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2003年01月19日(日) さくら続

「手塚先輩!」
 式は何事もなく終わったが、問題は式が終わってからにあった。
 これで何人目か、もう数える気にもならない。
 式がの後、クラスメイトとの別れを惜しむ時間も終わり(尤も、その殆どが高等部でも一緒だから湿っぽい感じではなかった)、手塚はテニスコートへ向かおうとしているのだが、なかなか先に進む事が出来ない。行く先々で、女生徒につかまるからだ。
 数日前に会った時、菊丸が「手塚は覚悟しておいた方がいいよ」と笑い混じりに言っていたが、まさにその通りだった。
 同級生もいたが、やはり下級生が圧倒的に多い。告白だけしていく者、何かを手渡して行く者、「つきあってほしい」と願う者、様々だったが、手塚は自分でも驚くくらい落ち着いて、それらに対応した。
 ことさら冷淡を装ったわけではなかった。たとえ全然知らない相手でも、自分を好きだと言ってくれる気持ちが嬉しくないはずはない、と思う。けれど手塚は終始、丁寧で優しかったがひどく冷静に、女生徒達と向かい合っていた。
 やっとひとりになって、自分には何かが欠けているのだろうか、とそんな事を考えてみたが、やがてテニスコートが見えてきたので、やめた。
 
「手塚!やっと来たな!」
「最後のオシゴト、おっ疲れさーん!」
 明るい菊丸の声と共に笑い声がおきて、手塚は体から力を抜いた。自分では意識していなかったが、結構緊張していたのかもしれない。
 見なれた景色、自分を呼ぶ懐かしい声と顔。
 孤独と心地よい緊張感に満ちた、テニスコート。
 それらは完全な調和と、そして安心感を持って手塚を迎えてくれる。いつのまにか、ここはそういう場所だった。
 群がってくる部員達の向こうに、自分を凝視している大きな明るい瞳を見つけて、手塚は何か、言葉に出来ない齟齬のようなものを感じた。
 
 その瞳の向こう、校庭の敷地を囲うように立ち並ぶ桜は、やはりまだ焦茶色の木でしかない。

 手塚は、今、桜が咲いていればいいのにと思った。



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hidali