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不安が霧のように己に纏わりついている。捨てられてしまうのではないかという、常に己の中に在る不安が外に流れ出しているのだ。外であり、内である己が身から離れないまま、纏わりついている。何が云いたいわけでもないのに己を焦らせ、不安にさせる。
相変わらず無気力感は拭えない。それを上回るような忙しさがかろうじて己を動かしている。
不自然な身体。不自然な精神。一体どっちが正しいのだろうか。それすらも判らないで彷徨い続けるのだろうか。
[女の子は煙草を吸わないほうがいい]と男たちは云う。それは一種の男女差別だと己も思う。しかしながら己もその言葉を頻繁に使う。そして女性の前では絶対に吸わない。非喫煙者の男連中の前では吸っても、たとえ喫煙者であろうと女性の前では吸わない。 彼女らはいつか子供を産むのだ。今口でどんなことを云おうとも将来的には殆どが子供を産む。或いはそれを願う。望むと望まざるとに関わらず、子供を産まなければならない状況に陥るかもしれない。どういう状況だとしても大半は子供を産み育てることになるのだ。女性は子供を産むべきだなんてことを云っているのではない。その可能性を多分に秘めた身体をしているというだけの話だ。 だから差別的であろうとも己は云う。[女の子は煙草を吸ってはダメだ]。
健康を害するからという理由で止めてくれる貴女を悲しませている。[御免なさい]とも[もう吸わない]とも云えない弱くて強かで卑怯な己にどうか気が付いてくれ。それを許して呉れとも云えない、己は。
不安な童話/恩田陸/祥伝社文庫 1999 ISBN4-396-32677-7 愛と憎しみは一体どうやって判別できるのだろうか。
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