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| 2003年02月25日(火) ■ |
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| 南の話 |
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今日届いた、青山南さんの『南の話』。 これは青山南さんが語る南さんの話ではなくて、アメリカ南部の話という意味。ご本人の体験をもとに書いているわけだから、南さんの話でも間違いではないのだが、内容はアメリカ南部をテーマに、アメリカ南部の文学を語っているもの。
私はエッセイとかはあまり好きではないので、めったにその類は読まない。エッセイとなれば個人的な部分が多少なりとも出てくる。青山南さんは翻訳家だし、黒子である翻訳家のパーソナルな部分は、特別知りたいとは思っていない。しかし、南さんの講座を受けるにあたって、翻訳書ではなく著作も読んでおくのが礼儀かとも思ったし、いくらかは講座を聞く上での予備知識が得られるかもしれないと思って買ってみた。
というわけで、それほど期待していた本ではなかったのだが、この本はすごい!そもそも私はアメリカ南部に興味を持っていたし、南さんの訳す小説も好きだ。そして南部の小説は、今まで読んだ限りではみんな面白い。そうなると、この本が面白くないわけがないのだ。少なくとも私には。アメリカ南部に何の興味もなく、この本に出てくる作家や本についての知識が全くない人(見たことも聞いたこともない人)にとっては、どうでもいいつまらないことかもしれないが。
本を開いた時からわくわくした。ニューオーリンズの話だ。私が絶対に一度は行ってみたいと思っているのがニューオーリンズなのである。そして、トルーマン・カポーティが、『アラバマ物語』を書いたハーパー・リーの隣に住んでいた幼馴染だったというのを読んでびっくり!しかも、物語に登場している準主役級のあのチビ(ディル)は、カポーティをモデルにしているというのを読んだ時には、背中がゾクゾクした。
こういった、どうでもいい雑学ともいうべき事柄は、それぞれの本を読んだだけではわからない。知る人ぞ知る情報なのである。知っている人にとっては、なんだ、そんなことも知らなかったの?といった当たり前の情報でもある。けれども、これを知ると知らないとでは、読んだときの面白さが断然違うのだ。「あのディル」がカポーティだったのかと思うと、俄然面白くなってくるのだ。特に、大好きな本に関する事柄であれば、ぜひとも知っておきたい情報だ。私にとっては、まさに宝物のような情報なのである。
こういうお役立ち情報もさることながら、ひとつ感激したことがある。 一流の翻訳家ともなれば、当然のことながら、向こうの作品は全て原書で読むのかと思っていたら、そうでもないことがわかったのだ。
南さんは、やはり南部の作家であるジェームズ・リー・バークのデイヴ・ロビショーシリーズが好きで、ルイジアナに出かける前にも、バークの『ネオン・レイン』と『天国の囚人』を読んでおり、『天国の囚人』は手元に持っていた。そして、ロビショーの(そしてバーク自身の)故郷であるニューアイビーリアで、「デイヴ・ロビショーひいきの本屋」というのを見つけて感激し、持っていた文庫本を贈呈したという。ちなみに私も『天国の囚人』の原書『Black Cherry Blues』を持っているが、私はあまり好きではない。
ここで私ははっとした!文庫本というのは日本語だよね。英語のペーパーバックなんかあげたって、別に喜ばれはしないよね。てことは、翻訳家だからといって、原書ばかり読んでるわけじゃないんだ!と。
日本語が母国語の日本人であるわけだから、当然日本語で読むほうが楽だし、早い。だけど翻訳家ともあろうもの、やっぱり原書で読まなきゃいけないんじゃないか?などと思っていた私は馬鹿である。翻訳家は英語の達人である必要はないのだ。そのかわり、日本語の達人でないといけない。つまり日本語の本をたくさん読まなくてはいけないのだ。どっちも同じように読めればそれに越したことはないが、いい訳をするためには日本語がちゃんと使えなくてはだめなんである。だから、堂々と日本語で読んでいいのだ。むしろ日本語をたくさん読むべきなのだ。読んでいる本の訳がいいか悪いかは、それはまた別の話。
こういったことは、早稲田のオープンカレッジに通おうと思ったからこそ知りえたことである。オープンカレッジに通う私にとってのメリットは、南さんの本に興味を示し、これを読んだ時点で、すでに何割かは手に入れたようなものだ。本1冊で、これだけの情報が得られたのだから、ご本人の講座なら、もっとたくさんのことが得られるに違いない。今からとても楽しみ。
しかし、私はまたアホなことを考えている。南さんの訳したT.コラゲッサン・ボイルは大好きな作家だが、そのボイルの『血の雨』と『もし川がウィスキーなら』に、南さんのサインをしてもらえるだろうか?などと。
〓〓〓 BOOK
◆Amazonから2冊
『南の話』/青山南 \1600 内容(「BOOK」データベースより) アラバマ、ミシシッピ、ルイジアナ、ジョージア…数多くの小説が生まれる場所、ブルーズの聖地、ヴァンパイアの都、怪しく美しいアメリカ南部をめぐる、みんな南の話。
『第三の嘘』/アゴタ・クリストフ \620 ハヤカワepi文庫。 1巻目の『悪童日記』と2巻目の『ふたりの証拠』に続く悪童三部作の3巻目。
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