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2002年10月27日(日) driver's high

 胃が痛くなるほど煙草を吸って、咽喉を潰すように歌を歌って、それでやっと正気を保っている。口の中の胃液のような味にようやく意識を保っている。そんな状況。劣情を持て余して、他人に心配をかけて、そうして何とか生きている。それが己という人間。
 最初から分かっていたことなのに、言葉にされるとこうも痛いものなのか。それでも鎮静作用のおかげで平静でいられる。青白く浮かび上がった静脈を見ながら、利益と弊害のどちらがどれだけ大きいのか考えた。
 月が青く見えた。雲に紛れて確かに青かった。雲を突きぬけた場所でこのまま冷たくなりたかった。奪われていく体温のままに魂までも奪われて、消え去ってしまいたかった。誰にも知られないで、このまま月下に冷たくなっていたかった。玄関先まで送り届けてくれなければ、そのまま何所かで煙草をふかし、独り冷たくなっただろう。

 考えていた。冷たくなっていく指先と身体を抱えて、考えていた。己自身の存在価値、存在意義。
 同時に思っていた。薄暗い劣情、独占欲。それら全てが消え失せてしまえばいいと。
 悪魔が己の魂と引き換えに願いを叶えてくれるとしたら、唯一つだけこの身の全て―肉体も精神も全て砕いてほしいと願う。全て砕いて飲み干してしまって、何一つ欠片さえ残らないように完全に消滅させてほしい。気配さえ、感情の残滓さえ、記憶さえ残らないように喰らい尽くしてくれ。

 食べても食べても満たされない思いが募る。


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