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JIROの独断的日記
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2010年06月05日(土) 菅政権に関する考察、その2。経済政策「増税で財政健全化と景気回復は両立可能」か。

記事1:財政健全化法案:菅財務相、増税の議論進める姿勢(毎日新聞 2010.04.13)

菅直人副総理兼財務相は12日、東京都内の日本外国特派員協会で講演し、

「増税しても、使う道を間違わなければ(お金が循環して)景気が良くなる」と述べ、

今国会への提出を目指している財政健全化法案に増税を盛り込む方向で政府内で議論を進める姿勢を示した。

ただ、増税の具体的な内容や時期には言及しなかった。

菅氏は「人気のあった小泉(純一郎元首相)さんでさえ、『自分が総理の間は消費税を上げない』と言って、

この(増税)問題を避けた」と指摘。「日本の政治家には、増税すると選挙に負けるというトラウマがある」として、

税制改革についての与野党協議の必要性を強調した。

増税で確保した財源は、環境や介護など雇用の創出につながる分野に充てる考えを示した。

その上で「財政健全化だけでなく、成長と社会保障のあり方も含めた国会での議論の場を作っていこうと準備している」と述べ、

財政健全化法案に経済成長や社会保障制度の将来像も盛り込む方針を示した。


◆記事2:<菅首相>「増税で成長」に布石 「ばらまき」見直す可能性(6月4日21時19分配信 毎日新聞)

先進国で最悪の状況にある財政の健全化を図りつつ、早期にデフレから脱却、景気を回復軌道に乗せる−−。

日本経済に突きつけられた難題を前に、菅直人氏は4日の民主党代表選で

「強い経済、強い財政、強い社会保障は一体として実現する方向性を示していきたい」と訴えた。

その具体策が「増税と成長の両立」論。背景には、消費税増税を含む税制抜本改革論議への布石にしたいとの思惑がある。


◆コメント:非常に難しい問題で、正直言って、私もどちらが正しいのか分からないのです。

菅政権に関する考察の第2弾は、経済政策です。

菅直人内閣総理大臣が、財務相時代から繰り返している持論は

「増税することにより、財政健全化と景気回復は両立できる。」

ということです。菅直人首相の持論とかきましたが、実際には、菅氏が副総理兼財務相の今年2月に、

内閣府参与に就任した大阪大学の小野善康教授(59)の持論と言った方が正確で、管氏は小野教授の「学説」が

(何故か知りませんが)気に入ったらしいのです。


景気が悪いときには、減税し、可処分所得を増やして個人消費を増やし、

さらに、財政支出によって、国が需要を創出して、おカネが回るようにする、というのが、

常識的な発想です。

不況の時に増税するとは、この常識の正反対を向いています。


◆小野善康大阪大学教授自身へのインタビューを読む。

こういうことは素人が要約しないで、つまり、言葉の断片を羅列しても、

全体として、どういう思想なのか分かりません。ご本人の言葉をそのまま知ることが大切です。

本来ならば、小野教授の論文を読むべきでしょうが、それは、我々一般人には、恐らく難しすぎる。

そこで、間接的ではありますが、ブルームバーグが小野善康教授にインタビューした記事が残っています

(http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920015&sid=ayctueSbZz3M)ので、そのまま転載します。
◆菅氏の「知恵袋」小野氏:金融緩和依存でデフレ脱却困難(Update1)(ブルームバーグ)(2010/04/16 14:58)

菅直人副総理兼財務相の経済アドバイザーとして2月に内閣府参与に就任した大阪大学の小野善康教授(59)は、

政府の金融・経済政策運営について、日本銀行の金融政策に依存した手法では、内需は喚起されず、

20年来続いてきたデフレ状況からの脱却はできないとの考えを示した。

小野教授は14日にブルームバーグ・ニュースとのインタビューで語った。

同教授は、日銀がコントロールできる貨幣量であるハイパワード・マネー(現金と日銀当座預金)と物価の関係は

「バブル(崩壊)以前はマネーを増やせば、物価が上昇する関係が成立していた」が、

バブル崩壊以降は全く物価上昇には効いていないと説明。

その上で「こうした状況で日銀が金融緩和して、デフレ脱却ができるわけがない」と指摘し、

日本がデフレ脱却で金融政策に依存してきた背景には

財政当局が増税で逡巡し、景気については日銀に押し付けたことが問題だった」と述べた。

参院選を控え日銀への政府の追加緩和圧力が今後さらに強まるとの見方がある半面、

小野教授を参与に指名した菅副総理の発言に微妙な変化を見てとる向きもある。

シティグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミストは、金融政策に対する菅副総理の発言は

「ここ1週間ぐらいトーンがちがう」と指摘。「日銀に対する政治圧力は基本的に弱まる方向」とみている。

実際、菅副総理は今月12日、都内の講演で「日銀は、金融緩和は一定程度デフレ対策には効果があるが、

ある意味では限界もあるという認識をお持ちのように思っている」と述べた。


増税してでも雇用創出を



小野教授はマクロ経済学が専門。1973年に東京工業大学を卒業、菅副総理とは同窓となる。

現在は阪大社会経済研究所の所長も務める。自民党・小泉政権下の構造改革には批判的な論陣を張った。

約10年前に雑誌の対談で知り合った菅副総理に請われ、2月26日付で参与に就任。

すでに5回ほど開催された幹部官僚を入れない政務3役などとの私的勉強会では日本経済に関する持論を説明したという。

同教授は、デフレを、物を消費するよりも現金を保有したいという志向の表れとみて、

政府が内需の源泉となる新たな雇用を創出することで、消費や資金の流れを良くする好循環を作り出すべきだと主張する。

そのため、政府が、不況期には増税してでも新しい仕事を創設し、逆に景気が良くなれば、減税し政府事業を減らすと約束することで、

消費が活発化し、デフレの脱却につながると説く。


不況期には増税、好況期には減税を



自民党政権下では、景気が悪化すれば所得減税や公共投資などの景気刺激策を打つことが慣例だった。

これに対し小野氏は「景気が悪くなると人々はお金を使わないので、増税して政府が事業を行い、人を雇い、

増税分は直ちに国民に返すべきだ」と主張。「今までは逆だったために、景気の波を大きくした」と指摘する。

一方で「民間がちゃんと物を買い始めたら減税すると確約すれば、民間は一生懸命、買うかもしれない。そうしたら、それで景気が良くなる」

との考えを示した。

菅副総理も12日の講演で、デフレの解決のため、「場合によっては増税をしても、使う道を間違わなければ景気が良くなると考えている」と述べ、

事務方に検証させていることを明らかにした。


小野教授は増税する税目について「私は所得税増税を主張している」と述べ、

「なぜかと言えば、所得税の方が累進的なので、消費性向の低い高所得者層から税金が取れる。

さらに低所得者層が受け取ったお金を消費に回せば、高所得者の所得にもなる」と説明。所得税の最高税率は

「今は4割だったが、昔は7割だった。小泉政権の実態は所得の高い人にお金を渡しただけだった」と述べ、

「最高税率は上げても良いと思う」との考えを示した。


政府支出の対象としては「必需品は皆が買っているので、それを政府が買えば、これこそクラウドアウト(締め出し)が起こる」と述べ、

そういう目で見て環境、介護、医療は良いのではないか」と指摘。また、環境税を創設し、その税収分を全部エコ製品のポイントの

補助金に充てる制度を作れば、「今までの機能に加えた環境製品が売れる」と述べ、全体として消費者の負担も増えないと述べた。

内需拡大で円安に



為替相場と日本経済の関係については「完璧に円安の方が良い」との見解を示し、

「円高が経済力の証拠という考えは全くの間違え」で、高度経済成長期の経験に基づくものだと説明。

一方で「今は1ドル=93円ぐらいだが、もっと(円安に)行っても不思議ではない」と述べ、新しい政策で内需拡大を実行すれば

「もっと円安になるだろう。そうすると日本企業は競争に勝ってくる」との見方を示した。

取材協力:日高正裕、下土井京子 更新日時: 2010/04/16 14:58 JST (注:太文字は引用者による)。

読むと分かる通り、菅直人首相の「増税→景気回復、デフレ脱却」という「思想」は

小野教授の「学説」を殆どそのまま踏襲していると言っても過言ではありません。

Googleで「菅直人 増税 景気回復」を検索すると約152,000件もヒットします。

素人も学者もそれぞれ「持論を展開していますが、小野教授の説に対して、

ネット上でも意見は真っ二つに割れています。


◆日経のコラムですら、正反対の意見が出ているのです。

日本経済新聞の「マーケット総合」欄に、「大磯小磯」という経済コラムがあり、

実名は出しませんが、論説委員か、ベテランの経済記者数人が交替で書いているものと思われます。

日経の他はともかく、「大磯小磯」は読む、という人は結構多いのです。


この「大磯小磯」ですら「増税が景気を良くするか」について、正反対の主張が述べられています。

一回目は、5月25日(火)に載りました。

◆増税は景気を良くしない


増税することで、むしろ景気が良くなるという議論が出始めた。菅財務大臣はこうした趣旨のことを述べて、

消費税引き上げを正当化したいようだ。しかしこうした奇妙な議論は、健全な政策論議をあまりに逸脱している。

日本の財政状況は深刻であり、いずれ消費税の引き上げが避けられないことは多くの人が認識していよう。

財政健全化努力がいまの政府に不足していることは明確だし、そうした努力不足が今後も続けば、

経済に破滅的な混乱が起きることだろう。したがって、こうした混乱を避けることによって経済を良くできる、という議論は成り立つ。

しかし、財政再建に根本的に重要な道筋は、まず成長をいかに確保して税の増収を実現するか、歳出をいかに抑制するか、

そのうえで税収をどう確保するか、である。


成長戦略がないままに、歳出の膨張を抑えることなく、増税するだけで経済が良くなることはあり得ない。

増税とは、民間部門から公的部門への資源の移動であり、その過程で国民の生活水準を引き下げる。

考えられるひとつのケースは、民間部門が支出を増やさない状況では、公的部門に資源を移し支出することで経済は拡大する、という場合だ。

これは、需要不足が存在する場合には正しいし、まさしくケインズが指摘していることでもある。しかし、あくまで短期の限定的な議論だ。

もうひとつは、社会保障制度などが整備されることで将来への不確実性が低下し、結果的に消費・投資が促進される、という理屈だ。

しかし、もし将来への不確実性が本当に家計の障害になっているのなら、個人年金などがもっと拡大しているはずだ。

国民が感じる不安の本質は社会保障ではなく、日本経済の競争力低下、さらには自分の所得獲得能力低下への不安である。


安易な増税理論を振りかざし、安易な増税を実行すれば、大きくて非効率な政府のままで、中長期の成長力はさらに低下する。

それは結果的に、国民の将来不安を一層高めることになろう。


気になるのは、財政制度等審議会でも菅大臣と同様の議論がなされ「増税=景気回復」が示唆されていることだ。

役所の隠れみのと言ってしまえばそれまでだが、審議会の有識者たちが成長戦略、歳出削減を十分論じることなく

権力にすり寄っているのなら、この国の将来への不安はますます募ってくる。(夢風)

これに対して、真っ向から反論する意見が、3日後、5月28日(金)の「大磯小磯」に掲載されました。
◆増税は消費を減らさない

増税は消費を冷やすという定番の批判は何を根拠に広まったのだろうか。

1つ目は完全雇用を前提とする新古典派理論である。

そこでは経済は能力いっぱいに生産しているから、政府が労働力を無駄な設備やサービスに使えば、民間が使える物やサービスが減る。

この議論で重要なのは、税金を取ることではなく、そのお金で政府が限りある物やサービスを使ってしまうことである。

政府が物やサービスを使わず、税収を民間に手当として配るならば、増税でも民間消費は減らない。



2つ目はケインジアンの消費関数である。消費はそのときの可処分所得に依存すると考え、だから増税は消費を減らすと主張する。

しかし、ここでは政府と家計の予算が考慮されていない。予算を考えれば、取った税金は歳出に回され、かならず家計に還流するから、

消費が減るわけがない。実際この理論でも、均衡財政での支出増なら、消費に影響しないことが示される。

最近の社会保障の議論では、消費税の増税分を社会保障に回せば、安心が得られて消費が増えるという主張がある。

しかし、お金を渡すだけの社会保障なら、もらえるお金の分、お店で払う消費税が上がるだけだから、

国民生活は楽にならない。結局、お金を回すだけで国民全体の安心が得られるはずがない。



増税して配るだけでは意味がないが、仕事を作って給与で払えば、設備や物・サービスが提供され、

所得も生まれて税収も入り、雇用も増えてデフレギャップも減るから消費も増える。

失業、需要不足、デフレ、財政赤字、介護や医療サービス不足などのすべてが改善するのである。



好況なら、民間が自律的に需要を作り、仕事を作ってお金を回す。不況は人々が不安で需要を減らすから、

このメカニズムの逆回転が起こる。だから政府がお金を集めて仕事を作るしかない。

仕分けで無駄を省くのは結構だが、それで職が減るなら、別にもっと効率的な仕事を作らなければ、無駄は拡大する。



意味のある社会保障とは雇用保障であり、それによって働く者とサービスを受ける者の不安を同時に解消できる。

高齢者でもまだまだ元気で働きたい人は多い。若者も働きたいのに定職に就くのが難しい。

増税して彼らの力を生かすことに使えば、不安解消と経済活性化につながる。(魔笛)

どちらの主張もそれなりに、論理性があるように思いますが、

私は現在のように家計の所得が減り、個人消費が伸び悩んでいるときに所得税の増税や、消費税の増税が

景気の拡大に結びつくとはどうしても考えられません。法人税の減税は鳩山首相の頃から話が出ていて、

これは、甚だ論理的ではないのですが、世界の他の国に比べて日本の法人税率が割高だから、というものでした。

しかし、それは各国の経済の基礎的諸条件(ファンダメンタルズと言います)が異なるのですから、単純比較出来ない

と思います。

また、増税が、財政健全化につながるのかというと疑問に思います。財務省が公表している
我が国の1970年度以降の長期債務残高の推移

を元に、こちらの方がブログで、毎年の長期債務増減額を計算していらっしゃいます。

増税による財政再建は可能か?

こちらを参考にさせて頂き、増税があった年を見ますと、1989年に初めて日本で「消費税」(3%)が実施されましたが、

同年の長期債務残高は、7兆5千億円も増加しています。

また、橋本政権時代、1997年4月1日、地方消費税の導入と消費税等の税率引き上げが実施されました。

この年度も、締めてみたら、長期債務残高は42兆8千400億円も前年より増加しています。


菅直人首相は、増税しても財政健全化と景気回復は両立可能だ、といっているわけですが、

過去のデータは、個人でもちょっとあぶく銭が入ると、すぐパーッと使ってしまう人もいますが、

国の財布も似たようなもので、余程考えて使うことと、支出額を監視しないと、債務が増えてしまう。

増税による税収増より多く使ってしまうことを示唆しているのではないか、と思います。

大変長くなりました。それでは。

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