さくら猫&光にゃん氏の『にゃん氏物語』
目次へ←遡る時の流れ→


2004年01月06日(火) にゃん氏物語 葵07

光にゃん氏訳 源氏物語 葵07

御息所の心の煩悶は ここ数年来しだいに大きくなってきた
信頼できない源氏の愛情と諦めたものの
これっきり終わりと斎宮について伊勢に行ってしまうのは心細く
捨てられた女と噂されるだろう世間体も気になっている
そうだといって京に残るのは安心できない
無視されて恥をかいた車争いの記憶がよみがえる
自分の身の置き所を定めることができず 寝ても覚めても悩むうち
次第に心が身体から離れて 身も心も定まらず具合が悪くなった

源氏は伊勢に行ってしまうことを賛成とも反対とも言い切らない
私のようなつまらない男を深く愛してくれた貴方が 私を嫌だと
遠くへ行く気持ちもごもっともですが 最後まで変わらぬ恋を
続けてくれるのも 深い愛情ではないでしょうか
と言って引き止めているだけなので
気持ちも紛れることもあるかとお禊見物に出かけたのに辛い思いを
経験し かえって全てのことが辛く思いつめてしまった

大殿邸では葵夫人が物の怪が付いたようなようにひどく患っている
父母も誰も心配していて 源氏はお忍び歩きも遠慮する時である
二条の院でさえ時々帰るだけであった
夫婦仲は良くなかったが それでも正妻としてどの女性よりも
重んじて 源氏は特別に思っている
その妻が妊娠しているのに患って悩んでいるので 同情して嘆き
修法や祈祷など大臣家でするもの以外でも源氏は部屋でさせた

物の怪や生霊などがたくさん出てきて 色々名乗りをあげる
その中で他の人に移させようとしても一向に移らず ただじっと
病む夫人に憑いていて 特に激しく病人を悩ますわけもないが
その代わり 片時も離れないものが一つある
すぐれた修験僧にも従ない執念は並の物の怪ではないと見える

左大臣家の人たちは源氏の愛人を誰や彼やと見当をつけていくと
結局 六条の御息所と二条院の君は 特に源氏を愛している
それだから 夫人への恨みの気持ちは深いものだろうと言う
そうして物の怪の言葉から探らせるが特に手がかりがない

物の怪といっても亡くなった者 育てた姫君に愛情をもつ乳母
またはこの家を代々祟り続けてきた怨霊が 弱みにつけこみ
現れ出て来たり そんな大したものではないのが現れてくるが
そんなものは今回の物の怪の主ではないらしい

夫人はただ声を上げて泣くばかりで 時々胸がせき上がるように
とても耐えることができないように苦しがる
どのようになってしまうのかと誰もが不安で慌てがる

院の御所からも お見舞いの使いがひっきりなしに来る
祈祷までも別に行い 心づかいのある恐れ多いことである
こんな夫人に 皆もしものことがなければいいと惜しんで思う

世間の人々が惜しみ嘆いているのを聞いても御息所は不快でいた
御息所は ここ数年来は決してこのようではなかった競争心を
小さな車争いで 大きな怨念として生じさせてしまった
それが どれほどの大きさか左大臣家の人々は気づかなかった


さくら猫にゃん 今日のはどう?

My追加