さくら猫&光にゃん氏の『にゃん氏物語』
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2003年03月16日(日) にゃん氏物語 紅葉賀07

光にゃん氏訳 源氏物語 紅葉賀07

頭中将は源氏の君が真面目ぶっていて 自分の恋愛問題で非難して
注意するのを悔しく思っていた 何くわない顔をして源氏は隠れて
通っている恋人が何人かいるはずだから 何とか一つでも見つけて
やろうといつも思う 頭中将は今夜 偶然にも現場を見つけた
頭中将はとても嬉しく思って このような機会に少し脅かして
源氏を困らせて もう懲りたと言わせたかった
それで源氏を少し油断させておいた

風が冷ややかに吹き通り 夜も更けかけた頃 源氏が少し寝入り込む
だろうと思われる頃合いを見計らって頭中将はそっと室内に入った
源氏は安心して眠る気がしていなかったので この気配に気がついた
典侍の情人で今も未練のあるという修理大夫だろうと源氏は思った
源氏はそんな老人に こんな似つかわしくない ふしだらな関係を
見つけられるのは気まずいと思った

『厄介な事になった 私は帰ります 旦那が来ることは解って
いたのでしょう 私を騙して泊まらせたのですね』と言い
源氏は直衣だけを手に取って屏風の後ろに入った
頭中将は可笑しいのを堪えて源氏が廻り込んだ屏風をばたばた横に
畳み寄せて大げさに騒ぐ
年は取っているが上品ぶって きゃしゃな体の典侍が以前にもこんな
情人がかち合って困ったことがあるので 馴れていて慌てながらも
男が源氏をどうしてしまうのか 心配で床の上に座って取りすがる

源氏は自分が誰とも解らないように逃げようと思ったが だらしない
姿で冠を曲げたまま逃げる後ろ姿は恥ずかしい事だと落ち着き通す
頭中将は何とか自分でないように思わせたくて何も言わない
ただ怒った形相で太刀を引き抜く 女は「貴方さま 貴方さま」と
頭中将を手を合わせて拝む 頭中将は笑い出しそうになった
若作りをして見た目は若いが五十七 八歳の女が見栄も外聞も捨てて
二十前後の若者の間にいて気をもんでいるのは とても見苦しい

頭中将がわざわざ別人を装って恐ろしがらせようとする不自然さが
かえって源氏に真相を教える事となった
頭中将が 自分と知っていて わざとしている事だと源氏は思って
もうどうにでもしてくれ という気分である はっきりと頭中将だと
わかると とても可笑しいので太刀を抜いている肘をつかんで強く
つねった 頭中将は ばれた事が悔しく思いながらも笑った

『本当に気がしれない ひどいね ちょっとこの直衣を着るから』
と源氏は言うが頭中将は直衣を放してくれなかった
『では君のも脱がせるよ』と源氏は言って頭中将の帯を解いてから
直衣を脱がせようとすると 脱げないように抵抗した
引き合ってどちらも直衣を放さないので 縫い目から破れてしまった

包むめる名や洩り出でん引きかはしくほころぶる中の衣に
隠している名も洩れ出てしまうだろう引き合って破れた二人の仲から
明るみに出ては困るでしょう と頭中将が言う

隠れなきものと知る知る夏衣きたるをうすき心ぞと見る
薄い夏衣では隠れるとこがなく この女との仲が解るのを知りながら
わざわざ夏衣を着てくるとは何と薄情な心だと思います
と源氏も負けずに言い返した 二人とも恨みっこなしで だらしない
引き破られた格好で帰って行った


さくら猫にゃん 今日のはどう?

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