スカーレットの心のつぶやき
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あの強さは何所から生まれたのだろう。
私が目にした彼の強さは
「健全なる精神は健全なる肉体に宿る」という言葉が嘘だとさえ思えた。
下半身が不自由で歩くのも勿論困難な彼は
両方の手に杖を持ち、
その杖で全身を支えて歩いていた。
歩くという表現は適切ではないかもしれない。
足を踏み出すのがやっとの思いで体をねじるようにして
一歩、一歩をゆっくりとしたペースで進んでいた。
今にもグニャグニャとなりそうな歩き方だった。
両方の手に杖を持っているから、
手を使うときは地面に座り込むことになる。
そして一度座るとその姿勢から立ち上がることが
私達には考えられないほど本当に大変なことだった。
そこらじゅうに響き渡るほどの大声で
「ヨッシャ!」と彼は叫んだ。
そして、その叫び声と共に力いっぱい踏ん張って立ち上がったのだ。
これほどの気合いを入れなければ、
立ち上がるという行為も難しいのだった。
私たちは何気なく立ち上がる。
でも、彼にとっては大変なことなんだと気付いた。
こんな苦しい思いをせず。
車椅子に乗り誰かに押してもらったらどんなにか楽だろう。
でも、彼は人に甘えることをせず。
どんなことをしてでも、自分自身の足で歩こうとしていた。
周りに居た人が見かねて「座ったらどうですか?」と声をかけた。
でも、彼は「有難うございます。でも歩くのが僕のやり方です」と答えた。
そのいい方は決して人に不快な感じを与えるいい方ではなかった。
虚勢を張っているようないい方ではなかった。
寧ろ、「頑張って!」と声をかけたくなるくらいだった。
彼はずっとこういう風に強い精神を持っていたのだろうか。
それとも、何十年という年月の中で
自然に彼の精神は強靭なものになったのだろうか。
彼の態度は堂々としていた。
恥ずかしいとか、人目を避けるとか、そういった感じは全くなかった。
この場面は、たった10分ほどのことだったけれど、
私の心には強烈な印象で残っている。
感動で心が震えた。
彼のような強い精神力を持っていれば
どんな逆境の中でも自分を見失わず生きていけるのだと思う。
スカーレット
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