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JIROの独断的日記
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2004年07月21日(水) 「伝説的指揮者、カルロス・クライバー氏が死去」たまには音楽の話を書かせて下さい。

◆記事:伝説的指揮者、カルロス・クライバー氏が死去

 

【ウィーン=島崎雅夫】19日のスロベニア通信によると、伝説的なオーストリアの指揮者カルロス・クライバー氏が13日、死去した。17日にスロベニア東部の町コンシチャで葬儀が行われた。74歳だった。 スロベニアは夫人の出身地で、同氏は昨年12月に死去した夫人の横に埋葬された。数か月前から闘病生活を送っていた。

 1930年7月3日、ベルリン生まれ。30年代のナチスドイツの台頭で、父親でオーストリアの指揮者エーリッヒ・クライバー氏と共にアルゼンチンに逃れた。欧州には52年に戻り、主にドイツ国内で指揮者として活躍した。

 80年にオーストリア国籍を取得し、89年と92年にはウィーン・フィルを率いてニューイヤー・コンサートで指揮者を務めた。奔放な生命力をたたえた勢いある音楽作りが身上。世界トップレベルの人気と実力を兼ね備えながら、年に1、2度しか指揮をせず、カリスマ性を高めた。

 演奏曲目を極端に絞り、ベートーベンやワーグナー、R・シュトラウスらのごく一部の作品を繰り返し演奏、深い解釈で魅了した。
 日本には計5回訪れたが、特に最後の94年のウィーン国立歌劇場との公演は、R・シュトラウスのオペラ「ばらの騎士」で名演を残した。(読売新聞)


◆コメント:天才ってのは、どうしてまとめて世に出て来て、去ってしまうのかね。

 

最近、憂鬱になるニュースに関する文章ばかり書いているので、たまには、好きな音楽のことを書きます。

最近、いかにも巨匠と呼びたくなる音楽家が少なくなりました。ピアニストも、バイオリニストも、指揮者も、ものすごい才能というのは、ある時期にまとめてわーっと出てきて、一挙にいなくなってしまうのですね。

 カルロスクライバーは天才です。お父さんはエーリッヒ・クライバーという、やはり大指揮者でした。しかし、親父は息子が音楽の道に進むのに反対しました。だから、カルロスクライバーは工科大学出身で、専門は化学なのです!

 ところが、どうしても音楽への道をあきらめきれず、20歳をすぎてから、本格的に勉強を始めました。勉強といってもヨーロッパで指揮者の勉強をするのは歌劇場での下働き(歌手に稽古をつけたりね)から始まるので「修行」って云う方が近い。しかし、二十歳になってから、プロの指揮者を目指して、名指揮者になるなんてことは、普通絶対にあり得ないのです。やはり、ものすごい天才だったのでしょう。

 カルロスクライバーは変人です。芸術家には変人が多いけど、これほど、勝手気ままに仕事をして、それが認められた人は他にはいません。

まず、滅多に指揮をしない。一年に何回か。時には何年も振らない。何故か?振る(指揮をすること)気がしないから。で、急にウィーンフィルを振る、なんて、二週間ぐらい前に発表になると、耳が肥えたウィーンの聴衆が争って、チケットを買いに殺到する。二年ぶりにウィーンウィルを指揮をする。何を演奏するかといったら、二年前と全く同じ。普通、ホサれますよ。

 変人たる第二の所以は、レパートリーが極端に少ない。モーツァルトの交響曲は33番と36番だけ。ベートーベンは4番、5番、6番、7番だけ。ブラームスは2番と4番だけ。オペラは「椿姫」、「オテロ」、「ラ・ボエーム」、「カルメン」だけ。あとはヨハンシュトラウスのウィンナーワルツとか、少々。これ、普通なら、「ナメとんのか?お前?」というか、プロの指揮者としては認められない。

 この「極端に少ないレパートリーを」、「何年かに一度」、「気が向いたときだけ振る」という、とんでもない人なのに、それでも、ものすごい人気がある。それは、一旦演奏すると、本当に「芸術は、爆発だ!」というような(いつも大きな音で演奏する、というような単純な話ではありません。)、全身全霊を込めた名演をするからです。

 私は残念ながら、生演奏を聴いたことがない。しかし、同じ指揮者のカールベームという人が亡くなったときに、カルロスクライバーが追悼演奏会を開きました。そのときの一曲がベートーベンの第4交響曲というのですが、これは、ベートーベンの交響曲の中でも最も地味というか、目立たない、派手さがない曲と見なされているのです。普通は。ところが、この時に、クライバーがバイエルン国立管弦楽団という一流のオーケストラを振った「4番」はすごい。この曲、こんな迫力のある曲だったのか、と唖然とします。そういう風に思わせる所が、才能です。

 終楽章(第4楽章)はもともとプレスト(きわめて早く)という指定なんだけれども、ここまで早く演奏したのは、後にも先にも聴いたことがありません。いくら名手揃いのバイエルン国立管弦楽団といえども、必死になって追いつこうとしているのが、よく分かります。

 4番の終楽章には、ファゴットの難しいソロがあります。短いのだけどね。指がややこしい。このCDがそのときのライブですが、ついにファゴットが吹ききれないで、音を飛ばすところがあります。この一流クラスのオーケストラでそういうことが起こるのは、きわめて珍しい。

 しかし、そんなことは問題ではない。ジャケットのクライバーの指揮姿を見て下さい。ものすごい集中、情熱の爆発が伝わってきます。このCDには演奏終了後の観客の熱狂的な拍手、ブラボー、絶叫も収録されています。

 まあねえ・・・。クラシックになじみの薄い方にベートーベンの4番というのも何だけど、この演奏はね。本当の名演です。滅多にありません。音楽とは本来、こういうものなのです。聴いてみて下さい。


2003年07月21日(月) 「けちな奴等だ。自分で自分のした事が云えないぐらいなら、てんでしないがいい」(坊っちゃん)

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