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人物紹介


思わせぶり
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本当は、先輩が女好きだろうと、どんな男であろうと関係無く好きでした。
好きだから、先輩の言動で勘違いしそうになる自分が嫌でした。
好きだから、勘違いして傷つくのが、すごく怖かったのです。

K先輩は、私が「ずっと先輩は女好きだと思っていた」というと、「ん〜・・・」と言ったきり黙ってしまいました。
さすがに言い過ぎたと思った私は、先輩の顔をそっと見てみました。
その表情は、怒っているようにも、傷ついているようにも見えました。
私は、なんとか誤魔化そうと思い、

「あら?本気にしちゃいました?冗談ですよ?」

とわざと明るく言いました。
先輩は「ああ・・」と返事をしたきり、私の方を見ようともしません。

「冗談きつかったですね。ほんと、ごめんなさい。」

素直に謝ってみました。
すると、K先輩は

「俺って、よくそう言う風に思われるみたいなんだよな」

と呟きました。
傷つけたんだ・・・と気付いた私は、慌てて

「ほんとごめんなさい。あの、本当にそんな人だと思ってたら、今日だって私、来てませんから」

と弁解しました。
本当は、「そんな人」だと思っていていました。
でも、私は先輩が好きだから。

先輩は、

「いや〜ごめんごめん。お前にそんな風に言われると思ってなかったから、柄にも無くショック受けちまったよ。」

と照れくさそうに小さく笑いました。

「本当にごめんなさい。。。」

私は物凄く先輩を傷つけてしまったのだと思い、泣きそうな気分でした。
頭の中では「どうしようどうしよう」とずっと繰り返していました。

すると、頭をポンと弾かれ、

「ガキッ」

と言われました。
先輩の顔を見た瞬間、逆に私が先輩にからかわれていた事に気付きました。

「ひっどーっ すごい先輩傷ついたんだと思って、本気で悩んだのにっ」

私は、恥ずかしさで怒りが込み上げてきました。
ここで、次の駅に着き、人がどっと乗ってきて、ドアの中央にいた私は邪魔になりました。
丁度良いと思って、少し先輩から離れて奥に入ろうと思った時、K先輩に腕を掴まれ側に引き寄せられました。
乗客が乗り込んでくる間、私は先輩の腕の中に居るような状態で、心臓のバクバクが止まりませんでした。
そんな時でも、どこか私は冷静で、周りの視線が気になりました。
端から見たら、まるで抱き合ってるように見える状況に、私は恥ずかしくなりました。
ドアが閉まり、少しだけ先輩から身体を離せるようになるとホッしました。
閉まった途端に私が先輩から離れると、

「あ、ごめんごめん。危なかったからさ」

と先輩が言いました。
多分、私の離れ方が極端だったのだと思います。
電車内は混み合っていて、小さな声もすぐ側に人が居るので聞こえてしまいそうな状況でした。
私は何も言えず、ただ黙って俯いたままでいました。
顔を上げたら、すぐそばに先輩の顔があることは分かっていたからです。

先輩は「怒ってんの?」と小さな声で聞いてきました。
私は怒っていたハズだけど、それよりも、さっきの先輩の行動のせいで、ともかく心臓のバクバクが止まらずにどうにも出来ない状態でした。
俯いたまま、首を横に振ると、ふいに先輩が私の顔を覗き込みました。
その瞬間、私は何故か目をつぶりました。
先輩は、私の表情を確認して何かを思ったのか、

「え?泣いてんの?」

と驚いたように聞いてきました。
私は、また無言で首を振りました。

私は、先輩の弁解するような言葉や、思わせぶりな一言一言。
私を引き寄せるような行動一つ一つに、期待せずにはいられない自分を止めるのに必死でした。

先輩はそれ以上何も言わなくなりました。

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先輩が呟きました。
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「恋愛履歴」 亞乃 [MAIL]

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