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■涙を拭いて、またあ舌
2008年05月30日(金)
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「歯を磨くぞー」

夕食後に子供達の歯磨き。息子・タク(2才)は歯磨き粉を味わうのが好きなので自分でやるが、逆に娘・R(4才)は嫌いなので僕がやらないとダメである。

「ほら、R、おいで」

それまでテレビを見ていたRがクルリと振り返った。口の周りに赤いものが付いているこれは…血か?

「はい、あーんして…ってあれ?」

開いたRの口から見えたものは、やはり、血。舌の先からじんわりと血が滲み出ており、口腔内に溜まっていた。幸い傷は小さなもので出血も少量。放っておけば治るレベル。

「Rちゃん、舌噛んじゃったのか。痛いだろう」

と言うと

「うわああああああん!」

火がついたように泣き出した。

「よしよし、言えなかったんだね。分かるぞー」

あれは僕が小学2年生の頃。休み時間にサッカーゴールによじ登りダイビングするという「バカは高いところが好き」を絵に描いたようなバカなことをし、見事着地失敗して腕を思いっきり打った。

その痛みが尋常じゃなくて、ひょっとしたら骨折かも、治らないんじゃないか、先生に言ったら「なんでそんなバカなことしたの」と怒られるんじゃないか、病院に連れられて手術になっちゃって切られちゃうんじゃないか、という様々な恐怖が湧き上がってきて誰にも言えなくなってしまったのである。

しかし次の体育の時間、腕を曲げようにも痛くて動かせない。

「せんせえ…」

遂に泣きついて速攻病院送りとなった。やっぱり折れていた。

Rもきっと痛くて怖くて黙って我慢していたのだろう。おおこんな小さな子がひとりで堪えて可哀想に。どうりで大人しくテレビを見ていたわけだ。

「よしよし、怖くはないよ。パパもよく噛んじゃうよ」

Rはこくりと頷いて泣くのを止めた。

「だから痛くなったらすぐ言おうね」

こくり。

歯を磨いて口をゆすいでトイレに行って布団に入った。

「パパ、お話しして〜」

「よしよし」

寝る前はRとタクに昔話をするのがいつもの習慣である。

今日は舌切り娘です。なんつって。

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