長渕剛 桜島ライブに行こう!



不安な夜を過ごしましたか? (桜島ライブ46)

2004年10月22日(金)

『不安な夜を過ごしましたか?』−桜島ライブ(46)

                 text  桜島”オール”内藤





ゴミの問題は、剛が最近出演したラジオでも話題になっていたそうです。
剛の意見は、意外というか、当然というか、
性善説に惑わされない、
イベントというものを十分熟知した人の発言だったようです。


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ニ部三部間・休憩時間 その1



まもなく午前4時になろうとしていました。
5時半くらいには、きっと、明るくなるはず。
それもあって、当初、
ライブの終了予定時間は5時半だったのだと思うのです。
ライブの終わりと共に、
桜島から朝日を引きずり出す。
そんなタイムスケジュールだったことでしょう。

再び、静けさの中にたたずむ僕らでした。
さすがに僕も疲労困ぱい。
ライブ中はあんなに元気なのに、
剛がいなくなると、途端にこのありさま。
アドレナリンなしの、自分の頼りなさときたら・・・。

第一部に比べると、運動量自体は減っていたはずですが、
僕としても、未知の時間帯に突入していました。
これまで、最長のライブは、
2年前の横浜スタジアム、剛のバースデーライブ。
あの5時間ライブを上回る、6時間以上が経過していました。
休憩時間も含めて、
これほど長くライブ会場にいたことはありません。

「トイレ、大丈夫?」

「あと何時間かは行かなくてもいいよ」

「うん、俺も大丈夫。」

僕らは、ブロックを離れることなく、
休憩時間が明けるのを待つことにしました。

「あと、何曲やるかな・・・」

僕はそうつぶやきながら、時計を見ました。
第一部のあとの休憩は1時間以上ありました。
今度も1時間取るとしたら、もう5時だ。
30分遅れて始まった分、演奏するとしても、6時まで。
つまり、たった1時間で終わる可能性もあるのです。

これまでのペースだと、1時間では5〜6曲しかできないでしょう。
『STAY DREAM』
『桜島』
やらないということはありえない曲、は2曲。

次に僕は、ZEPPで演奏して、
まだ桜島では演奏していない曲を思い出しました。
『GOOD-BYE青春』
『愛しているのに』
『何の矛盾もない』
『人間になりてえ』
『Hold Your Last Chance』
『−100°の冷たい街』・・・

ああ・・・これだけで8曲だ。
それに加えて、『Captain・・・』があるとしたら、
それだけで30分は固い。

「これさあ、間違いなく押してるよ。
 7時や8時までやるんじゃないか!」


願望も込めて、ちょっと大きな声で、
僕は友人に向かってそう言いました。

「でもさあ、帰りの飛行機とか、ヤバイんじゃない・・・」

友人が言うことは、その通りでした。
僕らは日程に余裕を取りましたが、
多くの観客は、ライブが6〜7時くらいに終わると踏んで、
帰りの予定を立てているはず。
それを無視して、ぶっ倒れるまで、
いつまでも、いつまでも、ライブをやることは考えられない。

「キャプテン、ないかもね。」

・・・あり得る話に思えました。
友人の冷たい言葉に対して、僕はなにも言いませんでしたが、
かなり仏頂面だったかもしれません。

どう考えても、『Captain・・・』を用意していない、
という事態は許しがたく思えました。
許しがたい、というよりも、
僕がこれまで15年以上に渡って積み上げてきた、
長渕剛という人間に対しての考察の方程式からは、
『Captain・・・』を外すということはあり得ないのです。

大多数のファンが、大きな期待をかけている曲があることは、
間違いなく、間違いなく、剛には届いています。
それを汲み取るか、それとも、何らかの理由でそれをよしとしないのか。
すべては剛の一存にかかっているのです。
僕の結論は、ひとつ!
剛は、ゼッタイにやる!・・・でした。

僕は吉田拓郎の3度に渡るオールナイトライブを思い出していました。
1度目、2度目のラストを飾ったのは、
『人間なんて』という、イベント用の曲でした。
イベント用、というのは、通常のライブでは演奏されない、
お祭り用、発散用、燃え尽き用のイカレた曲、という意味です。

3度目、拓郎最後のオールナイトでは、
『明日に向かって走れ』という曲がラストを飾りました。
『人間なんて』は用意されていませんでした。

このときのオールナイトでは、
『人間なんて』がなかったことに不満を感じた観客が、
相当数いた、という話を聴いたことがあります。
『Captain・・・』はまさしく、『人間なんて』のような曲。

「キャプテンじゃなきゃ、終われないよ。
 ワンラストナイトになっちゃうもん。」


僕は、正直にそう言いました。
ワンラストナイト、とは、拓郎最後のオールナイトの名称でした。
拓郎のことはあまり知らない友人も、
前日、僕が熱弁を振るったこともあって、
僕の意図するところを理解したようでした。

「剛・・・まさか、そのあたりをひねって、
 『明日に向かって』で終わり・・・
 ってこと、ないよね。」


そう言って、友人は笑いました。
拓郎の『明日に向かって走れ』に似たタイトルの、
剛の歌、『明日に向かって』・・・

正直、当たってもおかしくない予想だと思いました。
まだ、『明日に向かって』は演奏されていないし、
『Captain・・・』に対して剛は良くない思い出を持っている、
そういう読みも自分の中にありました。

ラストと思われた第3部を前に、
僕らはどうもネガティブな会話ばかりに終始していた感があります。
唯一の救いは、最初の休憩のときにはなかった、BGMが、
会場に静かに流れていたことでした。
たかがBGMですが、あるとないとでは、大違いでした。

10分近く、ひとしきり友人としゃべったところで、
僕は、僕らの周囲に起きている、ある出来事に気がつきました。

それは・・・・

まったく、信じられない光景でした。

理解しがたい行為と言っても過言ではありません。

面積1平方メートルちょっとくらいの、
小さな場所が僕らの場所でした。
そこに、ビニールシートをひいて、
僕らは縮こまって座っていたのですが・・・

僕らの何メートルか前、そして、すぐ後ろ。
立ちあがり、ビニールシートの土を払い、
なにやら帰り支度のように、
周囲を片付けている観客がいたのです。

そして、それは、間違いなく、
帰り支度だったのです。

彼らだけではありませんでした。
荷物を抱えて、
Aブロックの前方からも観客が後方に向かっていました。

まだ、まだ、ライブは続くというのに・・・
この、申し分のない特等席である、
A−5ブロックを出て行く観客がいるなんて・・・
それも、数人じゃない。
僕が気付いただけでも、5人以上がそうやって、
剛の表情すら見ることができる、ファン垂涎のこのブロックから、
ライブのフィナーレを待つことなく、
引きあげて行こうとしていたのです。



続く



<次回予告>
後ろ髪を引かれる思いで、出口に向かう観客たちの心境やいかに。
やや短い休憩のあと、燃え尽きたい!との願いと共に、
運命の第3部の幕が開く・・・

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