| 2002年12月26日(木) |
アゲイン 02/12/24 第3話 |
ふと振り返った。誰かが眞人の名前を呼んだ気がしたからだ。しかし知っている顔はそこには無かった。気のせいかな。眞人はまた地下鉄を目指した。 「川越君!」 やっぱり誰かが名前を呼んでいる。もう一度振り返ってみた。眞人のすぐ後ろに女が立っている。 「ん?千佳ちゃん?」 「あーやっぱり川越君だ。よかったあ、違う人だったら恥ずかしいもん」千佳ちゃんはいい顔をしていた。 千佳ちゃんこと市川千佳子は高校時代の同級生だ。クラス替えでもバラバラになることがなく3年間同じクラスだった。眼鏡ではなくコンタクトをしていた。歩道にいては邪魔になりそうだったので横にどけて話しをした。眞人は少しぽかんとしていたのかもしれない。 「川越君、なんて顔してんのよ!」眞人が我にかえる。 「あれ、千佳ちゃんって札幌にいたの?」 「うん、大学がこっちなんだ。学園大だもん」 「ふうん。そっかそっか。で、こんなとこで何してんの?」 「友達と遊んでたらさ、友達が急にバイトが入っちゃって。友達、コンビニでバイトしてんだけどクリスマスだから忙しいんだって。もう何よって感じだよね」 「千佳ちゃんも?実は僕もなんだよね。さっきまで友達とカラオケしてたんだけど俺の友達もバイトに借り出されちゃって。これからそいつのおごりで飲みだったんだけどさ」 「そうなんだ。私もこれからだったんだ。ねえ、一緒に行かない?」 「え、どこに?」 「居酒屋に決まってるでしょ!久しぶりに会ったんだし話したいことだってあるじゃない!?」悪くない気がした。 「でも俺あまりお金ないんだよね」 「そんなこといいから。行こっ!」 千佳ちゃんに根気負けし一緒に空いている居酒屋を探すことにした。千佳ちゃんは赤いジャケットに黒のスカートを履いていた。高校時代は制服姿の千佳ちゃんしか見たことがなかったのでとても新鮮だった。髪の毛は、高校時代はショートヘアだったのが頭の上で縛ってあった。ほどくと背中の真ん中くらいまでいきそうだった。少し髪も染めている。一緒に歩いているとシャンプーのいい香りがした。 3件目でようやく空いた席が見つかった。店員に案内されカウンタに座る。「私、カウンタって初めてなんだよね」と千佳ちゃんは喜んだ。飲み放題のコースにして2人とも最初はビールを注文した。 「じゃ、二人の再会を祝って乾杯!」千佳ちゃんが音頭を取る。ふと今日2回目の乾杯だなと思った。 いろいろ話した。大学のこと。バイトのこと。高校のクラスメイトのこと。2人とも話題を作らなくても自然と話が続いた。飲み放題なことをいいことにビールをはじめ、カクテルも数杯あおった。カウンタに置いてあるマッチで煙草に火をつけた。 「ね、西山さんって覚えている?」 「あー、西山弘子さん?」 「そう、あの西山さんに彼氏がいるんだって」 「うそ?」眞人は目を丸くした。 「ホントだって。西山さんと同じ専門学校に行ってるみどりから聞いたんだけどね。もう、信じられなくって。初めてそれを聞いた時、私負けたわって思ったもん」 「あはは、そうだよね。そうなの、あの西山さんがねえ」 「西山さんって影でなんて呼ばれてか知ってる?」 「んーなんだろね。ブス!とか?」千佳ちゃんが大笑いした。 「あっははは。違うって。川越君ヒッドイじゃなあい。そりゃそうなんだけどお、みたいな」千佳ちゃんも結構毒舌だ。「実はね、『山子』って呼んでたんだよ」 「なんじゃそりゃ」思わずカクテルを吹き出す。 「だってさあ、西山さん、自分で『あたしのこと山子って呼んで』っていうんだもん。あ、3年生の初めの頃ね。その時は『あ、そうなの』って流したんだけどあとで考えるとおもしろくてさ」 「それ、おもしろすぎるって。」 「でしょお。ぁ、すいませーん。お銚子お願いします」見ると銚子が5本もあった。なんて女だ。 「千佳ちゃんってお酒強いんだね」 「あ、うーんそうかもね。あははは。」千佳ちゃんの顔をよく見ると薄っすらと化粧をしているのがわかった。頬がほんのりと赤く染まっている。ピアスがキラリと揺れた。 「千佳ちゃんはどうなの?彼氏とかいるわけ?」 「いないんだよね。だから西山さんに彼氏がいるって聞いたとき本当に悔しかったからね。あの山子がーって感じで。あははは。」 「正直高校ん時は普通過ぎた千佳ちゃんだけど今じゃこんなに綺麗になっちゃって。ひょっとしたら彼氏がいるんじゃないかって思ったよ」 「もう、川越君ったらいつからお世辞を言うようになったのよお。実はね大学1年生の時にいたにはいたんだ。けど2ヶ月で別れちゃった。お互い初めての彼氏彼女だったんだよね。私も付き合うってどんなんだろうって。愛じゃなくて興味が先行していたな。やっぱ興味あるじゃない、そういうのってさ。彼氏と一緒に買い物したり食事したりとかって。ほら高校の時ってそんな雰囲気じゃなかったし。親元を離れて一人暮らしも始めて、彼氏がいてもいいんじゃないかってね。でもね、やっぱ長くは続かないんだよね。恋人であることに飽きちゃったわけじゃないんだけどね。その彼氏に本当に好きな人が出来ちゃったわけよ。彼からその事を聞いたとき、えっ、て思ったけどそれほどショックではなかったな。すぐに、あーそうなんだ、じゃあ、頑張ってねってエール送ってたしね。あはは。私にとっても彼にとっても恋愛ごっこだったんだよね。今でも彼とメル友みたいな感じになってるし、会えば挨拶はするし。あはは。それっきり恋愛とは縁のない千佳子さんでした。あ、恋愛じゃないってね。あっははは。今度は川越君の番よ」ぐいっとアツカンを飲み干す。 「俺はねえよ」おでんをつつきながら言った。 「ちょっと、ズルいよ。私ちゃんと話したんだからさあ。言ってみなさいよお」 「いや、ホントに無いんだってば。」 「うっそお、彼女の1人や2人はいるでしょおよお」自分で酒を注ぎそれも一気に飲んだ。 「いや、本当にいないんだってば。そういった話は裕輔専門だから」 「じゃあその裕輔って人を連れてきなさいよお、全部吐いてもらうんらからあ」 「だからね、その裕輔ってさっきバイトに行っちゃったんだって」 「早く連れてきてよお。すいませーん、ジョッキお願いしま〜〜〜す」 「千佳ちゃん、飲みすぎだって」 「れんれん大したことらいって」ろれつが怪しくなってきた。 「千佳ちゃん、口がまわってないよ」 「でんでん平気らって」なんでこうなるのさ。眞人は鼻から小さくため息を出した。 「ねえ、川越君」運ばれてきたビールを飲む。 「ん、何?」 「真沙美のこと好きだったでしょお?」 「な、何言ってんだ」眞人が少し慌てる。 「ほら、おんなじクラスだった真沙美だってば」 「んなことわかってるって。別にそんなんじゃねーって」 「だって、ほら、顔が赤くなってるじゃん」 「なってないよ」 「なってるって」 「なってないって」 「なってるって」らちがあかない。 「なんでさ」 「だってえ、わきゃるもん。あ〜川越君、真沙美のこと好きらんだなあって。女の子ってそういうとこ敏感らんだから。ね、一目惚れだったでしょ?」 「ち、違うってば!」 「別に隠すことらいじゃない。真沙美、可愛かったもんねえ」 「変なこと言わないでよ。千佳ちゃんはどうなんだよー」 「私は川越君が好きだったんだもん」 「なっ・・・」痺れた頭が何かに覆われていくような感覚だった。俺のことが好き?嘘だろう。「おいおい、何言ってんだよ」 「本当らってば。でも川越君は真沙美のことが好きらったんだよねー。あはは。あーあ。私言っちゃたよお」赤かった顔がさらに赤くなっているように見えた。千佳ちゃんはまたビールを飲んでいる。 「ホントに?いやいや、まいったな、おい」眞人は少しおどけている。 「本当らってえ。1年生の時はそんな感情なかったんだけど3年生の時の学祭で一緒に神輿作ったでしょ?なんかその時にね」 「ふうん」 「ふうんはないでしょお」 「あ、ごめん。ちょっと驚いちゃって」 「あはは、めんごでやんす、なんてね。あはは。」千佳ちゃんが笑っている。急に千佳ちゃんが愛しくみえた。「あはは、あたし呑み過ぎちゃったなあ」 「大丈夫?よし、もう帰ろう」 「水飲んでからでいい?」 「ああ。すいませーん。水2つお願いします」眞人は板前にVサインをした。 「川越君、優しいれ」 「あほう、口がまわってないぞ」千佳ちゃんがとても可愛く見えた。 すぐに水が運ばれてきて千佳ちゃんはそれを少しずつ飲んでいる。眞人もゆっくり水を飲んだ。 「ふう、落ち着いた。よし!もう大丈夫。出よっか」 「千佳ちゃん、歩ける?」 「うん、大丈夫」カウンタ席から立とうとするとまだふらふらしている。「ね、腕に掴まっていい?」 「はいはい、よいしょっと」眞人は千佳ちゃんの腕を持ち上げ、千佳ちゃんも眞人に腕にしがみつく形になった。割り勘にした。1人4800円。金額を見てそんなに飲み食いしたのかと思ったが悪い気分ではなかった。 外に出た。雪はすっかり止んでいた。冷たい夜風が顔の横をかけていった。 「千佳ちゃんちってどこ?」 「札幌駅裏の学生会館なんだよね」 「じゃ、送ってくよ」 「川越君はどこに住んでいるの?」 「白石区だけど」 「じゃあ、いいって。一人で帰れるから。だって地下鉄のことだってあるし」 「千佳ちゃん、フラフラじゃない」 「大丈ビだって」Vサインを作っている。 「あほう、どこが大丈夫なんだよ。それにさ、俺んちって橋を渡ってすぐだから地下鉄じゃなくても歩いて帰ればいいし。」 「じゃ、送っれって」 ススキノを抜けて大通まで歩いた。テレビ塔の時計を見るともう10時を過ぎていたので大通り公園のイルミネーションはなくなっていた。 「ねえ、川越君」 「ん、何?」 「気持ち悪い」目眩がした。「トイレ行っれきていい」 「いいよ、大丈夫かい、おい」 「あはは、ごめんね」 大通公園にあるトイレに入った。当然眞人は入れないので外で待つことにした。俺のことが好き?いやいや、まいったね。眞人は小さく笑った。しばらくして千佳ちゃんが出てきた。 「ごめんね。とんだ醜態をみせてしまったね。もう大丈夫だから」千佳ちゃんがふんと胸を張ってみせた。 「でも送っていくよ」別れるのが惜しくなった。「も少し話していたいし」 「じゃ、甘えちゃおっと」 千佳ちゃんの気分がすっかりよくなったのか足取りもちゃんとしていた。大通公園からの帰り道は千佳ちゃんが大学で専攻している『社会言語学』で盛り上がった。札幌駅を横切りあっという間に学生会館の前に着いた。 「今日はありがとうね」 「こちらこそ、楽しかったよ」 「居酒屋で言ったこと、気にしなくていいから」 「ん?」 「私が川越君のことが好きだってこと」 「・・・・・。」言葉に詰まった 「ま、本当のことなんだけど」 「あー、うん。いや、その・・・。あのさ、明日、映画見に行かない?」答えになっていない気がした。ちゃんと答えるのが照れくさかった。 「え、映画?何の?」 「ええっと、ハリボタ見に行こうよ」 「でも川越君、財政厳しいんじゃ・・・」 「あ、全然大丈夫」 「ホントにぃ?」 「うん。」 「じゃあ、ケータイ交換しようか」まだ電話番号の交換をしていなかった。 「いいよ、僕の番号は・・・。」お互い番号を交換した。メールアドレスも交換した。 「明日、連絡待っているね」 「ああ、じゃ、おやすみ」 「おやすみ。また明日お話しよう」 「ああ。千佳ちゃんを飽きさせないぜ」 「あはは、楽しみにしているから」 後ろ向きに手を振って眞人は学生会館を後にした。 また札幌駅を抜け大通公園から東に向かった。 んーちゃんとした返事が出来なかったなあ。好き、か。あれって告白だよね。千佳ちゃんの顔が頭に浮かんだ。右目の下に小さなほくろがある。チャームポイントだなと思った。今日は長い1日だったなあ。 橋にさしかかったところでアゲイン2が鳴った。見ると千佳ちゃんからだ。 (今日は本当にありがとう。まさかあんなとこで会えるなんてね。私の正直ビックリしちゃった。明日の映画楽しみにしているからね。んー、まいっか(何。じゃ、また明日ね。See You Again♪オヤスミ!) 心から愛しく思えた。眞人はすぐに返事を送った。 (あはは、僕も楽しかったよ。あんなに笑ったのは久しぶりだよ。明日もたくさん笑いたいぜ!あ、まいっかって何よ!明日、事情取り調べだぞお( ̄― ̄)。じゃ、おやすみぃヾ( ̄▽ ̄)。) 体の中が歓喜に満ちていた。ポケットに手を入れ煙草を取り出す。2本だけ残っていた。1本取り出しすっかりつきの悪くなったジッポで風が当たらないように手で覆いながら火をつけた。深呼吸をするように煙草を吸い込みそして大きく紫煙を吐き出した。12月の風がどこまでも紫煙を流していった。 またアゲイン2が鳴った。口許が緩んでいるのが自分でもわかった。携帯電話を見る。相馬裕輔だ。目眩がした。 (マコ、何してるの?) あ。 明日の夜に裕輔と飲む約束をしていたんだった。すっかり忘れていたなあ。 (うるせー!) 全く答えになっていない。なぜか裕輔に対しても照れがあった。 明日が楽しみだ。デートってやつですか? ふと空を見上げる。いくつもの星が輝いていた。眞人が唯一知っているオリオン座もはっきりと描かれていた。明日は晴れそうだ。 またアゲイン2が鳴った。場違いな雲がぽっかりと浮かんでいた。
どーでしょうか。ちゃんとした物語を書いてみました。僕の処女作です(w。 完全なフィクションです!でも一部参考したとこもあります。御協力ありがとう(何! 今回、一番難しかったのは女性の考えや感情なんだよね。 千佳ちゃんの彼氏の話なんて難しかったね。
だから女性の目から見ると変なとこがあるかもね。
ま、処女作ということで下手な文章もあるでしょう。 最後まで読んでくれてありがとう! 感想を掲示板に書いてくれると嬉しいです。 ぁ、僕のケータイのメールアドレス知っている人はこっちにもお願いします。
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