外国為替証拠金取引
JIROの独断的日記
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2005年12月09日(金) 東京証券取引所における、株取引誤発注問題に関する一考察

◆記事:東証、責任を否定=みずほ証券の失態指摘−誤発注問題

 

 東証の天野富夫常務は9日未明、みずほ証券がジェイコム株で誤った売り注文を大量に出した問題で記者会見した。

この中で同常務は、極端に多い売り注文数から誤発注を疑った東証が、

 注文取り消しを3回にわたって要請したにもかかわらず、実行されなかったと指摘。

 「東証の手続きに誤りはない」と強調し、みずほ証側の失態との見方を示した。 

 (時事通信) - 12月9日7時1分更新


◆コメント:昔の東京証券取引所なら誰かすぐに気が付いて注意したのですけどね。

 

 最初に、この大騒動とは関係がないが、ちょっと触れておくと、 東京証券取引所(東証)というのは、株式会社なのです。

 日本には、他に札幌、名古屋、大阪、福岡にも証券取引所がありますが、

 このうち東京、名古屋、大阪の証券取引所は株式会社なのです。

 だから、東証の常務取締役という人がいるのですね。

 株式に限らず、外国為替市場も、債券市場もルールは同じで、

 売買が成立(Done)したら、原則的に、取り消すことはできないのです。

 ただし、取引額がもっと小さくて、売買の当事者の数が少なければ、

 間違えて注文を出した市場参加者が相手を訪ねて、頭を下げて、

 買い戻し、或いは売り戻してもらうことが出来る場合もあります。

 一度も注文を間違えたことのないディーラーというのは、株でも、為替でも債券でも、いないと思います。

 ここで言うディーラーとは銀行、証券会社などでお客さんの注文を市場に取り次ぐ役目のひと、

 或いは、会社自身のおカネで市場でディーリングをして、

 収益を上げることを仕事にしている人を指します。



 今回は、「61万円で1株売りたい」というべきところを

 「1円で61万株売りたい」という誤った注文を出して、それが成立してしまったわけですね。

 ミス自体は、プライス(価格)とアマウント(量)を逆にしてしまったという極めてありふれたミスです。

 これは、株でも外為でも間違えたことが一度も無いディーラーを見つける方が難しいぐらいでしょう。

 株に関して言えば、以前は、外為や債券とことなり、実際に東京証券取引所という空間(建物)の中で、

 大勢の「場立ち」と言われる、売り買いの実務専門の人だけが実際に一堂に会して取引が行われていたのです。

 昔はよくニュースで株式市場の様子が映りました。

 あまりに人が多いので、大声を出しても取引所で注文を仲介する人に聞こえない。

 それで独特のジェスチャーで、銘柄、売買の別、希望する値段を伝えていたのです。

 これはこれで、非常に危ない方式で、勘違いにより、当事者の希望しない取引が成立してしまう、

 ということがやはりあったのですが、ただし、場立ちは皆プロですし、

 大勢が同じ場所に現実にいるわけです。ですから、今回のような注文を出したら、

 あまりにも間違いが明らかなので、誰かが気づいて「おい、それ、違うだろ?」

 という互いの監視というか助け合いというか、人間ならではの融通が利いたのです。

 違う会社であってもね。株の世界の人間の仁義とでもいいましょうか。


◆システム売買ならではの悲劇

 

 ところが、今は、株式市場も、外為のように、コンピューター端末を用いた取引なので、

 誰かが注文を出して、他の人が殆ど間を置かずにヒットしてしまったら、それで取引が成立する。

 システムによる売買は、取引内容の記録が確実に残るし、

 ある注文を複数の人が殆ど同時にヒットした場合、場立ちだとどちらが先か良く分からなくて揉める事もあったわけですが、

 機械なら、100分の1秒の違いでも判定できますから、そういうところは便利で安全になったのですが、

 その代わり、あまりにも、文字通り、「機械的」に売買が成立してしまう。

 昔なら誰かが絶対に「これは、おかしい」と取引所の係員に注意を喚起したでしょうけど、

 今はそれがない。おまけに、プロだけじゃなくてインターネット取引で素人が参加するようになったので始末が悪い。



 プロ同士ならば、このような明らかな注文ミスはヒットしないか、

 しても、みずほ証券が頭を下げてきたら、「ま、仕方ないか」と売り戻してやるでしょうけど、

 素人はネット取引で1株1円でジェイコム株を買うことにより、 後で大儲けしたと言って喜んでいるようですね。

 理屈で言えば、間違えた方が確かに悪いのですが、

 本当は、今回のような、他人の間違いに乗じて儲けるという、株の世界の「仁義」に反することはしないものです。

 ただ、素人さんだからそういう慣行が通用しない。

 株式市場が活況を呈するのは原則として悪いことではないが、こういう市場参加者が増えてしまったのが、

 システム売買が普及したことによる「悲劇」です。


◆システムの不備 取引権限設定はどうなっていたのか。

 

 株・外為・債券、いずれの取引でも、証券会社や銀行内では、

 現場の一人一人が一回に売買出来る取引金額(又は、株数など、何らかの単位で。)

 の上限を定めているはずなのです。

 それは任命簿に本人がハンコを捺していて、保管されているはずです。

 初めてマーケットに出る坊やは1,000株まで、とか、ベテランなら何万株、或いは何十万株とか。

 いずれにしても、一人あたりの取引限度額を低めに抑えておくこと。

 そしてそれをシステムで設定しておくことが絶対に必要です。



 このディーラーの限度額がいくらだったか分からないけれども、

 60万株などということは、まずあり得ない。

 だとすると、限度額がシステムに反映されていなかったということです。

 システムに反映するとは、例えば1万株の取引権限のディーラーがそれを超える量の注文をインプットしても、

 エラーになって、注文できない、という設定をすることです。

 そして、間違ってそういう取引をしそうになったら、直ちに、「ミドルオフィス」といって、

 取引を監視する部署(現場の売買する部署をフロント、取引後に売買の明細確認や決済事務を行う部署をバックオフィスといいます)

 がそれを認識できるような、アラームシステムを設置しておくのが常識です。

 今回はフロントの担当者に注意を促すサインが表示されたけど気が付かなかった、

 と新聞にあります。そりゃ、取引する人間じゃなくて、ミドルが監視していなくては、ダメですよ。

 まだ、事件の全貌が明らかになったわけではないが、

 みずほともあろうものが、そこはちょっとお粗末ですね。


◆東京証券取引所の責任

 

 株でもなんでも、、一瞬の判断ミス、勘違いで、大損失を出す可能性が常にあります。

 だからこそ、プロの世界、自己責任の世界であり、みずほが後始末をするのが当然なのですが、

 東京証券取引所とて、株式会社とはいえ、売買の場を提供する組織には監視義務がある。

 もの凄い数の取引がマーケットが開いている(場が立っている、といいます)間じゅう続くのですから、

 監視は大変ですが、それに対応するためにシステム化したのですから、やはり責任が無いとはいえない。



 問題の取引は木曜日に起りましたが、

 他の参加者はどういう事態かすぐに把握できなかったのです。

 そして、なにかヤバいことが起ったらしいというとき、

 ポジション(売り持ちか買い持ちかということ)はなるべくスクエア(プラスマイナス、ゼロ)にするのが原則ですから、

 買い持ちだった人が売り戻したので一時日経平均が300円も暴落しました。

 その後もどしたからよかったけど、結果論です。

 東京の株式市場は世界三大市場の一つなのですから、ここでの暴騰・暴落は、次のロンドン、ニューヨークに影響する。

 下手をすると世界じゅうに迷惑をかけます。

 個別銘柄の異常値を瞬間的に把握して、明らかにおかしい今回のような取引は、

 即座に売買停止出来るようにするべきです。


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