DiaryINDEX|past|will
| 2004年08月27日(金) |
「ここ一番」で実力を発揮する、ということの厳しさ。 |
◆オリンピックを見ていると・・・。
今更、言うまでもない事ながら、オリンピックに限らず、スポーツ選手が勝つためには、本番のある1日のある1瞬に、それまでの研鑽の成果を発揮できなければならない。どこの国の、どの選手もこれ以上は無理だ、というぐらいの厳しい訓練を毎日何時間も何十年も積み重ねている。しかし、体操競技の本番で鉄棒から落下したら全ては無に帰する。結果だけが評価の対象となる。
◆音楽家も同じだ。
間もなく、日本で最も権威のある音楽コンクールである、日本音楽コンクールの予選会がが始まる。
これは、誰でも出られる生やさしいコンクールではない。
オリンピックのように選考会があるわけではないが、それぞれの音楽大学、音楽大学附属高校の一番上手い人ばかりだ。多分、全員が子供のころから天才と呼ばれていただろう。普通の人が彼らの演奏が聴いたら、一体これ以上、何を勉強するの?というぐらい、技術的には上手い。
ピアノ部門の第1次予選は、8月31日から4日間にわたって行われる。殆どの参加者は、この1次予選で落ちるのだが、毎コン(もともとは、毎日新聞が半世紀も前に始めたコンクールなので、クラシック関係者は、皆、毎コンという。NHKがその様子を放送するようになり、名前を「日本音楽コンクール」にかえてしまったのだ)に出るからには、一次で落ちてもいいや、などといういい加減な覚悟では出場することを許されない。
あくまでも、本選会まで残るつもりで、課題曲に挑むのである。ちなみに本選会は10月である。ピアノ部門で優勝するためには、次に記す課題曲を準備しなければならない。
■ピアノ部門
第1予選
次のBeethovenのソナタ(a)〜(h)の中から第1楽章を2曲用意し、当日各自の抽選による1曲を演奏すること。繰り返しは省略する。
(a)��2 A major op.2,��2
(b)��4 E flat major op.7
(c)��7 D major op.10,��3
(d)��11 B flat major op.22
(e)��16 G major op.31,��1
(f)��17 D minor op.31,��2
(g)��26 E flat major op.81a
(h)��27 E minor op.90
※都合により演奏をカットする場合がある。
第2予選
次の(a),(b),(c),(d)を15〜20分にまとめて演奏すること。繰り返しは自由とする。
(a) J.S.Bachの作品(ただし,オリジナル作品に限る。抜粋は認めない)。
(b) Chopin:練習曲集 op.10またはop.25から1曲。
(c) LisztまたはRakhmaninovまたはSkriabin:任意の練習曲1曲(ただし,超絶技巧練習曲「夕べの調べ」は除く)。
(d) Faur,Debussy,Ravelの作品から任意の曲。
第3予選
次の(a),(b),(c)を30〜40分にまとめて演奏すること。繰り返しは自由とする。
(a)J.Haydn,Mozart,Beethovenのソナタ(全楽章)または変奏曲(全曲)から1曲。
(b)自由曲
(c)邦人作品
本選
下記のピアノと管弦楽のための作品の中から各自選択した1曲を演奏すること。
Mozart: Piano concerto No.9 E flat major K.271
Piano concerto No.20 D minor K.466
Piano concerto No.21 C major K.467
Piano concerto No.22 E flat major K.482
Piano concerto No.23 A major K.488
Piano concerto No.24 C minor K.491
Piano concerto No.25 C major K.503
Piano concerto No.26 D major K.537
Piano concerto No.27 B flat major K.595
Beethoven:Piano concerto No.1 C major op.15
Piano concerto No.2 B flat major op.19
Piano concerto No.3 C minor op.37
Piano concerto No.4 G major op.58
Piano concerto No.5 E flat major op.73
Schumann:Piano concerto A minor op.54
Chopin: Piano concerto No.1 E minor op.11
Piano concerto No.2 F minor op.21
Liszt:Piano concerto No.1 E flat major
Piano concerto No.2 A major
Saint-Saёns:Piano concerto No.2 G minor op.22
Piano concerto No.4 C minor op.44
Piano concerto No.5 F major op.103
Tchaikovsky:Piano concerto No.1 B flat minor op.23
Grieg: Piano concerto A minor op.16
Rakhmaninov:Piano concerto No.2 C minor op.18
Rhapsody on a theme by Paganini op.43
Ravel: Piano concerto G major
Bartk: Piano concerto No.3
Prokofiev: Piano concerto ��2 G minor op.16
Piano concerto ��3 C major op.26
〔注意〕
※暗譜で演奏すること。
※曲目の演奏順は自由とする。
※第2予選(d)、第3予選(b)と(c)については、それぞれ複数の作品、複数の作曲家でも可。
※第2予選(d)については変奏曲を除いて抜粋を認める。
※第3予選(b)については,ソナタと変奏曲の抜粋は認めない。
※第3予選(b)と(c)はともに、すでに出版された作品とする。また内部奏法を含む作品は選択の対象外とする。譜面の提出を求めることがある。
※予選を通じて曲目が重複しないこと。
※提出したプログラムの変更は認めない。
※上記演奏時間は厳守のこと
課題曲が発表されたほぼ1年前から、出場者は、恐らく1日の休みもなく、1日15時間はピアノに向かって練習している。夏休みもオリンピックもへったくれも、ない。
1次予選は、べートーベンのソナタ8曲の中から2曲を選び、当日、クジで、どちらを演奏するかが決まる。
二次予選ではバッハと、ショパン若しくはリスト若しくはスクリャービン、若しくはラフマニノフのエチュードを弾かねばならぬ。どれをとっても、発狂するほど難しい。
三次予選では、自分でリサイタルを開くがごとく、プログラムを組み立てなければならず、演奏そのものは、勿論、選曲のセンスが試される。
ここまで、勝ち残ってようやく本選出場となる。西洋音楽史に燦然とかがやくピアノ協奏曲31曲のなかから、どれか1曲を選び、プロのオーケストラの伴奏で演奏する。
学生はオーケストラをバックに演奏した経験がない。極度の緊張を強いられる。
ピアノ独奏曲と違って、協奏曲では、独奏ピアノが何小節か休んでいる場合がある。次に入るところを間違えたらおしまいである。
CDを鳴らしながら、或いは友人に、もう一台のピアノでオーケストラのパートを弾いてもらって、何百回と弾くのである。しかし、そこまで練習しても、本選に実際に出られる可能性は極めて低いのである。
以前、私は、このピアノの本選を聴きに行ったことがある。それまでの彼らの言語に絶する苦労、研鑽を思い、演奏を聴きながら、涙がこぼれた。「これ以上、出来ないぐらい、練習したのです。練習の時には上手く弾けたのです。」といっても、何の意味もない。いま、ここで、誰が一番上手く弾けるのか?が全てを決する。オリンピックと同じだ。
世の中には、我々の想像を遙かに超えた、厳しい世界があるのだ。
2003年08月27日(水) 今頃になって、「火星大接近!」なんて騒がなくても・・・。といいつつ、リンク集。