栃木から帰って来て、すぐお風呂。
まず嫁が先に入って
「子供達、入って来なさーい」
娘・R(4才)と息子・タク(2才)を呼んだ。僕がタクとRの服を脱がせるのだが、タクはバスのミニカー(お風呂用)を握り締めていた。
「なんだ、それ持って行くのか」
「うん」
「よしよし。ほれ行け」
全部脱がせるとふたりとも「ママー」と浴室に入って行った。じゃあ僕も入るべかと
「ちょっとだけよーん」
誰も見ちゃいないのにカトチャンばりに艶かしく脱ぎ始めると
「ぎゃー!バスにおしっこかけてるー!」
浴室から嫁の悲鳴が聞こえた。おそらくタクが放水を始めてしまったのであろう。あのバスのミニカーはお湯に浸かると色が変わる。きっと今も紅葉の如く見事に色付いているだろう。放尿で紅葉。
なんだかドタバタとする音がすると、次はタクの
「ママわき毛あるのー?」
というとぼけた声が聞こえてきた。突拍子もなく何を聞き出すか分からない2才児。嫁は
「ないよ」
と答えていた。嫁は眉ひとつ動かさずウソをつける。
「じゃあパパはー?」
「ボーボーだよ」
おのれ嫁め、勝手なことを言いおって。僕は服を脱ぐのももどかしく、ズバーンと浴室の扉を開けて
「黒木でございまぁす!」
両腕をバンザイしてオヤジのわき毛をとくと見やがれ!と乱入すると、
「すごいんですけど」
Rが冷静なひとこと。なにその「マジありえないんですけど」みたいなギャル風な喋り方。鏡にはバンザイしてわき毛グリコ状態の自分の姿。Rと鏡に自分のバカさ加減を全部跳ね返されてしまった気分である。
「あのー…Rちゃんはわき毛ありますか」
恥ずかしくなってRに聞いてみると
「ないよ」
まさに不毛な話でありましたとさ。
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