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『眠れるラプンツェル』 山本文緒 幻冬舎文庫 - 2003年12月26日(金)

生きがいを失った28才の専業主婦が隣の13才の少年に恋をする物語。
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並の作家が書けばその設定の無理さから駄作になるのだろうが、山本文緒が描けば見事に料理される。

読者は自分の生活に置き換えて山本さんの作品を楽しむのだが、平凡なように見えても決して現実はそうじゃないんだということを教えてくれる。
気軽に読もうと思ってもふと、のめり込んで読んでしまってる自分に気が付く山本文緒の恋愛小説=“共感小説”と定義づけたく思う。

山本文緒の小説は決してその作品に甘く酔いしれることを許さない。
逆に、大勢の読者が感じている現実を突きつけてくれる。
それもストレートに・・・

本作では特に主婦の日常生活における付き合い方とか、あるいは誰もが持っている空虚感が巧く描かれている。

主人公が過去を回想するシーンを引用したい。
読んでてドキリとする描写にいつも出くわすのは山本作品を読む楽しみのひとつである。
『当時、確かに私は今よりずっときれいだったと思う。コマーシャルに出た時も結婚式の時の写真も、私ではないように輝いている。けれど二十代の前半という年齢で、目の前に好きな男性がいて、輝かない方がおかしいのだ。どんな人間にも旬というものがある。私はまさに、夫と知り合って結婚するまでの数年間が旬だった。そして今ではもう、萎びたセロリのようになってしまった。』



ただ、本作は他の山本文緒の作品より夢があるような気がする。
男性読者の推測ですが(笑)
他の作品は読者の持つ一部分を大きく描いているような気がするが、本作は主人公に誰もがなりえるような気がする。
女性読者が読めば結構“私に似てるなあ”と思ったりするんじゃないかな。
タイトル名からして、汐美ルフィオの将来の幸せが示唆されてるように受け取った方が多いような気がした。
そういう意味において読者にとってその心地よさが受け入れれれば、現実の恋愛や結婚生活において幸せを追い求めることが出来るのでしょうね。

評価8点。


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