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| 2002年11月06日(水) |
超えられない壁/閉じられた扉 |
[貴方に会えて本当に良かった] そう云えるまでに己はあと幾つの時を必要とするのだろうか。今はまだ云えない。思うことさえ出来ない。
感情は脳に依存して、思うことと考えることは極端に云えば同じことなのではないかと思う。感情が一体何処に在るのかということを己は明確に示すことが出来ない。心臓の在る位置に[ココロ]は存在していない。人間のすべてを脳が司っているのならば精神もまた脳に依拠しているのだと思う。 人間の脳は未知なる領域である。自身の内部に在りながら未だ解明されざる部分である。それ故に脳は興味の対象であり、かつ恐怖の対象でもあるのだと思う。己の一部分であり、己を司るものでありながら、解せない不可思議。 何の根拠も無いが、記憶は生涯消えないものなのではないかと思う。記憶は神経回路によって表層まで伝達されるが、その繋がりが途絶えても蓄積された記憶は生涯消えないで残っているのではないだろうか。表層意識に上らなくなっても消えてしまうことなく脳の容量を喰い続けている。使用者である己自身にすら消去する権限は無い。そうして何かの折に、何でも無い契機で、不意に表層に浮かび上がる。水死体のように。
鬼流殺生祭/貫井徳郎/講談社ノベルス 1998 336p 18cm NDC913 ISBN4-06-182035-4 世界という謎に取り込まれ、その一部となって生きている。
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