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2002年07月09日(火) Body Language

仕事の帰り、いつもの電車に乗り込んだ。目の前に女子高生が横を向いて立っていた。私の頭の中では夕飯のおかず、ワイシャツのアイロン、粗大ごみなの蛍光管などが渦巻いている。・・ふと気がついたら目の前の女子高生がちらちらと私を見ている。私の視線が気になっているようだということに気がついた。さっきから気にしているようで何も気になっていないのは私のほうであるということにようやく気がついた。しっかり彼女の方に顔を向けながら頭の中ではピーマンと納豆がしわしわのワイシャツと仲良く共演している。

 私もよく経験するが、人が顔をこちらに向けていると、自分がじっと見られているという錯覚を起こすことがある。何か視線を感じて(何なのよ!)などと思って振り向くと、その人は顔はこちら向きなのに全然違うところを見つめてたりして、(ありゃ)と思わずひとりで恥ずかしくなるといった経験だ。

多分その女子高生もこれと同じような感覚なのだ。ただ、あまりに私が同じ姿勢でボーッとしているので多少いらいらしはじめているようだ。私としては無駄なエネルギーは使いたくない。視線を足元に落した。まずい!そこには彼女のかばんが置かれていた。女子高生は今度はそのかばんを片足でポンと蹴った。

(おねんさん、
  わたしはあなたにいちゃもんつけてるわけじゃありませんって。)

(んとにもー、
  わかってるけど、おばさんすこしむこうむいてもらえません?!)

(だから、あんたのことみてるんじゃないって。)

(あー、きぶんわるっ)

(いしきしすぎよ)

などと、無言の会話だ。

 降りるべき駅に着いた。女子高生にとっても下車駅だった。彼女のあとから電車を降りながら初めてその後姿をじっくり眺めた。几帳面に整えられたポニーテールにブルーのリボンがきっちりと飾られていた。彼女がエスカレータを上るのを確かめて私は階段を上ることにした。一段落した気分だった。
 
 と思いきや、今度は私と同じくらいの年齢背格好のおばさんが懸命に階段を駆け上がってきて私の横にピッタリとくっついた。私としても乗り継ぎの関係で多少急いではいたが、おばさんと競争をする気は全くない。おばさんは負けまいとするかのように息を荒げて私の真横を離れない。

(おばさん、どうぞおさきに。きょうそうじゃないんだから)

(えっほ、えっほ)

(だから、ならばなくてもいいでしょ)

(えっほ、わたしだってならびたくてならんでるわけじゃないしー、
                         えっほ、えっほ)

(ん、とにもーへんなかんじ)

などと思いながら改札口にたどり着いた。わたしは右におばさんは左にと分かれた。

 次の階段を上りながら、ふとBody Languageという言葉が浮かんだ。
全く見ず知らずの人と会話をした、それも言葉を使わずにだ。
こちらが会話をした気分であったのだからあちらも同じような気持ちになっていたに違いない、なぜかそんな気がした。
これは面白い。Body Language だ。そう思うと今度は楽しくなってきた。

全く同じひとつの事柄なのに、取りようによってはいやな感じにも面白くもなる。
ものごと心の持ち様で好いも悪いもどっちもありだ。
どっちもありなら好くて面白い方がいい。


Hiroko |MAILHomePage