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人物紹介


分からないことだらけ
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普通のこと?
会う相手を言って出かけるのが普通ってこと?
単純に、いつもそうだよってこと?
相手が誰でも、両親が何も言わないのが普通ってこと?
女性とデートだと分かっても、何も言わないのが普通ってこと?
普通になるほど、それほど、先輩が女性と出かけてるってこと?
沢山、女友達が居るってこと?
私はその中の一人だから、驚きもしないってこと?

K先輩の言葉の意味をグルグルと頭の中で考えだし、徐々に悪い方ばかりを想像し、止まらなくなっていきました。
そんな私の状態に気付きもせずに、K先輩は「じゃ、行くべ」と言って切符売り場に歩き出しました。

「あ、どこまで行くんですか?」

自分で切符を買おうと、慌てて財布を出そうとしていると

「俺が買うからいいよ。待ってて」

と言って、さっさと行ってしまいました。
その後姿を見ながら、私はまだずっと「普通」の意味を考えていました。

思えば、K先輩と一緒に出かけるのは初めてで、それどころか休日に男性と電車に乗って出かけるということ自体が始めての事でした。
切符を買ってもらうというのも初めてだし、映画は当然初めてで。
何をどうしていいのか、どういう対応をしていいのか、何を言ったらいいのか、どう受け止めていいのか、どう返事していいのか。
ともかく、何もかも分からないデートが始まり。

切符を買って戻ってきたK先輩から、普通に切符を受け取ってしまいました。
それは、気付いたら受け取っていたという感じでした。
あまりにも、K先輩の渡し方が自然だったので、一瞬、お礼を言うのが遅れました。
そのまま、私の前を通過して歩いて行ってしまうK先輩に、慌てて

「あ・・切符代・・・」

と声を掛けました。
K先輩は、私が「幾らですか?」と聞く前に、

「いらない。」

と無愛想な声で答えただけで、私の方を振り返りもせずにスタスタと改札に歩いて行ってしまいました。
その後ろを追いかけながら、もう既に私は難題にぶつかった気分でした。

それじゃなくても、私はまだ、K先輩の言った「普通」の意味に拘っていて。
その上、あまりにもぶっきらぼうに返事をされて、もうどうしていいのか分からなくなり、私は泣き出しそうでした。

「亞乃っ!」

突然、K先輩に大声で呼ばれました。
声の強さにビクっとして顔を上げましたが、K先輩の姿がありません。
私は、いつの間にか下を向いて歩いていて、K先輩と反対方向に歩いていたのです。
慌てて、当たりを見回しました。
すると、後ろから頭をポンっと叩かれ、振り向くと

「おい、どこ行くんだよ」

とK先輩が少し困ったように笑っていました。

「あ、ごめんなさい」

私はしょっぱなから失敗した自分が物凄く恥ずかしく、情けなくて。
でも、先輩に呼ばれた事や頭を叩かれた事は凄く嬉しくて。
とても複雑な気持ちでした。
K先輩は、優しい声で笑いながら

「ったく。ほんと、ガキなんだから」

と言いました。
それを聞いて、少しショックを受けました。
子供扱いされている自分がまた情けなくなり、

「ほら、行くぞ」

と言ってK先輩に背中に手を回されて押されるように歩き出すと、今度はその手にドキドキし出して。
先輩の手は、すぐに離れましたが、もうホームに降りる頃には私はヘトヘトでした。
こんな気持ちの繰返しじゃ、神経が持たないと思いました。
なんとか、普段の自分を取り戻そうと必死でした。
せっかくの先輩とのデートなのに、こんなんじゃダメだと思い、顔を上げました。

すると、またK先輩が居ません。
慌ててホームを見回すと、時刻表を見ているK先輩を見つけました。
この場合、私もそこに行った方が良いのだろうか?
またもや、問題にぶつかりました。
困っていると、先輩が私の方を振り向き、戻ってきました。
その姿をジッと見るのも変だと思い、わざと目を逸らしました。

戻ってきた先輩は

「あと3分だな」

と言いました。
そこで始めて、私はどこに行くのかを聞きました。
それは、その頃の私が行った事が無い場所で。
先輩はいつも私の知らない所で、知らない人たちとそういう所に行ってるんだ・・・と思いました。
それが、今の先輩の普通の日常で。
やっぱり、私とは違う所に居る人なんだと感じました。
そこからまた、私は「普通」に拘り始め、その中には女の人も居るんだろうなどと一人考え込み出したとき、ふとK先輩の視線を感じました。

また、下を向いて難しい顔してるとか思われてるんだ。
そう思った私は、先輩が見てることに気付かないフリをしながら、右側に居るK先輩とは反対側の電車が来る方向を、わざと気にするように見ました。
そして。
私の髪に先輩が触ったような気がしました。
ただの風だったかもしれません。気のせいかもしれません。
そのぐらいの感覚でしか無かったのに、私は体が固まり、余計に先輩の方を振り返る事が出来なくなりました。

そこへ、電車が来るのが見えました。
ふいに、先輩が口を開きました。

「お前、髪、伸びたなぁ・・・」

部活を止めてから徐々に段を取りながら伸ばし続けた私の髪の毛は、その頃には背中の半ばまである程の長さになっていました。
でも、徐々になので、ある程度その間に会っている先輩に、改めて言われるとは思いませんでした。

「え?あぁ・・伸ばしっぱなしなんで・・・おかしいですか?」

先輩が自分の髪の毛を見ていると思うと、余計に私は意識してしまい、ホームに電車が入って来ても動く事ができませんでした。
目の前に電車が来てるのに、私は電車の後ろの方を見ているのは、かなり不自然だったと思います。
その事に自分でも気付き、それに先輩と話してるのにそっぽを向いているのも変だと思い、思い切って先輩の方を見ました。
見た瞬間、K先輩と目が合ってしまい、かなり焦りました。


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その時ホームは、電車の音とアナウンスの声と別のホームの発車のベルが響いていたのに、先輩の声だけハッキリと聞こえた気がしました。

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「恋愛履歴」 亞乃 [MAIL]

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