再生するタワゴトver.5
りばいぶ



 ala collection『紙屋悦子の青春』当日パンフレット戯言。

演出の戯言「今を捉え直す」
 
戦争。
生活。
なんだか遠くにありそうで、
でも2つの言葉が結びつく、結びついてしまう時がある。
過ちと言われながら、世界では、何度繰り返しても、必ずこの2つが結びついてしまう場所がある。
自然に繋がっていく人の営みというものと、暴力的にそういうものを根こそぎ奪う戦争。
歴史に学べと人は言う、でも、それは同時に思い出したくない記憶でもある―
 
今、のことしか考えない。
都合の悪いことは忘れ、
今が良ければ、としか考えない。
あったことすら、直視せず、今の都合で忘れさせる。なかったことにする。
その只中に僕たちはいる。そんな今の選択が、未来を創っていくというのに。
戦争をめぐる劇を多く創りながら、体験者が減るように、その言葉を姿を目にしない世代が増えてきた。極端な例かもしれないが、76年前は遥か遠く、沖縄に地上戦があったことや、かつてアメリカと戦争をしていたことすら知らない、とゆう時代になってきた。当然、何があったのかに想像を巡らすことすら、ない。もしくは思考させないようにする何かが、ある。
僕らは継承する世代としての役割をちゃんと果たせているのだろうか、と思うことがある。
 
そこに生きた人々をちゃんと描くこと。
つい76年前にあった戦争。
生活。
家族。
そして青春。
なんでも他人事においておきがちな自分だからこそ、
戦争という不条理の中を生きることへの想像力の翼を広げる必要がある。
 
そこでも人はしぶとく、逞しく生きている。
歴史の一ページを飾るような大きな出来事を成さなくても、市井の人々が生きたからこその、今でもあるのだ。
 
私事で恐縮ですが、今年は師である高瀬久男の七回忌、師が未踏であった、この松田戯曲を演出する機会をいただけたこと、感謝です。縁と一言だけでは片付かない不思議な繋がりでここ可児でモノづくりをさせてもらっている。
上質なフィクションは時代を見通し、真実を捉える。
そんな師の言葉を頼りに、キャストスタッフ総がかりで面白いモノを追及しているー
松田さんの世界の切り取り方、その目線はとても厳しく、しかし暖かい。
 
どうぞ最後までお楽しみください。
 
藤井ごう

2021年10月28日(木)
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