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■父は二度死ぬ
2008年02月26日(火)
家族でどこか店に行って昼飯を食うべという話になった時の話。

「Rちゃん、たっくん、何が食べたい」

娘・R(4才)と息子・タク(2才)に聞いてみると

「お子様焼き!」

「お好み焼きだろ!君達焼かれてもいいんか!」

「えー。じゃあオムライス」

オムライスは子供達のリクエスト率が高いメニューである。お陰で近場でどの店でオムライスが食べられるか詳しくなってしまった。

今回はその中からイタリアンだけれどもオムライスもある店で食べることにした。

「くつ、ぬいでいい?」

「たっくんも、くつ、ぬぐ!」

イタリアンだろうがバタリアンだろうが店に入ると必ず靴を脱ぎたがるRとタクは生粋の日本人。脱いでくつろいだRはメニューをペラペラとめくる。

「じゃあRちゃんがお話してあげますね」

メニューを絵本に見立てて「絵本読みごっこ」をしようと言うのである。いつも嫁や僕がやっていることをRもやってみたくなったのだろう。

「ほー。Rちゃんがお話してくれるのか…いや、だがちょっと待て」

以前「お話してあげる」と言った時に聞いたRのオリジナル物語は、確か僕が死ぬ話ではなかったか。僕は病院で死んで、何故か夜帰って来るという訳の分からない話。

物語の持ちネタが増えていなければまたその話をするはず。ここで死亡確認されてしまうと、死人に口なし。口がないとオムライスが食べられないではないか。だから「待て」と言ったのだが、Rは僕の制止に耳を貸さず

「パパは、しんだ…」

…ああやっぱり。そのプロジェクトXみたいな低くて暗い口調はやめてくれ。しかも店の中で…。タクはまだ「死」の概念が分からないらしく聞いちゃいなかったが、そのうち絶対「パパ死んだ物語」をふたりでステレオ状態で語りかけてくるに決まっている。この子達はそういう姉弟だ。

Rは僕を葬った後、タクと半分ずつに分けたオムライスをペロリと平らげた。

「おいしかったか」

「うん。おいしかった」

「たっくんも、おいしかった!」

ぼ、僕が今死んだらこのオムライス代も払えないんだからね…。

僕にとっては「弔いす」になってしまったとさ。

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