物好き

 朝の半身浴が最近のわたしの楽しみのひとつ。ぬるめのお湯につ
かりながら、ゆっくりと読書できるこの時間は貴重だ。ところがこ
の楽しみをじゃまするやつがいる。そう、にょらである。

 人が気分よく物語の中に入っていこうとしているそのとき、浴室
の折り戸1枚隔てたところでにょらの声がする。ほとんど戸に鼻を
くっつけんばかりにして鳴いている。

 しばらく無視してみる。するとにょらの声はだんだん大きくなり、ついには切ない声になってくる。なにがそんなに切ないのかは知らないが、戸を開けてやるまではけっして鳴きやまない。わかってはいても、つい無視したくなる。だって読書中に手をぬらしたくないんだもん。

 にょらの目的は、お湯を飲むことなのだ。開けてやるといそいそと入ってきて、バスタブのふちに手をかけて立ちあがる。お湯は少なめに入れてあるから、当然そのままでは飲むことができない。わたしが手ですくって飲ませてやるのだ。これがまた実においしそうに飲む。わたしのエキスが溶け出たお湯(きたない表現〜)のどこがそんなにおいしいんだろう。

 気がすむまで飲んだらさっさと行ってしまう。そのうしろ姿を見送りながら、乾いたタオルで手をふくわたし。ちとむなしい。そして読書再開。

 お願いだからじゃましないでくれ。それに、たまには入浴剤なんかを入れてみたいぞ。



2002年11月01日(金)
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