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2006年01月13日(金) |
ぼくのじてんしゃのうしろにのりなよ・2 (べかみ) |
跡部は五分ほどで出てきた。もうじき桜のつぼみが膨らむこの季節、大分温かくなってきたとはいえ、自転車で走るにはまだ少し寒い。そのためか、先ほどの格好に厚手のジャケットを羽織っている。背が高く、大人びた顔だちの跡部は、そうやっていると中学生にはとても見えない。 思わず見とれていた神尾は、荷台に乗ろうとしている跡部の姿にようやく我に帰った。 「お、おい、後ろ向きに座るのか?」 「いけないのかよ」 「いけなくはない…けど、危ないだろ」 「俺のバランス感覚をあなどるんじゃねえぞ。おら、つべこべ言わずにさっさと出せ」 「〜っ」 軽く地面を蹴ってペダルを踏み込むと、二人を乗せた自転車はゆっくりと走り出した。大きな跡部の屋敷が少しずつ遠ざかり、やがて見えなくなった。 「随分揺れるな」 「お前みたいなでかい奴が後ろに乗ってて、そう真直ぐ走れるか!」 「気をつけろよ?神尾。万が一、俺様の顔に傷でもつけたら、明日から太陽の下を歩けないぜ」 「……」 跡部は冗談のつもりかもしれないが、普段の氷帝の様子を知っているとあながちそうとも言い切れない。少なくとも、跡部ファンの女生徒たちは黙っていないだろう。神尾は思わず身震いをして、ペダルを漕ぐ足に力を込めた。
hidali
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