カエルと、ナマコと、水銀と
n.446



 がらふ

=がらふ=

ぼやり熱気の平寧。見たよ。見た。やられた頭が、それを追う。取りこぼしては一から、一つ。順を追えば鮮明さが消えていく。僕は、いま、なんのイメージもなく書いているけど。その時は見えてたよ。シンプルさが、笑いそうだ。夢をつづった日記のように、順を追って並べられた子供たちがささやくんだ。右見て。右見て。あ、次は左だよ。その次? その次? 次はね、君のめを月のうらがわ遠くへ持っていく。海からの見て。空から見て。個に戻れば、すべてを見渡せてる。においがする。人工的な、あの、虚構。土の匂いって嗅いだ事ある? 記憶を捜して。太古の記憶でもいいから、芋虫だった君は、葉にしめった水滴の美しさを、快晴をバックに見たのではないの。美しかった。美しかった。ひとつだけなんだ。忘れないように、美しさを、ぼくにだけわかる、その瞬間のぼくにだけわかる文字で書いたんだ。今残っているのは、まだ、熱気と、汗に蒸れた青いシーツの感触。陽だまりの香り。これは、その、人工的だね。



2008年07月14日(月)
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