みちる草紙

2004年09月29日(水) レインウーマン

(ちるちるより転載・一部加筆)

今日は、ひと月毎の外来診療の日だったので
午前2時過ぎに自宅を出発し、100キロ離れた病院に向かった。
先月は、診察日当日の早朝に家を出たのだが、環八の通勤渋滞に遭い
危うく遅刻しかけたので、今回は道が比較的空いていると思われる
深夜帯に出かけることにしたのである。
ところが、生理中でどうも体調が思わしくなく、おまけに空腹に喘息の薬をのんで
車に乗ったせいか猛烈な悪心に苦しみ、途中路肩に止まって大幅時間ロス。
ゲェゲェ吐きながら午前5時頃、やっとの思いで湯河原に到着…。

『う〜ん。いいねぇ、骨の付きが素晴らしいねぇ、優等生だねぇ』
右足のレントゲン写真を見て、主治医がたたみかける如く褒めてくれる。
夜勤明けなのか、顔は脂ぎって、覇気のない幾分疲れた声で。
そこには、白く光る釘が容赦なく何本もぶっ刺さった右足首の骨が映し出されている。
執刀医ですら接合部分が見分けられないほど、ぴったりくっついているのだそうだ。
仮に、素人の肉眼でうっすら筋状にヒビが認められるようならば
それは骨の専門家が見れば実に激広な間隙であり、もはや「ズレ」と呼ぶ事態だと。
(練馬のヤブからこの病院に移った当初、アタシの腓骨はまさしくズレていた!)
経過は太鼓判の順調さであるが、絶っ対転ばないようにと念を押された。
そう言えば、数日前飲みに行った時は、薄暗いバーの、同じ段差で懲りずに
何度も何度もつっ転びかけたからな〜。本当に用心しないと(-_-;)

僅か5分ほどで終わった診察は午前中で、午後帰途についたのだが、折からの台風接近。
不眠不休でまたも吐気に悩みながら東名をひた走るアタシの車を取り巻くように
フロントガラスを叩きつけ、視界をかき乱す激しい雨が追いかけてくる!
そう言えば、去年初島に行った時も、やはり台風が本州に上陸していて
大時化の海を、転覆しそうになりながら船でどうにか渡ったものだなぁ。
出かける度に、毎回きわめて高い確率で台風や驟雨に見舞われるので
省吾ぱぱはアタシを『逆アマテラス』と呼び、同行を渋るようになった。

旱魃地域に行けば一天にわかにかき曇り、それこそ恵みの女神と崇められるでしょうか?



2004年09月26日(日) ジョニーの婚礼

今日は、ものまねタレントとして曲がりなりにもテレビデビューを果たした
ジョニーの、華燭の典が執り行われた。場所は横浜の某有名ホテル。

列席した省吾ぱぱによると、清原やら矢沢やら猪木やら田村正和やら
同僚のタレントさんがてんでに芸を披露し、類を見ない愉快な披露宴だったとか。
楽しそうでいいなぁ、そういうの。
しかし、結婚式の本来の主役であるべき花嫁は、すっかり見せ場を奪われたのでは…(^_^;)
なんて、つい余計な心配をしてしまう。何せダンナも派手だからな。

落ち着いたら、そのうち新宿のお店にお祝いを言いに行こう。

   



2004年09月17日(金) 紋次郎病院日記

今日、愛兎紋次郎が、突然下痢をした。
去勢手術以外ではまだ医者にかかったことのない、この健康優良児が。
原因に心当たりはある。
今月の初め、知人のお母さんがもんのために、野草をむしって束で送ってくれていた。
冷蔵庫の野菜室に入れておくと結構長持ちするため、小出しにしてやっていたのだが
今日も、野菜室の引き出しを開け閉めする音に反応して、もんがケージの柵に
とびついてきたので、少し萎れていたが、欲しがるまま与えてしまったのである。

もんよ、ごめん。これはアタシの不注意だわ。
何かあった時にかかろうとメモしておいた、近所(と思しき)動物病院に先ず電話。

「ちょっとお訊ねしたいのですが、そちらではうさぎは診てもらえますか?」

大概の動物病院は犬猫専門なので、うさぎのようなエキゾチックアニマルは
下手をすれば門前払いか、お座成りの治療で済まされることも少なくないと聞く。

『…うさぎさんはどのような症状でしょうか。
 内容によっては別の、うさぎ専門の病院を紹介しているんですが』

その“うさぎ専門病院”とやらには、実は前に問い合わせたことがあったのだが
去勢にかかる手術費や雑費の馬鹿高さのあまり、受診を思いとどまっていた。

「下痢してるんです。まだ食欲はありますが、手遅れになるといけませんので」
『それではすぐ連れて来て下さい。ご存知だと思いますが、うさぎさんの下痢は
 命にかかわる場合がありまして…』

そこでもんの Bitch-Goo-Saw をトイレットペーパーで拭い取り、ビニール袋に包んだ。
いやがる奴をハメてキャリーケースに追い込み、えっちらおっちら目指す動物病院へ。
ああ、アタシも一応怪我人なのに、こんな重たいもんを下げて歩かなきゃならないとは。
途中、交番で地図を見せながら道を訊かなければ、永久に辿り着けなかったことだろう。
豊島園通りって、アタシが思っていた道と全っ然違うんだもん!(-o-;)
したたか歩いていざ病院に着いてみると、そこはもう豊島園が目と鼻の先。
うちから歩いて来られるくらいだから、道理で花火もよく見えた筈である。

「先ほどお電話した星野ですが、うさぎを連れて来ました」

想像していたより小さな医院で、交通量の多い車道ギリギリという立地は良くないが
建物の中は小奇麗に整えられていた。待合の椅子は僅かに3脚。
先客がいなかったので、初診カードも埋めないうちに診察室に通される。
去勢の時に痛い思いを経験したもんは、当時の恐怖をツブサに記憶しているのか
案の定、キャリーケースの奥に引っ込んで出て来ようとしない。
仕方なくキャリーを傾け、滑り台を滑らせる要領で診察台に落とすと
看護婦さんがタオルを広げて受け止めた。もんはすっぽりくるまれ抱き抱えられる。
その台は、患畜を乗せればそのまま体重も測れるようになっており
近頃肥満傾向にあったもんは、小型のくせに1.7kgもあった。重い訳だ。

獣医師は『お腹触ると、この子いやがるかも知れませんけど…』
と妙に気を遣いながら、もんの腹に聴診器をあて
『腸の働きが弱くなっているみたいですねぇ』と小声で呟く。
この神妙さ、過去にうさぎを持ち込んだ客から何か猛抗議を受けたことがあるのかも。
持参した便を示すと、医師はそれを助手に渡し、一緒に別室に入って行った。
数分後、診察室に戻った医師から、PCモニターに映し出したもんの下痢便の
顕微鏡写真を示されながら説明を受けた。
便を水に溶いた上澄み液を調べたところ、未消化の繊維と、増殖した悪玉菌が
認められたというのである。

『餌は普段何をやっていますか』
「主にチモシーとラビットフードと水です。たまに果物や野草やドライパパイヤを」
『当分、水分の多い餌は控えて下さい。
 牧草はチモシーだけだと栄養が偏るので、色々混ぜたものを与えてみて下さい』
「それが以前、スーダングラスやローズマリーを混合したものをやってみたんですが
 全く食べないんです。匂いを嗅いだら蹴散らしておしっこかけて」
『そうですか。じゃあまあ、チモシーだけでいいですが…。
 ラビットフードは、当院でお勧めしているのは、ニッパイの…』
「あ、うち、ペレットはそれです!(嬉)」
『ニッパイのは、たんぱく質の配合がとても良いので…云々』

丁寧な先生ではあったが、説明が冗長で、アタシは途中から殆ど聞いていなかった。
取りあえずは一刻も早くもんを連れて帰り、薬を飲ませなければならない。
会計時、腸の働きを促す薬と、“紋次郎ちゃん”と書き込まれた診察カードをもらう。

『水に溶けにくいお薬ですが、注射器を使って、何とか工夫して飲ませてみて下さい』

さあ困ったぞ。こいつはおとなしく薬なんか飲んでくれるタマじゃないんだから。
途中もんの様子をキャリーの窓から覗き覗き、もと来た道を汗だくで引き返して
漸く家に着くと、すぐさまもらった粉薬を水に溶いて注射器に吸い取った。
もんをひっ捕まえて膝に仰向けにのせたが、暴れるわ遁走するわ毛が舞うわで
少しの間もじっとさせておくのは容易ではない。
更に、注射器の吸口を近づけた途端、奴はもんどり打って逃れようとする。
鋭い爪が生え、類稀な脚力を誇る後ろ足で、危うく顔を蹴飛ばされそうになりながら
何とか1滴唇に垂らしたが、あとは全力で拒絶するため、已む無く注入は諦めた(;´д`)

帰宅直後に、トイレに硬い糞をするにはしたが、普段の半分ほどの小粒が少量で
何としても一計を案じる必要があった。
もんの食い意地の汚さを逆手に取って、薬を飲ませることは不可能だろうか。
そこで、普段おやつを入れるのに使う器に、水に溶かした粉薬を入れ
ケージの中に置いて様子を見ることにした。
するともんは、すぐに器を覗き込み、先ず匂いを嗅いでから軽くペロリ…。
よし!そうだ!そのまま飲め!飲むんだ、もん!
果して、もんはピチャピチャと勢いよく薬を舐め始め、何と瞬く間に器は空になった。
それにしてもやけにおいしそうに…。甘い味でもしたのかなぁ(もんは大の甘党)。
苦戦を予期していてちょっと拍子抜けだが、ともあれ、一安心といったところである。

その夜、めきめき回復したもんの食欲は、日頃に増して旺盛であった。
とにかく、チモシーとペレットを交互に飢えたように貪り食い、水をガブガブと飲む。
おまけに、ケージの扉を開けると、断りもなく(いつもないが)ポンと外に跳び出して
部屋中を駆け巡り、UFOの瞬間移動にも似たジグザグ走りを思うさま見せつけた。
一時ドロドロだった便は見事、元のつやつやと黒光りした大粒の形状に戻った。万歳!
これは薬のあらたかな効果か、それとももんの若さに負う体力の故か。
見るからにもう大丈夫だなぁ。全く何て単純なんだろう、こいつは。

くたびれ果てていたアタシは、そのまま明け方近くまで寝かせてもらえなかった。


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