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No-Mark Stall *




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苦手な相手。 | 2004年12月06日(月)
久々に顔を合わせた兄は、あからさまに苛立った表情で廊下の奥をびしりと指差した。
「早く引き取って帰れ。うるさくてかなわん」
「……わかってる」
過去のこともあり、非常に気まずい気分でアンドレアスは渋々返事をしたが、兄の方はそんなことなど気にかけていない様子で彼に愚痴をぶつける。
「分かっているというなら金輪際浮気なんぞするな。発覚の度に家出先にされたらこちらの身体がもたん。全くどうしていつも夜中にやってくるんだお前の奥方は」
「……だからすまないと言っているだろう」
「謝るなら私にではなく奥方に言ってやることだな。まったく何回繰り返せば気が済む?」
「……お前に僕の気分が分かるか」
さくさくと痛いところを突かれて苛立ったアンドレアスがうっかり零す。
軽い冷笑を浮かべて彼の兄はその肩に手をかける。
「分かるわけがないだろう。自分以外の人間など血が繋がっていようといまいと所詮は他人だ。理解しようとする努力まで拒んでおきながらそういうことを言うな」
冷たい言葉とは裏腹に、その表情はとても楽しげだ。
その手を軽く振り払い、アンドレアスは早足で歩き出した。
「相変わらず手厳しい」
「そうか?」
「僕はあんたが嫌いだよ、兄さん」
瞠目した目を瞬かせて、彼は楽しそうにくつくつと喉の奥で笑った。
初めて見る表情に、アンドレアスは何か不気味なものを感じて一歩二歩横に離れた。
「――あぁ楽しい。私はお前が好きだよ、アンドレアス」
「……」
「早く行ってやれ。というか行け」
壁に寄り掛かりながら、ライヒアルトはこつんと扉を叩く。
部屋の内から兄嫁の返事が聞こえて、アンドレアスは一瞬ためらった後、兄を睨みつけた。
しかし彼は、さあ行けとばかりにひらひらと手を振って視線を躱す。
仕方なく、彼は汗の滲む手で扉を開けた。

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途中を大幅にはしょりましたが昨日の続きっぽい話。
そして実は弟を構うのが好きな兄貴でした。
written by MitukiHome
since 2002.03.30