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JIROの独断的日記
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2005年11月18日(金) 「探査機はやぶさ20日着陸 世界初の岩石採取に挑戦」←「イトカワ」に着陸する「はやぶさ

◆記事:探査機はやぶさ20日着陸 世界初の岩石採取に挑戦

 

 宇宙航空研究開発機構(宇宙機構)は17日、探査機「はやぶさ」を20日早朝に小惑星イトカワに着陸させると発表した。

 日本が地球以外の天体に機器を着陸させるのは初めて。小惑星からの岩石採取は世界でも初めての挑戦となる。

 19日夜に降下を開始、20日午前5時ごろに最終的な判断を行い、同6時ごろ着陸する見通し。

 はやぶさは小惑星にレーザーを照射して精密に高度を測りながら降下。

 目印となる反射板付きボールを投下し、カメラでボールをとらえて自らの姿勢などを確認し、着陸する。

 地面に着いた瞬間に金属球を発射、舞い上がった岩石の破片をカプセルに収め、約1秒で再び上昇に転じる計画だ。(共同通信) - 11月17日17時13分更新


◆コメント:「イトカワ」と「はやぶさ」

 

 最近ニュースで「イトカワ」に小惑星探査機「はやぶさ」が・・・という情報をしばしば伝えてくるが、一般人にはピンと来ない。

 来ないけれども、かなり画期的なことである。

 太陽系の大きな星は勿論水星から冥王星までの9つだが、これは、むしろ例外的に馬鹿デカいのである。

 それ以外にもの凄い数の「星」が飛んでいる。直径100メートルぐらいから、直径100キロメートルの小さい星が太陽の回りを回っている。

 今まで約6000個の小惑星が発見されており、毎年、新たに数百個が発見されている。

 しかし、小さすぎて地球から発見できない直径1kmぐらいの小惑星は100万個以上もあるだろうと言われている。

 「イトカワ」、というのは、サツマイモのような形をした長い方の径が600メートルぐらいの大きさで、地球と火星の間で楕円軌道を描いて、それでも太陽を周回している「小惑星」である。

 それに向って飛んでいった「探査機」が「はやぶさ」である。

 イトカワの名は、日本のロケット工学の始祖、糸川英夫氏にちなんで付けられた。

 というか、発見したのはマサチューセッツ工科大学の地球近傍惑星(NEA=Near Earth Asteroid)研究チームで、命名権は彼らにあったのであるが、

 日本は、この小惑星に探査機を飛ばすことをいち早く決め、それに際して、日本で「ロケット」というものを初めて手がけた糸川氏の名前にしたい、

 とMIT(マサチューセッツ工科大学)に頼んで、申請して貰ったのである。

 ちなみに、これは、あまり意識されていないが、探査機の名前「はやぶさ」は、糸川英夫博士(1912〜1999)が戦時中設計した、当時他国もびっくりするほどの高性能を誇った戦闘機「隼」に由来すると思われる。


◆地球から3億キロ離れた500メートルの小惑星に着陸する

 

 この計画は、今ひとつ「派手さ」に欠けるので、一般の注目を浴びにくいが、実は先端技術の粋を結集している。

 なにしろ、20日、はさぶさはイトカワに着陸する地点は、地球から3億キロも離れたところにある。

 これは、光でさえ、到達するのに17分もかかる(ちなみに太陽から地球に光が届くのに8分を要する。我々が見ているのは8分前の太陽である。月でさえ、光が到達するのに1.3秒かかる)ほどの距離なので、リアルタイムで地球から操作出来ない。

 そこで、結論だけ言うと、記事にもあるが、はやぶさは自律航行といって、自分で自らの位置を認識し、さらに特殊なカメラを含む高度な技術を用いてイトカワを「自分で発見」して着陸するのである。

 はやぶさが地球を離れたのは2003年5月3日である。イトカワに着くまでに2年以上かかっている。

 これほど長く飛ぶことができるのは、イオンエンジンという私には到底理解不可能の新技術が使われているためである。

 分からないことを告白したままそのまま記述すると、イオンエンジンは、「推進剤キセノンを電波の力でイオンという電気を帯びた粒子にして、その粒子から電気を取って中性プラズマとして高速噴射し、 その反作用を推進力とする」エンジンであり、クルマのエンジンのように物を燃やさずに済み、しかも従来のエンジンよりも遙かに大きな加速度を得ることが出来るのだそうだ。

 また、はやぶさは最終的には先に書いたとおり「自分でイトカワを見つけ」て、それに接近してゆくのだが、最初、はやぶさを小惑星イトカワの方向へ向けるために、日本の技術者達は、はやぶさを一旦地球を離れた後、地球ぎりぎりのところをかすめるように飛ばせて、地球の引力を用いて方向を変える、「スイング・バイ」という方法を用いた。

 どうしてこういう計算が出来て、また、その通りにはやぶさを飛ばせる事が出来るのか、私など、またまた正直に言うと、説明を読んでも、ちんぷんかんぷんであり、世の中には頭の良い人がいるものだ、と つくづく感心した。


◆何故、そういうことをするのか。

 

 つまり計画の目的であるが、イトカワの地表から数グラムのサンプル(土の標本ですね)を持ち帰ることだ。

 地球のような大惑星では、太陽系誕生時から物質が大きく変化しているが、イトカワのような小惑星は太陽系が誕生したときの状態を保っていると考えられ、その表面からサンプル(といっても、ホンの数グラムである)を持ち帰ると、太陽系誕生や地球が形成される過程に関する研究に役立つことがほぼ間違いないからである。


◆サンプルの採集方法がまた、最新技術。

 

 はやぶさは、今、3億キロ離れたところで、自分でイトカワを発見して既に画像を地球に送っているが、最終目的は今、書いた通り、イトカワの表面から「土」(というのかね?)の標本を採集して、地球 に持ち帰ることだ。

 大きな惑星ならば、その惑星の引力を用いて着陸出来るが、イトカワは何せ、500メートルの小惑星なので引力は無きに等しく、はやぶさはイトカワに長時間へばりつくことは、出来ない。

 そこで、どうするかというと、20日の未明、つまり、今夜という日曜日の未明、2時頃、はやぶさはイトカワに着陸する。

 その瞬間、金属の球をイトカワ表面に向って発射する。

 そうすると、イトカワの表面から土ぼこりが立つでしょう?それを空中でキャッチしようというのである。すごいことを考える。

 繰り返すがこれは、地球からコントロール出来ないので、はやぶさが自分で判断して行うのである。

 サンプル採集後、はやぶさはまた2年かけて地球に戻る。そして自らは戻らず、標本の入ったカプセルだけを、地球に放り投げて消える。

 カプセルは減速しないで、すさまじいスピードで大気圏に突っ込むので、最終的には表面の温度が3000度にも達し、多分オーストラリア大陸に「落ちる」。

 無論、その高温と衝撃に耐えうるカプセルを作る技術がある、ということだ。


◆こういうことを行うのは、人類史上、日本人が初めて。

 

 そう。このたび日本がやろうとしている「小惑星に探査機を飛ばして、惑星のサンプルを収集して地球に戻す」という計画は人類史上初めてのことなのである。

 日本でこういう事をしている組織、アメリカのNASAに相当するのはJAXA(Japan Aerospace Exploration Agency,宇宙航空研究開発機構)といい、2003年10月1日宇宙科学研究所(ISAS),航空宇宙技術研究所(NAL),宇宙開発事業団(NASDA)の3機関を統合して発足したものである。

 JAXAのホームページは「JAXA」で検索すれば、当然ながら一発で見つかり、そこに、はやぶさに関する詳細な説明がある。

 Flashなど動画を多用して、なるべく素人にも何となく理解出来るように作られている。

 今夜、はやぶさがイトカワに着陸する様子はネット中継されるという。

 何せ、情報が届くのに速くても17分を要するのだから、「生」中継というのかどうか。不思議な話である。

 とにかく、日本には世界に冠たる頭脳が結集しているのだ。


◆糸川英夫博士のこと。

 

 糸川英夫氏は、東大工学部を出て、前述のとおり戦前戦中は飛行機を設計する人だったが、戦後はもっぱらロケット開発を手がけ、日本で最初のロケットを飛ばした人である。

 これが、「ペンシル・ロケット」と言って、素人目にはオモチャかプラモデルにしか見えない。

 手のひらにのるほどの大きさ、重さ、のものなのだが、宇宙開発技術者達には、これに対する特別な思い入れがあるようだ。

 一番最近スペースシャトルに搭乗して見事に任務を果たした野口さんは、このペンシルロケットを「持って」宇宙へ行ってきたほどである。

 技術者、科学者としての糸川英夫氏の功績は素人が軽々しく論ずるべきではないが、とにかく専門家の間ではものすごく頭が良く、発想が卓越しており、実行力があり、人格者だということでいまだに、「神様」みたいな、兎にも角にも滅多にいないほどの優れた人だったようだ。

 糸川氏が亡くなったときに、弟子の学者・技術者達が書いた文章がここに載っているが、如何に尊敬されていた方か、分かる。

 他方、このように才能豊かな人には、ありがちだが、糸川先生は多才な方であらゆる事に興味を示した。

 音楽好きでチェロを弾いた。

 また、大正生まれの日本人男性であまりこういう人はいないと思うが、大人になってからバレエ(踊りのバレエである)の正式のレッスンを受けた。

 ご本人は大まじめなのだが、マスコミはこういう事ばかりを取り上げるので、一般庶民は「変な学者」と思っていた。

 さらに、戦後、ロケットと平行して個人的には「ストラディバリウスを超えるようなバイオリンを作りたい」と音響学的な見地から研究に研究を重ねて、晩年ついに完成した逸話があり、これは、糸川先生ご自身による、八十歳のアリア―四十五年かけてつくったバイオリン物語という本に詳しい。

 一般人向けのエッセイというか啓蒙書も山ほどある。Amazonで「糸川英夫」で検索すると、未だにすごい数の著書が売られている。

 代表作は「逆転の発想」という本である。

 糸川博士は、最初のロケット、「ペンシル・ロケット」の発射実験をする際、水平に発射した。

 それは、調べていただくと分かるが、それなりの理由があるからだが、とにかく、凡人はロケットといえば、垂直に発射することしか頭に浮かばない。

 それを「水平に」発射するという着想が、殆ど天才的である。

 「逆転の発想」は、そういう先生が書いた本だから、常識を覆すようなことに満ちあふれているが、単に奇を衒(てら)っているのではなく、一々、合理的根拠があるのだ。

 代表作と言っても、文庫本で、厚さが1センチもない。

 頭がいい人は、余計なことを書かず、要点を分かりやすく書くので、糸川先生の本は大抵これぐらいの厚さなのである。



 きりがないので、最後に一つだけ。

 糸川博士は理論性の極致であるロケット工学の科学者だが、何と、西洋占星術を本格的に研究して、本を出している。今も買える。

 人の一生で、これほどずっと様々なことに好奇心を抱き続け、本格的に実行してしまい、それなりの成果を挙げることができるのか、と感動する。

 糸川先生の生涯には、ただ驚嘆し、畏敬の念を抱かざるを得ない。


2004年11月18日(木) 1.「北朝鮮で体制批判ビラ」←いよいよ、来るべき時が来たかな。2.ファルージャの件で政府に抗議
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