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『1985年の奇跡』 五十嵐貴久 双葉社 - 2004年01月18日(日)

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五十嵐さんの作品は初読みだが、ホラーから時代小説まで多ジャンルを書き分けれると言う才能を垣間見れた1冊だと言えそうだ。

本作は阪神タイガースが優勝し(昨年の話じゃありません)、日航機が墜落した1985年に遡る。
ちょうどおニャン子倶楽部がデビューして一時代を築いた年。
今で言えば30歳以上の方だったら誰でも知ってる歌手の名前が次々と出てきて、読者のあの頃を想い起こさせてくれる点は懐かしくもありほろずっぱくもあって本作の内容を心地よく盛り上げてる感じかな。

部員がギリギリの9名で勝ったことがない、無名野球高校に転校生が来て、そこから始まる快進撃を描いたものだが、野球の描写よりもその年代でしか味わえない“青春真っ只中”の会話が面白いのである。
転校してくる沢渡はルックスも良く、野球も超一流なんだが・・・
そのあとは読んでのお楽しみかな(笑)

なにわともあれ、冒頭のおニャン子倶楽部のメンバーの好き嫌いで部員同士が喧嘩をするシーンが爽快だ。
メンバー全員が野球に全然熱中していないと言う点を強調されたと言う点においても巧く導入されている。
あと、特筆すべき点は中川校長の徹底した超管理振りである。
彼の存在がラストにおいて物語をより活性化させてる点は見逃せない。

ジーンとくると言う点では川上健一さんの名作『翼はいつまでも』よりは数段落ちるかもしれないが、心暖まるという点では本作の方が上かも知れない。
“恋愛”と言う観点ではやや弱いが、“友情”という観点ではいつの時代でも通じる部分を描き切ってるような気がした。
いわば“痛快青春小説の決定版”と言えよう。

忘れかけていた青春時代の“夢心地”を味わえただけでもよかったなあと思える作品であります。

評価7点

2004年冊目 (新作3冊目)



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