短いのはお好き?
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もうやめなよと、言いたげなその目こそやめろよ。 ナナオのモニタに映る自分に向かって心のなかでそう毒づく。 いい加減マジでやめちゃえよ。 そんなんで生きてて愉しいか?
きょうでまだ一週間。 俺は、2ヶ月も研修がつづくのかと思うだけで、もう反吐がでそうでたまんなかった。 Cだか、Cプラプラだかなんだか知らないけれど、 お陰様で 俺は、一気に来てしまった。 そう。若禿げだよ俺さまは。 悪かったね、ヅラで。 でもアンタに迷惑かけた? このアートネーチャー特別あつらえ自慢のヅラで アンタにご迷惑おかけしましたか! てんだ。 Love Me Tender.(ここんとこ、韻を踏んでます) そうよ、ご察しの通りその上3Kですよ、ぼくちんは。 くさい、危険、きたない おまけに チビ・デブ・ハゲときちゃあ 女の子にはモテマセンやね。 帰りの電車のなかで吊革につかまりながら、景色のない車窓を見るともなしに見つめつづける。ぼーっとしたままで視線すら動かせない状態。 ふと我に返ると、眼前に女子高生が佇んでいる。 こちらの目を覗きこむようにして、微笑みかけてくる。
え? ご冗談を。 大人をからかっちゃあ、いけませんよ、お嬢さん。 え? ほんとに? まじすか? 本気にしちゃうよ? え? そ、そんなぁ。 急に手を握レッテいわれても。 てへへへへ。 いやぁ、実に何年ぶりでがしょう? 花も恥らう若い乙女の手をにぎっちゃうなんて。 もう。か、感激っス。 え? なに? そんな、また性急に 結構好きなのね? とそこで、地下鉄の駅に到着。 ドアがするすると開く。 おわっ! そんなに強く手を引っ張ってどこ行くの? こんな時間からラヴホなんて。おじさんテレちゃうなぁ。 次の刹那、彼女の可愛らしい唇から悪魔のような言葉が紡ぎ出されてくるなんて誰が予想しただろう。
「駅員さん、すいません。この人私にイヤラしいこと強要するんです」
「ザケンナ!」 と、言うなり俺はその女に一発おみまいしてやろうと パンチを繰り出したまではよかったものの、 彼女が、すっげぇプロ顔負けのタイミングでスウェーしたので、 おれさまは、歌舞伎役者のように、たたらを踏んで駅員の ふところに突っ込み、結果なんと30がらみの駅員と熱いキスを交わしてしまったのだった。
で、チクチクする頬もまんざらでもないなと思う自分をそこに発見し、驚きを禁じえなかった。 てか、すこしうれしかったりして。
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