| 2003年03月11日(火) |
国際電話料金の値下げ競争 |
実は3月1日からスリランカの国際電話サービスに競争が導入されました。昨年8月5日、スリランカテレコム(SLT)と日本のNTTComとの間のマネジメント契約が終了すると同時に、政府がSLTに独占を認めていた国際電話サービスに競争が導入されることとなり、その準備が進められてきて、この3月から競争状態になったという訳です。
マネジメント契約期間中、政府とNTTComは順次国内料金と国際料金のアンバランスの是正をしてきました。これは貴重な外貨収入を確保するために高く設定されていた国際料金と、海外先進国から高価な機械設備を導入しているにも拘わらず生活水準を考慮して低く設定されてきた国内料金とを5回(実際は四回しか実施されていない)料金変更を通して修正してきたものです。でも十分是正できたかというとそうではありませんでした。それはスリランカ国内の発展が足踏み状態だったからです。
先週新規参入業者が発表した国際電話料金は我々(SLT)にとってショッキングなものでした。それは従来の国際電話料金の約半額という安さだったからです。SLTはこれに対抗するために同水準まで料金を下げなければなりません。ちなみに例えば「スリランカと日本」の電話料金はSLTの従来料金一分63USセントに対して25USセントという価格です。(利用者としては大歓迎なのですが)
「競争の導入」で価格がどんどん下がるというのは、通信の世界では当たり前なことです。しかし先進国においては、日本の携帯電話やインターネットのように、価格が下がっても新サービス競争が進み、かえって利用が増えることが期待されます。日本の家庭においては確実に「通信業者」への支払いが増えているはずです。これは先進国の「エンゲル係数の低さ」からくることだと思います。発展途上国ではそう簡単にはいきません。さらに国際電話という「特殊」なサービスが大きな価格弾力性を持っているとは思えません。
さらに、新サービス競争というと「固定電話と携帯電話」という構図があります。先進国では固定電話の数は減っています。固定電話はすでに古いサービスになってしまっています。しかし、幸いなことに先進国では固定電話への投資を回収する時間がありました。日本でいうと固定電話は昭和50年代にほぼ全家庭にいきわたり、携帯電話出現まで10年以上固定電話な活躍の時間(投資回収期間)がありました。
しかし、発展途上国では少し事情が違います。高価な設備を先進国から輸入し、固定電話を普及させようししている傍から、いきなり先進国の「携帯電話サービス」が入ってきてしまったのです。そして、固定電話・携帯電話・インターネットの競争が始まってしまったのです。つまり固定電話業者に投資資金回収の期間が十分与えられなかったということです。先進国での技術進歩・サービス開発競争が時間を置かずに発展途上国に押し寄せ、先進国とは別な通信の発展形態を生み出しているのです。
これからは、発展途上国において固定電話投資は投資回収が難しいので、危険を冒してまで大掛かりな取り組みはできないと思います。無線技術の進歩によって「有線」によらない携帯サービスがこれからの主役になるでしょう。
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