再生するタワゴトver.5
りばいぶ



 青年劇場「アトリエ」パンフ掲載文。

「人を見つめる」

世界は沈黙し続けたのではなく、何もしなかった。
覚えていなくてはいけない、世界最大の悪は「ごく普通の平凡な人間」が行う動機も邪心も悪魔的な意図もない悪、だ。

ハンナ・アーレントは言う。考えることで人間は強くなる、破滅に至らぬよう、絶望的な状況でも考え抜くことを。
思考することができるから人間なのであって、
考える能力を持っていることが人間であるとゆうことで、考えをなくすとゆうことは、人間であることを拒絶することになる。理性が必要な世界。
理性を失うことが狂気へと繋がっていることを歴史は雄弁に物語る。

フランスでは終戦後四半世紀近くヴィシー政権の役割と当時の国民の反応について語ることは、殆どタブーだった。戦勝国となったフランスは対独レジスタンスの行為だけを専ら強調し、国民の大多数がレジスタンスに参加協力したとゆう神話をつくった(1995年シラク大統領「ユダヤ人迫害における国家の罪」を認める)。そんな中、書かれた本(1979)だ。
グランベールは「不条理劇」の作家性を、この「母」のドラマに隠し入れ、人そのものを冷静な醒めた眼で書分け、「犠牲者に、なぜあなたは犠牲者なの?」と問いかける不条理を浮かび上がらせようとしている。そしてその犠牲者を作り出すのも人間であることを静かに、暗示もしている。それでも、そんな状況下でも、「人を信じる力に溢れた『アトリエ』。」
人間がどうなっていくのかは結局人間にかかっている。
あの時代、あの国で、あの状況下でちゃんと選択の余地を持てたのか。
この時代、この国で、この状況下でちゃんと選択を僕らはしているのだろうか。

忘れていはいけない、「今」を選んでいるのも、結局自分であることを。
時代に翻弄されながら、大きな意思に揺り動かされながら、
ある論理の強要に慣らされながら、ある意味現状に対する不満を呑み込んだり、文句を言ったり、諦めたり、そのことを嘲ったり、笑ったり、
登場人物たちのように豊かに「生きる」ことに貪欲でいられるのか―

遠くヨーロッパ、おフランスはパリ、
おかれた状況も、おいやられている現状も、時代も国民性も、全て違うところにあるようで、ありながら、「彼女ら」「彼ら」は非常に僕たちに似ている。
めんどくさい事はなしにする「自分」、
常識とゆう装置に価値判断をゆだねる「自分」
恋に恋する「自分」
独り占めしたくなる「自分」
思い通りにならないと嘆く「自分」
子どものことで一喜一憂する「自分」
下世話な「自分」
他人のせいにする「自分」
場の空気を一番に考える「自分」
明日やろうと先延ばしする「自分」
日曜日の夕方には憂鬱になる「自分」
支配してみたい「自分」
隠し事のある「自分」
考えるのが億劫な「自分」
手を貸す「自分」
見て見ぬ振りする「自分」
相手を思いやる「自分」
嫉妬する「自分」
知らない価値観を怖いと思う「自分」
違うと排除して安心する「自分」
誰かと繋がりたいと思う「自分」
誰かに認められたい「自分」

そして相手を識ることでしか、身近な問題と捉えられない「自分」

人を見つめ、自分を見つめる。
そして思考する。

ユダヤ人迫害のなか日記を残したエレーヌ・ベール(ユダヤ系フランス人、1945年ベルゲン・ベルゼン収容所で死去。24歳)はこう記す(「エレーヌ・ベールの日記」抜粋)。

不意に、わたしの人生がすべて消え去り、自分の中に感じる無限の可能性もそれと一緒に消滅するなんてこと…
「死」が世界に降り注いでいる。
神が課する「自然の死」と人間たちが「つくった死」、
あっていいのは一つ目の「死」だけだ。人間が人間から生命を奪う権利はない。

…当たり前のことだ。
でも、当たり前でないのはどうしてなんだろう。

白人至上主義と反対派の衝突を受けたオバマ元大統領のツイートじゃないけれど、「人は憎しみを習得する。憎むことを身に付けられるならば、愛することを学ぶこともできる。愛は憎しみに比べ、人の心に自然に生まれるものなのだから。─ネルソン・マンデラ」
そうなれないのはどうしてなんだろう。

個性煌めく登場人物と共に泣き笑い、想像力の翼を豊かに広げよう。

どうぞ最後までお楽しみ下さい。


藤井ごう




2017年09月25日(月)



 片方チームの終わり。そして。

「アトリエ」片方チームの終わり。
疲れからの手落ちはあるけれど、抜群の集中度とチームワークで、
会場はいい緊張と緩和で舞台の空気に包まれる。
諸事情あって、各所に迷惑をかけながら連日ホールに来るコトになっているのだが、
それすらも、ほんの数ミリ単位かもしれないが、ワーワー言われながら、前進している。人が伸びていく様を目撃できる贅沢を沢山味あわせてもらっている。しかし、悲しいかな客席の空席。。。
後半に来ての一番の空き。。

これは、面白くない芝居の客席ですよね、面白いのに、勿体無いっすねぇ。

とは、かつてR-viveで一緒した俳優の発したセリフ。
本当にそうだな…
見てもらわなきゃ、演劇は成立しないのだ。。。
も少しなんとか手を打たないのか。
そして、諸般の事情にのり、
とにかく現場で一番売ってやろうと思ってお客様に来てもらっている。
そして殆ど実際そうなっている。でも私は集団の人ではない。
今回ダブルで、一度観て、もう一本観たいと言ってくれる人もいる。
惨状聞いて、友人にオススメしてくれる人もいる。

せめて、いい雰囲気の客席で千秋楽を迎えたいものだ。

やっぱり何度目になっても、ここは、演劇の聖地。心して臨みたい。
明日14:00紀伊國屋ホール
まだまだお席あります。
まだご予定立ててない方、是非。

2017年09月23日(土)



 アトリエ、休演日をぬけ

休演日に、スターダス、
そして今日20日は、朝一番からO大の秋学期が始まる。
大人しくそちらにかまけていられないのである。
先の打ち合わせもストップしている。
とにかく、今、新宿に運んでくださる方々に、
どれだけ上質なモノを提供できるのか。
難しいの先へ、
命かけるのである。
女優陣のチームワーク(日本人のいうそれではなく、適所で個人が立ってプレイできていること)は日々上がっている。
公称は休憩含みの2時間55分だけれど、実は2時間50分になっている。
稽古で本当の意味で掘り下げてきたモノが身を結ぶ時。
足りていない掘り下げがあるならば、言い訳せず、甘えず、見直すべきだ。
つい18日にとある学校で迎えた「冬物語」(本番←やっていたんかい!このスケジュールで…、原作シェイクスピア演出わたし)じゃないけれど、己の限界だと思うことを認めて、その先への努力と踏込む勇気を持って欲しいと思う。卵だからできる、とか、そうゆう事ではない。先へ本気で進もうとする姿勢があるかどうかだ。その姿は武骨でも美しいし、ガムシャラさがもっとあって然るべきなのだ。そしてその先にもっと豊かな物語が展開する。
しかし、客席はどんどんと寂しくなるようである。
ので、
これも、有無を言わさず伸ばすのである。観てもらわなくちゃね。
24日まで。
この先のチケットは、まだまだ売るほどあります。


青年劇場第117回公演『アトリエ』
(作=ジャン=クロード・グランベール
/訳=大間知靖子/演出=藤井ごう)

戦後パリ。小さな縫製工房で働く女たち。物不足の中でのやりくり、夫のグチ、子どものこと、噂話、恋愛、結婚…お喋りは尽きない。
戦争は過去のこと。でもまだ夫が強制収容所から帰らない女もいる。
語らない、語られない真実。それぞれが負っているもの―。戦時体験や民族の違いをどう乗り越えられるのか。
笑いと涙のなかに、確かなメッセージが伝わる名作。
『郡上の立百姓』で圧倒的な迫力とスケールで人間を描き、第19回千田是也賞を受賞した藤井ごう氏と青年劇場が、フランスを代表する現代劇作家グランベールの傑作で再びタッグを組みます。


【日時】
9月

21日(木)14:00/19:00
22日(金)19:00
23日(土)14:00/18:30
24日(日)14:00

【料金】
一般・5150円
U30(30歳以下)・3100円
中高生シート・1000円
※団体割引、障がい者割引あり。
※平日の夜、演劇人割引あり。
◎全席指定

【問い合わせ・お申込み】
チケットサービス03−3352−7200
ticket@seinengekijo.co.jp
FAX 03-3352-9418

作品へはこちらから→http://www.seinengekijo.co.jp/

2017年09月20日(水)



 「アトリエ」毎日新聞掲載。

青年劇場
「アトリエ」 消せない記憶に向き合う形描く
毎日新聞 2017年9月11日 東京夕刊

 青年劇場が15〜24日、フランスの現代劇作家ジャン=クロード・グランベールによる「アトリエ」(大間知靖子訳)を東京・新宿の紀伊国屋ホールで上演する。第二次大戦中にドイツ占領下のフランスで起きた出来事を背負う人々の思いが、縫製工房を舞台につづられる。演出は、昨年度の毎日芸術賞千田是也賞の藤井ごう。

 舞台は戦後のパリ。レオン(杉本光弘)とエレーヌ(名川伸子)のユダヤ人夫婦が経営するアトリエでは、夫が強制連行されたまま行方不明のユダヤ人のシモーヌ(崎山直子)、古株のマダム・ローランス(藤井美恵子)、年ごろの娘をもつジゼル(高安美子)らお針子たちがおしゃべりをしながら働いている。フランスのユダヤ人移送という負の歴史。「大きなテーマを背負っているんですが、同じテーブルで仕事をする女性たちが、子供や生活の悩みを話していて、そこは分かるなというところから世界が近づいていくと、ものの見え方が変わってくるかなと思う。読めば読むほど、よく書かれている本だと思います」。消せない記憶に、さまざまな立場の登場人物たちが、それぞれの形で向き合っていく。「書き分けは見事なものだなと思う。それをどこまでつかんで言葉を発することができるか。“おばちゃんたち”が、ワーワーしていて面白いなって思ってもらえれば」

 問い合わせは03・3352・7200へ。【濱田元子】

2017年09月12日(火)



 一週間後には開けている。

残すところ、一週間を切り、
でも、だからこそ、まとめるより先に大切なことがある。
なかなか浸透はしないけれど、
そこを信じられるかどうかだ。
こちらも演じ手も。
奥行を、何を言わんとして、誰を動かそうとして、
その場にいるのか。
距離に、放つ言葉に、
もっと繊細に。
そしてあくまで新鮮に。
稽古場は、それを大切にしてきたのだ。
ダブルキャスト、通せる機会も数回ずつ、一回一回を大事に。


芝居は見てもらわなくては成立し得ない。
噛めば噛むほど、すごいホンだな、と思う。
是非お時間許せば。

青年劇場第117回公演『アトリエ』
(作=ジャン=クロード・グランベール
/訳=大間知靖子/演出=藤井ごう)

戦後パリ。小さな縫製工房で働く女たち。物不足の中でのやりくり、夫のグチ、子どものこと、噂話、恋愛、結婚…お喋りは尽きない。
戦争は過去のこと。でもまだ夫が強制収容所から帰らない女もいる。
語らない、語られない真実。それぞれが負っているもの―。戦時体験や民族の違いをどう乗り越えられるのか。
笑いと涙のなかに、確かなメッセージが伝わる名作。
『郡上の立百姓』で圧倒的な迫力とスケールで人間を描き、第19回千田是也賞を受賞した藤井ごう氏と青年劇場が、フランスを代表する現代劇作家グランベールの傑作で再びタッグを組みます。


【日時】
9月
15日(金)19:00
16日(土)14:00
17日(日)14:00
18日(月祝)14:00
19日   休演日
20日(水)14:00/18:30
21日(木)14:00/19:00
22日(金)19:00
23日(土)14:00/18:30
24日(日)14:00

【料金】
一般・5150円
U30(30歳以下)・3100円
中高生シート・1000円
※団体割引、障がい者割引あり。
※平日の夜、演劇人割引あり。
◎全席指定

【問い合わせ・お申込み】
チケットサービス03−3352−7200
ticket@seinengekijo.co.jp
FAX 03-3352-9418

作品へはこちらから→http://www.seinengekijo.co.jp/

2017年09月02日(土)


2017年09月09日(土)



 9月に入って。二週間を切った「アトリエ」

夏らしくない8月を過ぎて
「アトリエ」は稽古佳境、連日の早回しと通し。
なかなか思うよには進まないけれど、豊になるべく、研鑽を重ねる
。わからないことに、簡単に答えが渡されるものではないし、そもそもそんなものに答えなんかない。それを埋め、越えようとする態度が、人物の魅力をつくる。考え、ぶち当たり、失敗を重ねるべきと思うけれど、効率ばかり求めるのは…、最近の特徴。でも、それでも、現場は真摯に向き合っている。全体は日々あがっている。
小道具(何しろこの物量がすごいのです)含め、現場を支えるスタッフワークは必見。
しかし、どうも離れ小島感がやはりあるのと、
だからとゆうこともあるだろう、こちらも売行き好調とは言えないようで。
芝居は見てもらわなくては成立し得ない。
噛めば噛むほど、すごいホンだな、と思う。
是非お時間許せば。

青年劇場第117回公演『アトリエ』
(作=ジャン=クロード・グランベール
/訳=大間知靖子/演出=藤井ごう)

戦後パリ。小さな縫製工房で働く女たち。物不足の中でのやりくり、夫のグチ、子どものこと、噂話、恋愛、結婚…お喋りは尽きない。
戦争は過去のこと。でもまだ夫が強制収容所から帰らない女もいる。
語らない、語られない真実。それぞれが負っているもの―。戦時体験や民族の違いをどう乗り越えられるのか。
笑いと涙のなかに、確かなメッセージが伝わる名作。
『郡上の立百姓』で圧倒的な迫力とスケールで人間を描き、第19回千田是也賞を受賞した藤井ごう氏と青年劇場が、フランスを代表する現代劇作家グランベールの傑作で再びタッグを組みます。


【日時】
9月
15日(金)19:00
16日(土)14:00
17日(日)14:00
18日(月祝)14:00
19日   休演日
20日(水)14:00/18:30
21日(木)14:00/19:00
22日(金)19:00
23日(土)14:00/18:30
24日(日)14:00

【料金】
一般・5150円
U30(30歳以下)・3100円
中高生シート・1000円
※団体割引、障がい者割引あり。
※平日の夜、演劇人割引あり。
◎全席指定

【問い合わせ・お申込み】
チケットサービス03−3352−7200
ticket@seinengekijo.co.jp
FAX 03-3352-9418

作品へはこちらから→http://www.seinengekijo.co.jp/

2017年09月02日(土)
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