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今年のベスト10総括! - 2003年12月25日(木)

今年のベスト10は何と言っても私にとって読書傾向が明確にされた年だと思う。
『図書館の神様』 瀬尾まいこ
デビュー作の『卵の緒』もベスト10にランクインしてもおかしくない作品。
文体にもプロットにもあざとさがなく、作者の誠実さが読者にも伝わってくる作家だと言えそうです。
微力ながら購入することによって専業作家にジャンプしてほしい気持ちも含めて1位抜擢しました。

『武家用心集』 乙川優三郎
現役最高の時代小説家の貫禄を示した作品集です。
人生の苦楽を語ればこの人の右に出る人はいないと信じて疑いません。
これからも地道に創作活動を続けて行ってほしいと思います。

『クライマーズ・ハイ』 横山秀夫

ご存知、直木賞撤退宣言をした横山さんの今年出た4作のうちではダントツの作品。
ノンフィクションとフィクションを融合したような作品であるがその力強さは読者に明日への勇気を与えてくれる。

『あやめ横丁の人々』 宇江佐真理
宇江佐さんも今年はなんと5冊出版されました。どれもがはずれがなくって読者を楽しませてくれるあたりはさすがのひとこと。
その中でも本作が一番作者の魅力が凝縮された作品と言えそうです。

『手紙』 東野圭吾
名作、『白夜行』に勝るとも劣らずの社会派作品。サクサク読める文体と話作りの巧さがうまく融合された作品と言えそうです。
東野さんらしくない(?)、身につまされる話でした。

『送り火』 重松清
“新重松清元年”とも言えそうなほど変化がみられた今年の重松さんであった。初期の作品を愛する方には少なからずジレンマを感じたかもしれない。
全5作品のうち、一番従来の重松さんらしい作品がランクインしたことは少し皮肉な結果となりました。

『いま、会いにゆきます』 市川拓司
ネット界から彗星の如く登場した市川さんの作品です。とにかく文章が美しい。
恋愛小説の原点である“相手に対する思いやり”を強く標榜してる点は称賛したく思う。

『FINE DAYS』 本多孝好
寡作なのが残念な作家さんだ。この人の紡ぎ出す文章は独自の世界を形成していて端正だ。
読後感の心地よさはまさに“本多ワールド”と言えそうですね。

『繋がれた明日』 真保裕一
東野さんの『手紙』とよく似た題材の作品である。主人公の心の動きが素晴らしく表現されている。
題材的にとっても好きなジャンルと言えそうです。

『東京湾景』 吉田修一
書くごとに筆力がアップされてる印象が強い。読者と同じ視線で世の中を見据えている点は自然と共感を呼ぶ。
今後さらに飛躍が期待されそうですね。


今年読んだ本は約150冊、上記は新刊のベスト10ですがそれ以外に旧作ではやはり歴史・時代小説の素晴らしさが目につきました。
やはり“風化されにくい”のでしょうね。

とりわけ大御所的存在の“司馬遼太郎さん・藤沢周平さん・隆慶一郎さん”の3人の作品はそれ以外の作品と一線を画するような気がした。

なかなか時間がとれないが、今後年齢を重ねるごとに歴史・時代小説を読む比率が高くなるような気がする。

来年はどんな本にめぐり合えるのでしょうか。
これがあるから読書はやめられない・・・



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