪する。テレビで観ている分には西京極を遙かに上回ってそうな構造物というイメージがあったのだが、実際のそれは思っていたよりしょぼかった。しょぼい、といってもNPBの試合なんかを誘致するには何も不足しないスペックを十分に持ち合わせている野球場ではあるのだが。まあ私個人が勝手に物凄く立派な球場と思い込んでいた分だけの落差がしょぼさを感じさせただけの話である。逆に言えば、西京極を過小評価し過ぎていた、という事になろうか。あちこち回っていたら尿意を催してきたのでトイレに行き、誰もいなかったのでついでに駅から早足で歩きまくっている間にすっかり汗まみれとなった顔を洗う。便所の水ながら、心なしか無臭で気持ちいい感じの水ですっきりする。それが琵琶湖のお膝元だから、ちょっと遠出してきたから、という先入観によるものに違いはないが、浄化された滋賀県民の下水が幾分か含まれていて、夏は墨汁の様な臭いのする我が京都府の水道水よりは確実に上質の水なんだろう。

さっぱりとした気分でスタンドに戻る。やはり春季大会というのは相当に人気がないようで、移動するにも困る程の観客はおらず、席が探しやすい。結果、バックネット裏中央出入口の真上という上等なシートをゲットする事が出来た。よっこいしょ、と尻を降ろし、周囲を見渡す。バックスクリーンの向こうには先程歩いてきた道路が走り、高さの揃わない駅前商業地のビル群がごちゃごちゃと建ち並んで少々うるさい。折角、国宝の彦根城が南西隣にあるのだから、どうしてセンター方向に天守閣が見える様な造りにしなかったのか不思議に思う。それだけで集客効果があるかどうかは判らないが、プロ野球や各種大会を誘致する際に球場の付加価値としてアピール出来る様な気がするんだが。

さて、間もなく試合である。第2試合は平安高校対比叡山高校、真宗本願寺派と天台宗の代理戦争である(んな事言ったら第1試合も宗教対決だし、京都の有名私学対決なんてみんな宗教対決だが)。ま、鎌倉大乗佛教系と密教系が、某巨大新興宗教とその敵対宗派みたいな険悪な関係にある、なんて聞いた事もないけども。ほぼ同時に一塁側と三塁側で坊主頭の少年達が合掌礼拝してグラウンドに駆け出していくのは清々しくもあり滑稽でもある。関西は坊さん系の強豪校が多いので見慣れた光景ではあるが、他地域の人からすりゃあ、ひょっとしたら奇妙に見えるかもしれない。

両校のシートノックが行われる。それにしても、平安の原田監督のノックは見ていて惚れ惚れする。堅守平安を象徴する試合前の一シーンだろう。そのノックの間、スタンドにはいつもの様に校歌が流れていたのだが、何故か平安の時にはそれが鳴り終わって暫く経ってから再び♪む〜ら〜さ〜きにおう〜 く〜もの〜か〜なた〜、とスピーカーから流れ出してきた。何故に一番が2回も(高校野球用に一番だけが入ったテープなんだろうけど)、どうしてそれを最後まで(機器操作の誤りで連続再生してしまったが、途中で止めると格好悪いので全部流した、とか?)という疑問を我々観客に抱かせつつノックが終了し、両校のボールボーイが仲良く放水ホースを持って水を撒く。グラウンドを綺麗に慣らしてくれた整備員の皆さんが撤収し、両チームの選手がダッシュの構えをしながら一列に並ぶ。それまで騒がしかった場内も急に静かになる。生観戦でいちばんワクワクする瞬間。が、一向に審判員の皆さんが出てこない。往々にしてよくある事だが、ワクワクした状態で静寂がずっと続くと何故かイライラしてくる。きっと自身に集中力がない故なのだろうけれども。そんなこんなでいよいよ試合開始である。

1回表、近畿大会秋春連覇を狙う平安の攻撃。おっ、京都大会でも上に勝ち進まないと滅多に来ない(何せ、この秋の近畿大会も地元開催にも関わらず決勝まで全試合やって来なかった)吹奏楽部が応援してるぞ。でも、同じ応援テーマなのにちょっと迫力に欠けるのが正直悲しい。まあ、京女や東山に京都学園といった府内各校の友情応援で質的にも数的にもボリュームのある甲子園大会のそれと比べてやるのは可哀想だけど。今日は鳴り物の応援があるからいつも声が嗄れるまでアカペラで応援している控え部員達はさぞ嬉しかろうと三塁側スタンドを見てみると何かいつもと様子が違う。あのお馴染みの特大赤メガホンを誰も手に持っていない。人数分のメガホンを用意すると移動時にかさばって仕方がないからなんだろうか、今日は荷室に楽器も入れんにゃならんし(ちなみに球場横には平安学園のバスが2台だけ停まっていた)。しっかし、青々とした坊主頭の少年の集団が音楽に合わせて一心不乱に手拍子しているのは少し滑稽な風景である。そんなこんなを観察しているうちに平安が先制、なお一死満塁。さあ、選抜八強の平安が大西投手の立ち上がりを攻め込んで一気に勝負を決めてしまうか、という局面であるのだが、平安の応援スタンドはしーんとしている。おいおい、ブラバンの連中はよチャンステーマ吹いたれやー。静寂のまま、プレーは続いている。何してんねん、早く、早くぅー。そうこうしている間に後続がファーストライナーでゲッツー、チェンジという最悪の展開に。この実に幸先の良くないスタートが、この日の試合の流れを決めたような気がしてならない。

さて、春の京都大会をエースの服部くんを温存して勝ち抜いてきた平安の本日の先発は背番号12をつけた日笠くん。三番手以降といえる番号を背負っているとはいえ、やはり強豪の投手陣の一角を担っているだけあって、なかなかいいピッチャーである。初回は危なげなく相手打線を封じ込める。しかし比叡山とてれっきとした強豪校、なめられてたまるかと早くも2回に日笠投手を捉え、二死満塁。続く長尾くんもヒットを放つ。同点打で済むと思われる浅めの当たりだったが、ライトがその打球処理に手間取っている間に二塁走者まで生還してしまう。堅守の平安らしからぬプレーにより、叡高が労せず逆転。以降、平安サイドからすれば走者を出しながらも得点には至らないという嫌なムードで試合が進んで迎えた5回裏。比叡山は馬場くんが大活躍。見事なセーフティバントで出塁しチャンスメイクしたかと思えば犠打で二進した後に三盗を決め、更にチャンスを拡大。彼の頑張りが呼び水となったのか、叡高打線はそこから3連打し2点を追加。6回には二死一三塁で二盗の間にあっさり本盗を決めて1点、7回には4番石暮くんがレフトスタンドに叩き込むという効率の良い加点の仕方で6−1に点差を拡大。8回に平安は2点を返して意地を見せるも既に時遅し。結局、終始比叡山のペースで進んだ試合はそのままゲームセットを迎えた。

この試合、本気モードで必死に勝利を掴みに行った比叡山が夏に向けて戦力の底上げを重要テーマとして試合に臨んだ平安に勝っただけ、という見方も出来るだろうが、私的には少し平安はこの夏大丈夫かいな?また昨年みたいに無様な負け方するんとちゃうやろか?という不安がよぎるばかりの試合内容だった。まずは投手陣。この日は日笠くん、井上くん、芝村くんという3人の3年生投手がマウンドに上がったが、全て叡高打線に打ち込まれた。失礼な物言いだが、例年平安以上に打線の非力さでの敗戦が目立つ比叡山の打撃陣に13本ものヒットを食らっている様では、昨夏の成美みたいなチームと当たった時にはちとやばいのではないだろうか。夏の連戦を勝ち抜く為にもエース服部くんを途中できちんと休ませられる控え投手陣の存在は言うまでもなく必須だろう。加えて守り。この日はあまりにもしょうもないミスが多すぎた。6回の本盗なんて、口があんぐり状態。京都一の守備力を誇るチームがこんなことをしていては、春の甲子園出場で慢心しきっている、と批判されても仕方がないだろう。そして何よりも打撃。背番号17を付けた1年生の池田くんがこないだまで中学生とは思えない様な三塁打を打ってその存在を大きくアピールした程度で他に特筆すべき様な事は何もなし。いや、各打者が別に不振だったという訳ではない。問題は、安打数は比叡山と同じながら残塁数11という見事なまでの打線の繋がらなさっぷり。強打者が揃っていてもそれが線にならなければゲームには勝てまへん。まあ平安からすればこの日は悪いところを全て出し切った、ダメ出しするにはちょうど良い試合内容だったと言えましょうな。各自課題を克服すべく、亀岡で地獄の練習頑張ってくれい。

反対にいいところがいっぱい出ていたのが比叡山。13安打4盗塁6得点、そして甲子園八強に対して3失点、と打って投げて走ってみんな大活躍。滋賀大会準決勝でライバル近江にコールド負けを喫して以降の暗いムードが一気に吹っ飛んだのではないだろうか。特に、打たれながらも要所を締めて相手打線を封じ込めた2年生バッテリーには大きな自信が生まれただろう。来年はチームを甲子園に導いてくれるかもしれない(今年は、と書きたいけど、今シーズンの近江は恐ろしく強いしなぁ〜・ω・)。


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