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『生きる』 乙川優三郎 文藝春秋 - 2003年05月01日(木)

ご存知第回直木賞受賞作で3編からなる中編集です。
著作リストは《こちら》

乙川さんの作品を読めばこれが世の中なんだ!ということを読者に教えてくれる。
完成された情感溢れる文章は彼独自のもので後世にも名を残すだろう。
人の人生のやるせなさというかはかなさを切実に訴えている。
乙川さんの作品の主人公は概ね不器用だ。でも最後は潔い。
決断に迫られて悩みぬく姿は我々の心を強く打つ。

文章自体は宇江佐さんや諸田さんの方がずっと読みやすい。
しかし、独特の哀愁感漂う作品のテイストは読者をも思慮深くしてくれる。

どちらかといえば市井ものというより武家ものを得意としてる作家だと思う。
束縛された中で模索して生きている登場人物は、きっと我々自由に生きてる現代人が忘れてた何かを思い起こさせてくれる。
なんと甘っちょろく生きてるのかなあと反省した。

3編とも皆が“必死に生きてます。”
「生きる」では殉死できなくて忠義を果たせなかったという男が・・・

「安穏河原」では自分の生活の為に娘を女郎に売った男が・・・


「早梅記」では下女であるがゆえに妻としなかった女に対して後悔している男が・・・

他の作品と比べて、より重い感じがする。しかし、物事を真摯に受け止めるということを勉強した気がする。

評価8点。


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