さくら猫&光にゃん氏の『にゃん氏物語』
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2003年03月11日(火) にゃん氏物語 紅葉賀05

光にゃん氏訳 源氏物語 紅葉賀05

典侍は帝の御髪上げの役をして終わったので 帝はお召しかえをする
人を呼んで出ていった 部屋には他に誰もいない 典侍はいつもより
美しく見え 髪の形も艶で 服装も派手で綺麗に見える
源氏はよく若作りをするものだと思いながら どんな気分でいるのか
知りたい気持ちもあって後ろから裳の裾を引っ張ってみた

夏の紙の扇に華やかな絵が書かれていて顔を隠すように振り返った
まなざしは 流し目に引き伸ばしているが黒く深い筋が入っている
似合わない派手な扇だと思って自分の扇と取り替えて見てみると
真っ赤な紙に森の色が厚ぼったく塗られたものであった 横の端に
若々しくはない字だが上手に
森の下草老いぬれば駒もすさめず刈る人もなし
森の下草は老いてしまって役に立たない という歌が書いてある

他に書くことがあろうに嫌味な恋歌だと源氏は苦笑しながら
『そんなことはない
大荒木の森こそ夏のかげはしるけれ
森こそ夏の盛んなことですよ』と言ったが不釣合いな相手だから
源氏は人に見られていないか気にするが 女はそんなことを思わない

君し来ば駒に刈り飼はん盛り過ぎたる下葉なりとも
貴方が来たなら馬にまぐさを刈ってやりましょう盛りの過ぎた下葉でも
と とても色気たっぷりに言う

笹分けば人や咎めんいつとなく駒馴らすめる森の木隠れ
笹を分けて入り行ったら人が注意するでしょう
いつも馬を手なづけている森の木陰ならば
あなたの所は厄介だからうっかり行けません
と言って立ち去ろうとする源氏を典侍は袖をとってとめる

「私はこんなにつらい思いをした事はありません 今になって
すぐ捨てられるような恋をして一生の恥をかく事になるのです」
大げさに非常に悲しそうに泣き出す
『そのうち必ず行きます いつもそう思うが実行できないのです』
源氏は袖を振り放し出て行くのを典侍はもう一度取りすがり
「橋柱」(思ひながらに中や絶えなん)と恨み言を言う
そのことをお召し替えが済んだ帝が襖子から覗いていた


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