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JIROの独断的日記
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2010年05月14日(金) 「佐渡裕さんを定期公演に起用 ベルリン・フィル 」←騒ぎ方が頓珍漢なのです。

◆記事:佐渡裕さんを定期公演に起用 ベルリン・フィル (日本経済新聞 2010/5/12 23:34)

【ベルリン共同】世界最高峰のオーケストラの一つ、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団は12日、

2011年5月に本拠地ベルリンで開く同楽団の定期公演で指揮者の佐渡裕さん(48)を起用すると発表した。

今年9月からの1年間の公演計画を説明する中で明らかにした。

日本人指揮者の同楽団の演奏会出演は、最近では小沢征爾さん以来。

ベルリン・フィルを指揮するのは同楽団の芸術監督のサイモン・ラトル氏ら著名音楽家ばかりで、

佐渡さんは世界のスター指揮者の仲間入りする。

公演は来年5月20〜22日の3日間で、演目は今年生誕80年を迎える武満徹(故人)の現代音楽作品

「フロム・ミー・フローズ・ホワット・ユー・コール・タイム」や

ロシアの作曲家ショスタコービッチの交響曲第5番を予定。

佐渡さんは京都市生まれ。師事した故レナード・バーンスタインに認められ頭角を現した。

これまで、ドイツのバイエルン放送交響楽団やパリ管弦楽団などで指揮し活躍。

日本では兵庫芸術文化センター管弦楽団などを率いる。

◆佐渡裕さんの話 

小学校の卒業文集で「20年後の自分」として書いたのが「ベルリン・フィルの指揮者」。その夢が本当に実現した。

今は興奮とプレッシャーが半分ずつ同居している感じ。耳の肥えたベルリンの音楽ファンを納得させられるよう演奏会を成功させたい。


◆コメント:佐渡氏には全く他意は無いが、マスコミの騒ぎ方が的外れなのです。

マスコミが今回何故大騒ぎしているのか、よく分かりません。

というか、クラシックの世界をよく分かっていない、知らないのです。

指揮者の佐渡裕氏は勿論知ってますが、生で彼の棒(指揮)による演奏を聴いたことがありません。

ですから、どの程度の指揮者か、判断出来ません。


しかし、兎にも角にも来年5月、ベルリン・フィルの定期演奏会を指揮することになったと。


それだけでは、何とも言えません。マスコミの騒ぎ方をテレビで見たり新聞で読むと、

まるで「分かっていない」ことが、よく分かります。佐渡裕氏には何の恨みも他意もありませんが、

あまりにもマスコミが頓珍漢なので、「分かっていない」と書いた意味を以下、説明します。


ベルリン・フィルに限らず、殆どのオーケストラには、呼び方は様々ですが、何年契約かで、

そのオーケストラを指揮する機会がもっとも多い指揮者と、ゲスト(客演)として呼ばれる指揮者がいます。

ベルリン・フィルは「芸術監督」というタイトルだった筈ですが、最近数十年の芸術監督は、

フルトヴェングラー、→カラヤン、→アバド、→ラトル、です。


一方で、芸術監督ではないけれど、芸術監督が指揮しない月の演奏会で、

一回ごとに契約するゲスト指揮者(客演指揮者と言います)がいます。


ゲストとは言え、天下のベルリン・フィルを振るのですから、一流の指揮者として、

既に名声がある人が殆どです。小澤征爾、マリス=ヤンソンス、ズービンメータ、バレンボイムetc.

(因みに今月は、前「芸術監督」、クラウディオ・アバドが「ゲスト」として呼ばれています。)

もしも、日本人の指揮者が、ラトルの後(サイモン・ラトルという今の芸術監督は2018年まで契約してます)に、

ベルリン・フィルの「芸術監督」になったら、それは勿論、大ニュースです。

「本当の意味」で「ベルリン・フィルの指揮者になる」とはこの、「芸術監督になること」を意味するのです。


百歩譲って、芸術監督にならなくても、小澤さんたちのような「常連客演指揮者」(そういうタイトルは存在しませんが・・・)

になったら、「ベルリン・フィルの常連(指揮者)の1人」と称して良いでしょう。

そうなったら評価されて然るべきですが、一回、初めて客演に呼ばれたからと言って、

「常連」になれるとは限らない。ベルリン・フィルが「大したことないな」と思ったら二度と呼ばれないのです。

ですから、初めて「ベルリン・フィルの定期を振らせて貰えることになった」=「ベルリン・フィルの指揮者になった」

ということではありません。


多くの指揮者は、一生に一度もベルリン・フィルを振ることなく一生を終えるのですから、客演に呼ばれたことは、

確かに名誉ですが、それ自体が「成功」とは言えない。結果を見なければ、何とも言えないのです。


◆日本人指揮者で、他にベルリンフィルを振ったのは小澤征爾さんだけではありません。

多くのマスコミ報道を聴いたり、読んだりする限り、知らない人は、

ベルリン・フィルを指揮した(することになる)日本人は、小澤征爾、佐渡裕の二人だけ。

と錯覚するだろうと思います。もしかするとマスコミ各社もよく調べないで、そのように思い込んでいるかもしれません。

だとしたら、それは間違っています。

確認出来るところでは、朝比奈隆氏。朝比奈隆 ベートーヴェンの交響曲を語る74ページ。
--(引用者注:音楽評論家東条碩夫氏)先生のベルリン・フィルへのデビューがこの「四番」(引用者注:ベートーヴェン交響曲第四番)だったそうですね。

朝比奈:そうなんです。1956年5月25日でした。

遠く溯ると、近衛秀磨氏。近衛家は藤原氏の末裔で何しろ天皇家と同じぐらい古い家で「貴族」だから、やることがすごくて、

ウィキペディアの近衛秀磨によれば、
1924年1月18日、かつて山田(耕筰)がそうしたように自腹でベルリン・フィルを雇い、ヨーロッパでの指揮者デビューを果たす。

従って、その記述が正しければ、山田耕筰もベルリン・フィルを振っている。

山田耕筰、近衛秀磨は、かなり有名な話なのだが、厳密に言うと、記録・録音が確認出来ません。

一般には殆ど知られていないが、貴志康一(1909-1937)は何と自作をベルリン・フィルで録音しています。

それは、今でも残っています。貴志康一 ベルリン・フィル 幻の自作自演集

これは確実です。

他には、岩城宏之氏。「フィルハーモニーの風景」18ページ。
ベルリン・フィルを初めて指揮したのは1963年である。以来ほとんど毎シーズン、同オーケストラの客演を続けてきた。

話がそれますが、岩城さんは生涯に一度だけウィーン・フィル定期を客演したことがあります。そのときのエピソードとして書いています。

ベルリン・フィルは何度も振ったが、ウィーン・フィルの壁は厚く、ほとんど諦めていた、というくだりです。

1977年2月、ウィーン・フィルから電話がかかってきて、当初予定されていた、ベルナルト・ハイティンク(旧:アムステルダム・

コンセルト・ヘボウ、現:ロイヤル・コンサルト・ヘボウという一流オケの指揮者)が急病で振れない。

代わりに振ってもらえないだろうか?というので、岩城さんは文字通り「飛び上がって」喜んだそうです。


話を戻します。


その他、ウィキペディアを読むと、若杉弘氏小泉和裕氏も、ベルリン・フィルを客演したとの記述があります。

残念ながら確認出来ません。誤解のないように書きそえますが、私は「ウソだ」とか「信用できない」と言いたいのではありません。

厳密にいうと、朝比奈氏、貴志康一氏、岩城宏之氏ほどの確証が、私の手許では得られない、ということです。


◆結論

要するに私は何を云いたいのか。


  • ベルリン・フィルの定期に日本人指揮者が客演で呼ばれることは、確かに小澤征爾氏以来初めてであるが、

    成功するかどうか(「常連」の客演指揮者になれるか否か)は、来年5月の演奏会の評価、及び、二度目以降があるかどうか、

    を見ないと何とも言えない(それには多分、早くても数年かかる)。

  • ベルリン・フィルを指揮した(する)日本人指揮者が小澤・佐渡両氏だけではないことは確実である。

ということです。

そして、更にのべるならば、この件に関してそれほど騒ぐのならば、

私は、昨年、何度も書きましたが、25年間ベルリン・フィルの第一コンサートマスターを務めた安永徹氏や、

日本人として初めてベルリン・フィルのメンバーとなり、定年まで30年間弾き続けたヴィオラ奏者、土屋邦雄氏、

さらに、現在在籍している、ヴィオラの清水直子氏、第1ヴァイオリンの町田琴和氏の事はどうして大きく取りあげ、

評価しないのか。



コンサートマスターの安永さんの偉大さに付いては、何度も書きましたが、

まずメンバーになること自体、普通は殆ど不可能なのです。

世界中から上手い人がオーディションを受けに来るので、これに合格することが至難である上に、

仮にオーディションに合格しても、それは1年間のプローベ・ツァイト(試用期間)の始まりであり、

一年後、「やはり、貴方は要りません」と言われるかも知れない。

コンサートマスターになるためには、さらに、コンサート・マスターのオーディションを受けで合格し、

更に、一年(安永さんのときは、色々オーケストラの事情もあって一年半に及んだ)のプローベ・ツァイトを

経て、本人を除く全楽員による討議と投票が行われ、その会議の出席者の3分の2を超える賛成票を得て、

初めて、正式に「ベルリン・フィルの第一コンサートマスター」に就任するのです。


就任しても、コンサートマスターとしてやはり相応しくない、と思われたらクビになる。

そういう世界で、25年間、第一コンサートマスターを勤め上げた安永さんの業績は、

我々の想像を遙かに超える、気が遠くなるほど大変なことです。これこそ、真に賞賛に値する歴史的事実です。

そういうことが分からないから、一指揮者が一度ベルリン・フィルの客演に呼ばれた、

ということだけで騒ぐ。

日本のマスコミも世間も、なにも分かっていないのです。



それよりも、「ベルリン・フィルと日本人」で今、注目すべきは、

昨年5月から第一コンサートマスターの試用期間に入っている樫本大進氏が、

「正式に」ベルリン・フィルの第一コンサートマスターに就任できるか否か、だと思います。

既に決まったのに、私が報道を見落としているだけかも知れません。

そうでしたら、情報をご提供頂ければ幸いです。

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