OH GREAT RABI RABI

コンピューターおばあちゃん達
2003年06月30日(月)





飛行機工場から少女の集団が続々と出てくる



彼女らは一様にまばたきをせずにブルーベリィのクレープを食べている



クレープを食べおえた少女から順に両足をそろえ飛びたっていく



その背後からキバウサギが大きな袋を持って近づいてくる






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コンピューターおばあちゃん達は出荷されていく過程で



二百五十六袋のざらめせんべいと八十五個のこんぶ飴を消費した



次の週に出荷されたコンピューターおばあちゃん達はその倍をたいらげた



ぼくは来月の誕生日にキャンディオレンジのコンピューターおばあちゃんを買ってもらう







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とくべつ美しくはなかったがもっとも優しい少女は



飛びたつことができなかった



ブルーベリィが足りなかったのだ



うずくまって泣く少女にクレープ屋の青年が駆けよって



チョコレイトのクレープを差しだした



そして二人は滑空する少女たちを見あげながら



わざと口元を汚しながらクレープを食べた







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朝起きると、ぼくの祖母はコンピューターおばあちゃんになっていた。



中指のゆびぬきに触れるとかすかな音をたてて起動をはじめた。



コンピューターおばあちゃんでインターネットに繋ぐと、



いつも勝手にらくがんに関するサイトを開いてくれる。






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グレイ・ラビットは電信柱の影に棲む。



その時点ではまだ牙ははえていない。



たてぶえを吹きながら子どもが電信柱の影を踏んだとき、



グレイ・ラビットは解放され、キバウサギとなり



大きな袋を引きずって少女飛行機の捕獲へ向かう。







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コンピューターおばあちゃん達は宇宙船に搭載され



宇宙へ向かった



戦争がはじまるのだ。













口角をあげて、マイムマイム
2003年06月25日(水)





森は、穏やかに



わたしの方向をむく



太陽は妬み



平かな砂漠を広げていく







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犬は来ない。



口笛は陸兵の銃に狙われている



尖らせた瞬間の唇は砲弾に砕かれる






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犬は庫内。



しずかに凍っていく犬の背中を撫でながら



ぼくは融点の位置を記録する






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でっかい扇風機のうえで



逆走しながらマイムマイムをしよう






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かもめはやわらかにしんでいくので



わたしがすくうひつようはない







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ダイヤモンドの四角に配置されたトランプの兵隊のうち



ダイヤのトランプ兵は入れ子のパラドックスに苦しむ






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「わたしの四角に各々わたしが配置されていて



さらにわたしは四角のひとつに配置されている」






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めくらましの術を使って夏が終わった

















エスメラルダの幻日、鐘は閏う
2003年06月18日(水)






せむし男はうつろう



増してゆく鐘の幻聴をせおいながら



白昼



せむし男は地面の下へ消えた







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発音してはいけない単語は



空気漏れに紛れて



詩の冒頭を占領する、






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トランプ・レディ



椅子をよこしてくれませんか



トランプ・レディ



ぼくに砂糖の壷をまわしてください



トランプ・レディ



オードブルは済みました



トランプ・レディ



今日の肉は人魚ではありません



トランプ・レディ



食事のあとはさようならですよ



ベッドは川べりに運んでおきましたから






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肉巻きシンドバッドはモアにさらわれて



コンビナートに落とされた



ぼくたちは知らずにダイヤ入りハンバーガーに舌鼓を打つ






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さようなら、だよ。




さようなら。




もう一度発音して、






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巨大な翼はせむし男をさらって



回廊の中心に降ろす。



頭を抱えて丸まっていたせむし男は



顔をあげて目のまえを阻む女の名前を呟く。



その声の震えよりも



女の名前は繊細である。



女の立ちかたはそれよりさらに、













くじら子さんと合挽
2003年06月14日(土)






電池切れのズボンの集会。



いびつなほどに完全な円陣をつくる、



それは児童公園の冷水機を中心に。







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櫛の雨が降るので



幌を張ることが出来ません



馬たちはあんなに駆けていくのに、






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馬が欠けていく。



失うまいと わたしは必死で宙を掻いたけれど



黒耀石の眸はブラックホールの引力で加速する






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内股の少女は崖が終っても歩きつづける。



ぼくはひたすらに彼女の後頭部を記憶する。






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結局何もくぐもらなかったんだね、と


のっぺらぼうは微笑する。


わたしも微笑んで同意する。


わたしたちはもう何日も雨に閉じこめられている。






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水のみ場に抱きついた少女が砂化していく。


やがてしずかな砂場が湧いてくる。







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偉大なるウサギに疎かな表紙が出来てみました。










水面から黒猫が産まれる
2003年06月12日(木)






しなやかな湖にて、誕生



夜の忘れ形見





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イメイジしてごらん


と 青年はIMAGINEを歌いながら


少女を抱き終え


ドライヤーから一切合切を盗み去った


少女はイメイジを続けている、






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したじきの翼で飛ぶのだ。


静かな雷が起こり、


叢は逆立つ、






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ミシン目の少年は


とうもろこしを喉に詰めて


鳥のような姿になったが


やはり飛べなかった






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わたしをダビングしてください、


と 少女はプールに沈んでゆく。






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青猫はぼくを忘れていなかった。


名前をまちがえられたって平気さ。











地中海だった人と大阪で会食
2003年06月11日(水)






全てにうんざりだよ、


と 彼は砂糖壷をまるごと飲みほす。


わたしはフォークの先をねじって螺旋にしている。


鳥が最初から炭火焼きになって落ちてくるんだぜ、


と 彼はウエイターを警戒しながら云う。


わたしは螺旋の数を確認する。


とっておきの話をしようか、


と 彼はグラスの内部に波をたてる。


ああ、と わたしは呟く。


彼はこれから30分間、スパゲティのゆでかたについて語る。


わたしはこっそり息を漏らしてフォークの先をほどきはじめる。


螺旋の方向をまちがえてしまった。







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少年は少女にはたらきかける。


それを動力に、少女はプロペラを回しはじめる。






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宣誓 に値する言葉、


タイム・ウイング


ぼくは


いいえ、


わたし は 、






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ピジョン・ミルクで死んだ子どもは



最期の瞬間まで母親とキスしていた。






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沁みてくる、詩を見つけました。


わたしのイメージ。無声の、すりきれた八ミリフィルム。


何度も、思う。


晴れやかな哀しみ。






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大阪の朝の、いちばん好きな場所。


明けていく空に、獣たちの声がとけるように響く、


そして首長竜のように居る、タワー。


環状線が好きです。


ゴシック体の数字と廃墟と物干しさおの景色が添う。


そして憧れの青空カラオケ。


維新派の作った映画館。


朝の光に混じった埃のように


混沌としながらも透明な、


このまちがぼくは好きです。





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今日から冬が来るまで対岸には渡れません


橋が北へ発ってしまったので





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「カモメ橋の伝説」


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ぼくの青猫、



雨が嘘をつきます



それでもぼくたちは耳をたてるのですね?









プリンティッド・シーズンズ
2003年06月10日(火)






憶えている平和。


叢はゆるやかに沸きたつ。


季節


リピート、





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翁草を育てすぎてしまった



まわりの全てが老いてゆく



ベッドの足が折れる、







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わたしの凧は



あなたのカイトと



空中でからまって



降りだした雨を含みながら



おだやかに墜落してゆくのです





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ああ、そらがちかい







あなたは じめんのうえでこわれながらつぶやいた。





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わたしは確実に声の届く空を持っていて、



それでもかえってくるこだまを待って、



果てしなく鼓膜を張る。






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予定調和の季節が来ます。



そしてぼくは再び愛することを叶うよ、タイム・ウイング。












メロンパンライフ
2003年06月09日(月)





ねえ



いいかげんに眼を積むのをやめたら、クスバート






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巨大メロンをパンに変換した罪で


指名手配された彼は


静かの海に泳ぎついた。


膨張したパンはとっくに宇宙を作ってしまったので


彼はクレーターをかじって自分を慰める。








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平面宇宙で生まれたミソサザイは


高度を変えずに飛ぶ


彼は巣を知らない







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扇風機でキスの練習をしていた少女の唇は腫れあがり


太陽にも触れそうだった








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ぼくは芽を摘んでなどいないよ、


あたらしいともだちを作っているんだ。






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わたしは、左眼で


少年のちいさな手のなかで自分の右眼が転がるのを見ている。


その眼はラムネの瓶から取りだされたように輝いていて、


わたしの左眼ははじめて涙ぐむ。


今日は湿気ているので


やがてそこから、しずかな泉が湧いてくる。











さようなら、六月という女の子 (そしてビニイルハウスの幻想)
2003年06月03日(火)





六月一日にぼくは死のうと思った




同じ日に紙飛行機を飛ばすための塔が建てられた






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彼は霧のなかを出航する。



わたしがはりさけそうな眼で手を振るのは



艦船の名があの人の名前だからということに



彼は気づかない。







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まっしろな虎はちりぢりに


この国を細々と占めていく、





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ハーメルンの笛がきこえたとき



両足をそこなし沼にとられていた少年は



世界を背負って歩きはじめた。






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家がくらりと揺れたとき、


少年の妹は靴下を解く手を止めて顔をあげた。


彼女は一昨日産まれたばかりだったが


その耳はもう笛の音をとらえない。


ほどかれた靴下の毛糸は、


明後日産まれる彼女の娘の為に編みなおされる。






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紙飛行機のための塔が建てられた日




ぼくは死のうと思った














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「ビニイルハウス」





まくらをやぶって そのなかに

とじこめた の、


食虫植物のイメージ。
つるからつるへの幻想
さばく、


光合成 と呼んだ
あなたのては うすみどりをしていて
わたしのてのひらからすりぬけてゆく
たいようはえいえんに沈まない、


いろの果てのいろをした
はなびらを
すくっては すくっては
ひざに積もらせて
(楽器をつくろうとしていたの、)


リリー と発音できなかった
いつも
リギー、リギー
せばまったのどのおくで
わたし、


まよなかに目がさめて、
ゆめのつづきで
三月の朝と六月の池の共通点について
かんがえた。
ぬるいひえこみ
しめりけ
水仙、


かぜはない。


乾いたはなは
どうぶつのおとをたてる
けれど
あなたは植物だった、


(笛でひまわりはこちらを向く?)


けれど、
はなはもう おとをならさない
かぜはしんでしまった
まくらがないので
ゆめは もう みない


ねえ、リギー
まぶしくて 匂いしかみえないよ。













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