さくら猫&光にゃん氏の『にゃん氏物語』
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2003年03月14日(金) にゃん氏物語 紅葉賀06

光にゃん氏訳 源氏物語 紅葉賀06

帝は似合わない二人だなと とても可笑しく思って笑いながら
「真面目過ぎ好色心がなく困りものの男も そうではなかった」
と典侍に言った 典侍はきまりが悪いが 恋しい人のためなら濡れ衣
を着てもいいという人もいるくらいだから 弁解もしない

御所の女房たちが意外な恋と噂した 頭中将の耳にも入ってきた
源氏の隠し事は知らないことがない自分も気がつかないことがあった
と思うと 好奇心も起こって 好色な典侍の情人の一人になった
頭中将も他の人よりは素晴らしいので 典侍はつれない源氏の愛を
補う気持ちで関係したが 本当に恋しいのは源氏ただ一人である
それにしても 困った多情ぶりである

とても秘密にしていたので頭中将と典侍の関係を源氏は知らない
御殿で見かけると典侍は恨み言を言う 年老いているので源氏は同情
しながらも その気になれずに しばらく逢いに行こうとしなかった
その日夕立の後 夏の夜の涼しさに誘われ温明殿辺りを歩いていると
典侍が琵琶を上手に弾いていた 清涼殿の音楽遊びの時には殿方に
加わり琵琶の役をするほどの名手だから 恨み言を言いたい気分の
源氏でも 恋に悩みながら弾く音には心を打たれた

「瓜作りになりやまし」という歌を美しく歌うのは気にくわない
白楽天が聞いた 鄂州の女の琵琶もこんな趣があったのかと源氏は
聞いていたのである 弾き止めて女はとても思い悩んでいる様子だ
源氏が御簾の端に寄って催馬楽の東屋を歌っていると
「押し開いていらっしゃい」と添えて歌うのも普通の女と違う

立ち濡るる人しもあらじ東屋にうたてもかかる雨そそぎかな
訪ねて来て立ったまま雨に濡れる人も誰もいない東屋に
つらく嫌な事に雨が注ぎ落ちてきます
と女は歌って溜息をする 源氏は自分だけに言っているのではない
だろうと思うが どうしてそんなに人を待ち嘆くのだろうと思う

人妻はあなわづらはし東屋のまやのあまりも馴れじとぞ思ふ
人妻はもう面倒です あまり親しくなるのはやめようと思います
と言って源氏は通りすぎたかったのだが あまりに侮辱した事になる
と思って典侍の望み通りに室内に入った 源氏は明るく女と冗談を
言い合っていると こういう関係も悪くない気がしてきた


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