さくら猫&光にゃん氏の『にゃん氏物語』
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2003年04月17日(木) にゃん氏物語 花宴01(はなのえん)

光にゃん氏訳 源氏物語 花宴01

二月の二十日すぎに紫宸殿の桜の宴があった 帝の席の左右に中宮と
皇太子の見物席が設置された 弘徽殿の女御は藤壺がこのように中宮に
なっていて 自分より上席にいることを何かにつけても不愉快だった
けれども催し物の見物は見過ごせなくて 参上して東宮席にいた

この日はとても晴れていて青い空や鳥の声の清々しい所に親王たちや
高級官人たちをはじめ詩を作る人々は皆 韻字を戴いて詩を作る
源氏は『春という文字を戴きました」と自分の得た韻字を言った
その声だけで すでに人より優れている
次の順番は頭中将で この順番を晴れがましくも不安に思うがきわめて
無難に落ち着いていて 声の上げ方も堂々として立派に見えた

その他の人は 気おくれしておどおどした態度と声の調子だった
ましてや地下の詩人は 帝も東宮も詩などの学問に通じて批評もできる
事であるし 優れた詩人の官人が多くいた頃なので 恥ずかしくて
広い庭の晴れ舞台に立つことは ちょっとの事でも大儀に思われる
年老いた博士などが みすぼらしい格好なのに場慣れしているのには
同情したり感心したりして 面白い趣きで御覧になっていた

舞楽なども 特に優れた者たちが選ばれていた
春の日長がやっと入日になる頃 春鶯囀(しゅんおうてん)の舞が
興味深く舞われていた
源氏の紅葉賀の青海波が巧妙だったことが自然に思い出される
東宮(春宮)が源氏へ挿し花を与えて しきりに舞いを所望する
源氏は断り難くて ゆっくり袖を返す春鶯囀の一節を舞ったが
誰も真似のできない素晴らしさが その一振りだけで解る
左大臣は恨めしさも忘れて涙を落として見ていた

「頭中将はどうした 早く出て舞わないか」
と仰せがあり 柳花苑という曲を 源氏よりは念入りにこんなことが
あるだろうと予想して稽古をしていたのでしょうか上手に舞った
その褒美に中将は御衣を貰った 花の宴にこんなことは珍しいと人々は
見ていた 高級官人も順番も関係なく皆が舞ったが 暗くなってから
上手かどうかもよくわからない
詩を読み上げるも源氏の作は簡単には終わらなく 句を読み上げる毎に
賛美の声が上がる 博士たちも非常に良い詩だと認めていた

こんな時は光のような源氏の君を父君の帝がおろそかに思うわけはない
中宮は源氏の美貌が目に止まる毎に 東宮春宮の女御がどんな気持ちで
源氏を憎むのか不思議に思い またこのように自分が源氏に感心を
持つのもいけないことだと思った

大かたに花の姿を見ましかばつゆも心のおかれましやは
普通に花のように美しい姿を見るのだったら少しも心を隔てて見る事は
ないでしょうに

こんな歌は誰にも見せない心の中の歌なのにどうして世間に伝わって
いるのでしょう 夜が更けて宴は終わりました


さくら猫にゃん 今日のはどう?

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