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夢に見てしまってそれが酷く痛かった。 昔に似たような夢を見たことがある。5年近く想いを寄せた人の夢だ。随分と昔の話だ。その夢さえも昔の話。去っていくその人を追いかけることも出来ずにただただ泣いていた。[待って]という声も嗚咽に掻き消される。目覚めた現実でも泣いていた。 想いは恋と呼ぶには幼すぎ、また醜悪で、執着とでも云ったほうがまだ近い。己はその想いが遂げられないと知っていた。何故なら彼は己を嫌っていたから。 遂げられない想いを抱え続けることが出来ずに己はそれを放棄した。その人を嫌いになることで忘れようとした。それは成功したと云えるだろう。今その人のことを思い出しても胸が痛むということは無い。現実に遭ったら分からないけれどもとにかく思い出す程度では恋に似た感情は湧き起こらない。 高校時代には誰も好きにはならなかった。それは平穏だったと今になって思う。友人すら満足にいない状況でもそれは確かに平穏だったのだ。 大学で恐ろしくなるほどの人間関係を持ってしまった。心を許すことも、誰かの事情に立ち入ることも、そんなことはしてはいけないことだったのに。 感情はいつまで経っても子供のままだ。忘れるためには嫌いになるしか出来ない。未だ周りも顧みず切り捨てるしか出来ないでいる。
転寝で見た夢は恐ろしいほど現実的だった。返し忘れてたCDを返してほしいと眠っている肩をを揺さぶられる(それはあの方ではなかったけれど)。現実と思い違えるほどの感触。寒さに首を竦めて歩く己の後ろから、肩に触れたあの方の手の感触に振り向くと、もうそこにはいない。何故今日来ているのかと疑問が浮かぶ。真逆と疑う。紛れも無いあの方の後姿に追いつくことが出来ないで、身震いをした。 恐怖に近い感情で身を起こした。悪夢のようだと思った。夢だと知って苦しかった。 苦しいのは夢なのか、それとも夢見てしまった己自身か。
直後に10日ぶりのメール。泣きそうになったっておかしくない。
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