| 2002年12月25日(水) |
アゲイン 02/12/24 第2話 |
マクドナルドを出て近くにあるカラオケボックスに向かった。イヴの日だけあって人で混雑している。 やはりカップルが多い気がした。 「眞人さん、ムカつくね。いちゃいちゃしちゃってさ」眞人はさっき地下鉄で自分も同じようなことを思っていたのを思い出した。「蹴り入れたくなるわ」 「だからやめなさいって」なんだか今日の裕輔は言うことが冴えている気がした。彼が言うことはなんでも笑ってしまいそうだ。 カラオケボックス『猫目』に入った。裕輔が会員証を店員に見せてからは事務的に進み、あっさりと部屋に通された。 「許してね〜恋心よ〜♪」 「サヨナラバスは君を乗せて静かに走り出す〜♪」 「戸惑い学んで汗を流して〜いつの間にかに傷つきながら〜♪」 「誰だ!誰だ!ゴリラ〜♪」 「彼女ほしい!彼女ほしい!もっとほしいもっともっとほしい〜♪」 「情けない男でごめんよ〜♪」 「会いたくなった時に君はここにいない〜♪」 裕輔は順番なんてお構い無しに立て続けに歌った。時折アドリブで替え歌にして歌っていた。やはり今日の裕輔は冴えていると思った。眞人はザサンの歌を歌いまくった。先日札幌でザサンのライブがあったのだ。眞人はザサンのファンだがチケット代と食費を天秤にかけて食費をとった。今となっては無理をしてでもチケットを取るべきだったなと少し後悔している。 眞人が1曲歌う間に裕輔は5曲歌った。眞人も裕輔も煙草を何本も吸った。部屋は煙草の煙に包まれている。部屋にはエアコンがあったが煙の吸いが悪かった。壁に掛かっている時計を見た。もう6時になろうとしている。お、4時間も歌っていたのか。さすがに4時間は初体験だ。裕輔は勿論、眞人も喉がガラガラになった。 「裕輔、もう終わりにしようや」 「え、もう?」 「だってもう6時だよ。腹も減ってきたし」 「じゃあ、最後に尾崎豊の『卒業』歌わせてよ」 「あはは、いいよ。」 「もう、これで今年を卒業します」 裕輔の『卒業』をぼけーっと聴いていた。もう1週間もしないうちに今年も終わりだもんな。 「2002年の恋からの卒業〜闘いからの卒業〜♪ありがとう!」裕輔は丁寧にお辞儀までしている。 「ありがとう。もう2002年、卒業しちゃいましたよ、眞人さん」 「来年はきっといいことがあるよ、うんうん」 「来年こそ彼女つくってバイクの後ろに乗せて旅したいなあ」 「おまえ、まだ免許持ってないじゃん」思わず苦笑する。 「夏になったら取ろうと思ってんだよね。」 「腹減ったなあ」 「俺は酒が呑みたいよ。妬け酒になるけどね」 眞人は自分の財布のことを少し考えた。これからのこと考えるとあまりお金は使いたくない。 「でも俺あんまし金無いよ」 「大丈夫だって」 「何が大丈夫よ」 「今すっごく金を使いたいんだよね」 「それは羨ましいですなあ」 「眞人さんの分も少し出すからさ」 「おまえ、そこまでして呑みたいのかよ」 「だってゴリラに負けたからね」 「それは関係無いって。んー、じゃあ借りってことでいいかな。今夜は付き合うよ」 「じゃ、早速行きますか」 カラオケは割り勘で済ませ外に出た。陽はすっかり落ちているが雪がまだ少しぱらついていた。ススキノを彩るネオンが目に飛び込んできた。人は昼にも増して混雑している。人の動きに逆らおうとするとなかなか進めなかった。裕輔の携帯電話が鳴った。バイト先からだと言って裕輔が電話に出た。 「えーマジっすかー。今俺街にいるんですよねー。」眞人は煙草を取り出し火をつけた。ますますジッポのつきが悪くなっていた。紫煙が12月の風に流されていく。今日何本目だろうとぼんやりと思った。 「ムカつくー死ねや!」裕輔が乱暴に携帯電話を切った。 「どうかした?」 「うちのバイトのバカオヤジがさ俺に出てくれないかって言ってきたんだよね。今日はイヴだからって客が多いんだって。はぁ?!って感じじゃない?だって俺、今日休みなんだよ」バカオヤジは眞人も見たことがあった。あの顔はコンビニ向きではない。「ムカつくなーあのバカオヤジ」 「で、どうすんの?」 「戻らないといけないんだよ」 「え、マジで?断れなかったの?」 「だって忙しいって言うんだもん」 「痛〜い」 「だってあのバカオヤジ、馬鹿だからね」 「意味がわからないって」 「明日、呑もうよ」 「んーいいよ。明日も暇だしね」 「実家いつ帰るの?」 「いつでもいいんだけど27くらいかな」 「じゃあ、大丈夫だね。なんかごめんね」 「いいよ、頑張って稼いでらっしゃい。」 「じゃねえ」 裕輔が来た道を戻っていく。うむ、独りになってしまった。これからどうしようかな。眞人も来た道を戻りながら考えた。今さら友達を捕まえるのも面倒だし、それに友達はみんな予定が入っている気がした。帰ろうかな。帰ってチキンラーメンを食べれば食費が浮くし。このまま帰ってしまうのはなんだか勿体無いような気がしたがここにいたら少ない金が減ってしまいそうだった。眞人は短くなった煙草を排水溝に投げ入れポケットに手を入れて地下鉄を目指した。
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