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JIROの独断的日記
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2005年09月15日(木) 「郵政否決で解散は違憲」 選挙無効求め宇都宮市議提訴←論理は正しいのです。

◆記事:「郵政否決で解散は違憲」 選挙無効求め宇都宮市議提訴

 

 郵政民営化関連法案が参院で否決されただけで衆院を解散したのは憲法に違反するとして、

宇都宮市の西房美市議が14日、解散を受けた今回の衆院選(栃木1区)の無効確認を求める訴訟を東京高裁に起こした。

 訴えのなかで同市議は、法案の否決を理由に衆院の解散が許される条件について言及。「衆 院の優越を定めた憲法59条にのっとり、

 衆院で法案を再議しても3分の2以上の賛成が得られず、両院協議会で結論が得られなかった場合に初めて解散が許される」と主張。

 「その手続きを踏まず、法案が参院で否決された直後に衆院を解散するのは憲法が予定していない暴挙で、解散権の乱用。

 憲法を無視した解散を受けて行われた今回の衆院選は、違憲無効」としている。 2005年09月14日13時31分


◆衆議院解散に関わる憲法の規定:7条。59条。69条。

 第七条【天皇の国事行為】

天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。


  1. 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
  2. 国会を召集すること。
  3. 衆議院を解散すること。
  4. 国会議員の総選挙の施行を公示すること。
  5. 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。
  6. 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
  7. 栄典を授与すること。
  8. 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
  9. 外国の大使及び公使を接受すること。
  10. 儀式を行ふこと。

第五十九条   【 法律案の議決、衆議院の優越 】

第一項 法律案は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる。

第二項 衆議院で可決し、参議院でこれと異なつた議決をした法律案は、衆議院で出席議員の三分の二以上の多数で再び可決したときは、法律となる。

第三項 前項の規定は、法律の定めるところにより、衆議院が、両議院の協議会を開くことを妨げない。

第四項 参議院が、衆議院の可決した法律案を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて六十日以内に、議決しないときは、衆議院は、参議院がその法律案を否決したものとみなすことができる



第六十九条   【 衆議院の内閣不信任 】

内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。


◆解説・コメント 要するに、内閣総理大臣に衆議院解散権は無い。ということを、言いたい訳です。

冒頭の記事で報道されていることは、9月11日の選挙は違憲であり、無効であるという判断を司法(裁判所)に求めるわけで、前例が多分無いと思います。

ですから、かなり思い切った行動です。

しかし、まるっきり無茶な主張ではありません。



衆議院の解散には二種類があります。

1.天皇が、内閣の助言と承認により、衆議院を解散する場合。

2.衆議院が内閣不信任案を可決し、又は信任の決議案を否決したとき(これは、まず、ありませんが)、内閣は総辞職するか、衆議院を解散する。

今回は、内閣不信任決議案が可決されたわけでも信任案が否決されたわけでもないので、「7条解散」です。

7条解散では、内閣が7条解散を決定し、閣僚全員が「解散詔書」に署名しなければなりません。それを、内閣総務官が皇居に持参して、

天皇の御名御璽(署名、捺印)を頂戴して、 衆議院に持ち帰り、詔書原本は内閣官房に保管するのです。で詔書と同じ文面の伝達書を

官房長官から事務総長。事務総長から衆議院議長に手渡し、

「日本国憲法第7条により衆議院を解散する」

「バンザイ!」

 となります(何故バンザイなのか、誰も説明出来ません)。



 いずれにせよ、憲法のどこをひっくり返して熟読しても、「内閣総理大臣に解散権がある」とは、書いて無いんです。

 解散を決めるのは内閣です。それは、行政権は内閣に属し、国会に対し て連帯して責任を負う(六十六条第三項)からです。

 小泉純一郎内閣総理大臣は、しかし、独りで決めてしまい、内閣の他の閣僚は黙って従ったということですから、解散権濫用の疑いがある。



さらに、日本国憲法第五十九条の規定は次の通りです。

第五十九条   【 法律案の議決、衆議院の優越 】

第一項 法律案は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、両議院で可決したとき法律となる。

第二項 衆議院で可決し、参議院でこれと異なつた議決をした法律案は、衆議院で出席議員の三分の二以上の多数で再び可決したときは、法律となる。

第三項 前項の規定は、法律の定めるところにより、衆議院が、両議院の協議会を開くことを 妨げない。


 つまりね。

 法律案を決めるときは、原則衆議院と参議院両方の賛成が必要なのです。

 しかし、「衆議院優越の原則」があるから、参議院で否決されても衆議院でもう一度投票して3分の2以上で可決したら、法案は成立するのです。

 そうなのだけれども、これは、法的強制力はないけれど、出来れば両院協議会(国会法88条に規定があります)という会議を開いて、

 衆参両議院から選ばれた、10人の代表がよく話し合いなさいよ。と。こういう事です。

 「国会は国権の最高機関であり国の唯一の立法機関(第41条)」ですから、法律を決めるときは吟味に吟味を重ねなさいよ、

 ということを憲法は要求していると考えられるのです。

 ところがですね。

 小泉首相は、衆議院で可決、参議院で否決したら、もう一度衆議院で投票することもなく、また、両院協議会を開くこともしなかったのですね。

 衆議院で僅差で可決、参議院で否決、だったわけですから、もう一度よく法案の内容を吟味するか、両院協議会を開くべきだったのに、

 両方ともやらないで、いきなり、衆議院解散だ!

とムキになって、陛下の御名御璽を頂戴してしまったのですね。



 一応、解散詔書には全閣僚の署名はあるけど、それは小泉さんが睨んでるから、署名せざるを得なかった。

 内閣でよく話し合って決定するべき解散を、自分独りでごり押しした。しかし、内閣総理大臣独りで決めて良いことではないのですね。



 宇都宮市の西房美市議という人を私は存じませんが、この方はそういう論理で、9月11日の選挙は、憲法に違反していると言っているわけです。

 現実問題として、この選挙が無効だとなると、えらいことになる。

 原状回復(民事用語ですけど、元通りの状態にするということ)しなければならないとすると、

 新しく当選した、「落下傘候補」は、国会議員の地位を返上しなければならない。失業者になります。

 落ちた人は戻れて良いでしょうけど、すったもんだの大騒ぎになることは、間違いありません。

 憲法の規定では、司法権は独立していて、裁判官は憲法と法律のみに従って判決を出せばよいのですが、実際には政府が介入するでしょうね。

 だから、「無効である」という判決が出る可能性は低い。

 しかし、憲法は日本国の最高法規なのに、与党は、憲法に定められた手順をおろそかにした、

 ということを国民全体が認識するのは、悪いことではない、と、私は思います。
 なお、このニュースは私は見逃しておりましたが、読者の方がメールで教えてくださいました。
 ありがとうございました。


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