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No-Mark Stall *




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夢に見る黄金。 | 2008年11月07日(金)
金の飾り鈴がしゃんとひとつ高く澄んだ音を立てた。
左の足首につけた純金の輪は歩みに合わせて輝きを返し、鈴の音は絶え間なつ続く。
次第に近づいてくる音の快さに彼は唇の端を吊り上げ、落としていた視線を上げる。柔らかに、けれどしっかりと瞳を捉え見返してくる翠の双眸に更に深い満足を覚え、彼は自ら立ち上がって彼女のほっそりとした腕を取る。
足首の飾り以上に眩い輝きを放つ金の髪を指に巻きつけると、彼女は小さく眉をひそめた。
咎めるような眼差しに笑みを返し、彼は自らの玉座の隣、彼女のために設えられた座へと妻を導いた。


陽光をきらきらと照らし返す水面のような黄金の輝きが視界を掠めた。
それに驚いてはっと目を見開く。
朝を迎えたばかりのまだうす暗い室内を捉え、彼は怪訝として起き上がる。
覚醒する意識が現在の状況を了解し、あれは夢だったのかとひとつ頷いた。
「これは腑抜けと呼ばれても仕方ありませんね……」
あれは誰だったのだろうと心中に影のような呟きが落ちる。
美しい婦人だった。夢の中の彼はそれを愛しげに見やり迷いなくその腕を取ったが、目覚めた彼にとってその感情は、少なくともあの女性に向けるものではありえなかった。戸惑いだけが静かに積もっていく。
「そう、それに服も――」
豪奢で非常に凝ってはいたが、彼の知る世間でははしたないとされるほどに深く切り込みが入り、歩くだけでも太腿まで見えそうな大胆な衣装だった。
あんな衣装が許されるのは娼婦か、更にその下に薄い衣を纏って脚を隠すのが習いの古典劇の役者ぐらいのものだ。
「……古典劇どころか劇そのものも最近見ていないと思うのですが」
はてと彼は首を傾げ、まぁいいかとあっさりと切り捨てた。


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りはびりりはびり。
written by MitukiHome
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