ジンジャーエール湖畔・於
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2003年03月31日(月) 美千雪、恋の小田茉生(ミチユキコイノオダマキ)

 

  美しい千の雪が降る日に生まれた男・美千雪(ミチユキ)と、その恋人小田茉生(オダマキ)。
  カラフルな地下鉄の路線図を舞台としたラブストーリーを知っている。
  平日午後3時半の銀座線。
  地下鉄銀座線は、駅に入るまえに一瞬車内の電燈が消えることがある。
  そこで、物語の主人公・小田茉生は見た。
  向かいにすわってる男が、電気が消えた一瞬に隣の女性にキスをした。
  車内が明るくなると、鳩が豆鉄砲を食らったやうな顔をしたその女性と、知らーん顔してる男の姿があった。
  瞬きをしている間のほんのわずかな刹那の出来事。
  男と女はまったくの見ず知らずである。
  まもなく電車は浅草駅に到着し、男は何ごともなかったように降車していった。
  一度も振り返ることなどなく。
  あーゆー遊びがはやっているのかしら?小田茉生はしばらく呆然としていた。
  しかし、その不埒な男こそが約1年後、雷の銀座線で小田茉生と恋に落ちる美千雪である。
    それはそれは東京タワーの高さ333mから飛び降りるような......





  今日地下鉄におかれていた雑誌のインタヴューで浅田次郎がいってたんだけど、


  「地上の電車にのれば、世の営みや喜怒哀楽が窓の外から見えているけれど
 地下鉄の中は人間がいるだけ。その人間が自分の日常を胸の中に隠して乗り込み、
  暗闇の中を疾走していく。そして、地下鉄に乗っている人は思惟する。
 昔のこととか、今やらなければならないこととか、哲学したり、内向する。
 外に目がいかないし、適度な闇が思考を誘うんだろう。」


  あーーー正鵠!正鵠!と心の中で叫んだ。
  ロマンチックな乗り物なのね。
 


  
 (ヒトリグラーシ(イタリア語風の発音で)の部屋で大豆を煮つつそんなこと考えている)




  



  


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