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JIROの独断的日記
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2005年10月24日(月) ショパン・コンクールに関係した、あれこれ雑記

◆コンクールってのは、勝ち負けじゃないです。

 

 コンクールというか、音楽とは本来、そのような対立構造を生じるものではないです。

 今回、3位が韓国人で、4位が日本人なので、多分、両方の国の普段、音楽とは縁のない人々が、

 やれ韓国が勝った、日本人が負けたとか下らんことを云うのでしょうが、そうじゃないのですね。

 コンクールというのは、「瞬間最大風速」みたいなものです。瞬発力というか。マラソンじゃなくて、100m決勝みたいなものですかね。

 その日、その時、その場での演奏のうち、誰のが一番良かったか、ということです。

 ですから、明日、もう一度本選をやったら、全然別の結果になる可能性は、大いにある。

 実際歴史的にも、本選で1位になった人より、2位以下の人がその後、大きく伸びたという例は沢山あります。

 その、最も有名な例を御紹介します。


◆ショパンコンクールでは、ファイナルに残れなかった、ポゴレリチという天才ピアニストがいます。

 

 イーヴォ・ポゴレリチという天才ピアニストがいます。

 1958年、クロアチア生まれ。クロアチアは旧ユーゴスラビアの一部だった国です。

 この人は、1980年にショパンコンクールに出たのですが、これほど大騒ぎになったショパンコンクールは空前絶後。

 ポゴレリチは上手いのです。紛れもなく天才だという評価が後に固まるのですが、あまりに個性的なのです。

 21日の日記で書きましたが、コンクールでは、あまりにも強い個性の人ははじかれてしまう(落選する)ことが多いのです。

 個性といっても、勿論デタラメの個性じゃ話にならないけど、本当の天才的な個性になると、分かる人と分からない人がいるのです。

 それで、ポゴレリチがセミファイナル(第2次予選)を弾き終えて、審査員が揉めに揉めたのです。

 審査員の中に、自分も1965年にショパンコンクールに出て優勝した、マルタ・アルゲリッチという南米・アルゼンチン生まれの、誰もが天才と認める女性ピアニストがいました。

 他の審査員は、ポゴレリチをファイナル(本選)に残すことに反対だったのです。

 「上手いけれども、あまりにも癖が有りすぎる」と。そうしたらアルゲリッチが怒っちゃったのです。ハンパじゃないです。激怒した。

 「あの子をファイナルに残さないなら、私、審査員辞めるわ。あの子は天才よ!」ともの凄い剣幕で、本当に審査員を辞めて途中で帰っちゃった。

 ポゴレリチもファイナルに出られませんでした。

 アルゲリッチの事を、「何という協調性の無さ」、と考えるのは凡人でして(笑)、音楽家に限らず、芸術家というのはもの凄く自己主張が強い人、平たく云えば、一般人から見たら「変人」が多いです。

 それぐらいじゃないと、ダメなんです。

 だからサラリーマン的発想をこういう人たちに適用するのは最初から無理。



 かつて、私は、「天賦の才は、天賦の才を持った人でなければ、なかなか分からない」と書いたことがありますが、この1980年のショパンコンクール大騒動はそれを端的に示しております。

 アルゲリッチが正解でした。

 やがてポゴレリチは希有な才能の持ち主として世界的評価を受けます。

 因みに、このときに優勝したのはダン・タイソンというベトナム人ピアニストでした。

 彼は彼で有名になります。ダンタイソンのことも触れるとキリがなくなるからひとことだけ。

 ベトナム人ですから、当時戦争中ですよね。まともなピアノや練習する場所がなかなか無く、何と、紙に書いた鍵盤で練習したそうです。

 それでも上手いのだから、やはり天才としか云えないですね。ショパンコンクールにはこのような才能が結集するからすごいのです。


◆エー、毎度おなじみ、お薦めCDを・・・・。

 

 ショパンコンクールで上位に入った超一流ピアニストについては、これまでにもお薦めを書いた人がいます。

 マウリツィオ・ポリーニ、今年からN響の音楽監督、つまり今は指揮者もやっているウラディーミル・アシュケナージですね。これは、もう、文句なしに大家です。



 今日は、話題に出したアルゲリッチとポゴレリチを。

 話がそれますが、アルゲリッチは日本好きです。特に大分は別府が気に入ってしまって、毎年日本に来て、別府アルゲリッチ音楽祭というのをやってます。

 リンク先をご覧になると分かりますが、今年は既に終わりましたがもう7回目になるのですね。

 私は、別府とアルゲリッチというのが、最初、どうしても結びつきませんでした(別府には行ったこと有ります。良い場所であることは十分承知してます)。

 つまり、あの「世界的ピアニスト、アルゲリッチ」がホントに毎年日本に来てくれるの?」ということです。

 頭の中が「????」という感覚で訳が分からなくなりましたが、実際、こうして続いているのは有難いことです。

 数年前、この別府音楽祭で、アルゲリッチが有名なチャイコフスキーのピアノ協奏曲を弾いたのをテレビで聴きました。

 伴奏は東京芸術大学という、日本で唯一にして最高のレベルを誇る国立の芸術(音大と美大がある)大学の学生オーケストラです。

 芸大に入ると云うこと自体、殆ど不可能に近いぐらい難しい。ここの学生は当然技術的には既にできあがっていますから、芸大オケを一般の我々が聴くと、プロと変らないと言っていい。

 それでですね。コンサートの後ステージの袖のところでNHKがインタビューしたら、アルゲリッチ先生、機嫌良かったですねー。

 芸術家は誠に気まぐれであります。

 芸大オーケストラを、「最初の音を聴いたときにあまりにも立派なので、びっくりした。世界の一流オーストラのようでした」と激賞していました。嬉しかったです。

 この人がこんなに手放しで褒めることは、殆ど無いのです。

 前置きが長くなりましたが、アルゲリッチはもの凄いテクニックの持ち主でして、所謂クラシック通は「プロコフィエフのピアノ協奏曲第2番」や「ラフマニノフの3番」を薦めたがりますが、これらは、少々取っつきにくいです。

 私がお薦めしたいのは、アルゲリッチが、あらゆる音楽の基礎というか、ピアニストになるなら、ショパンとかシューマンとか、リストとか弾く前に最初に勉強しなければならない作曲家、ヨハン・セバスチャン・バッハ(普通、「J.S.バッハ」と書きます)の作品を録れた、バッハ:トッカータ ハ短調です。

 最初から聞いても良いですが、他にパルティータ2番というのとイギリス組曲というのが入ってます。

 パルティータの第1曲目を聴いてみてください。最初はフォルテの和音で始まりますが、ちょっと辛抱して聴いてください。

 あまり、ボリュームを大きくしないで。すると、次に何とももの悲しく、神秘的に美しいメロディーが流れます。すーっと意識が透明になる感じがします。

 それから、ポゴレリチ。この人は好き嫌いが大きく分かれるとよく言われるのですが、少なくとも、ショパン:24の前奏曲は、誰が聴いてもあまり文句をつけられないと思うのです。

 これは、一曲ずつが短い。通して聴いても、どこから聴いてもいいです。

 強いて云えば、トラックナンバー、16番ですかね。すごいテクニック。びっくりしますよ。

 私は、初めて彼の演奏を聴いた時に、「こんなに上手い人が世の中にはいるのだな」と唖然としました。



 長くなりました。最後までお付き合いいただき、有難うございました。


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