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ピザの具とチーズだけを食べていた息子・タク(2才)。
その卑劣かつ意地汚い食べ方に対し、父である僕が威厳を以って立ち上がった。
「タク、そんな食べ方はダメです。きちんと全部食べなさい」
「やーだよ」
どうやら父に威厳があると思っていたのは父だけであったらしい。しかし僕は「きのこの山」のチョコ部分だけ舐めまくるようなもったいない行為を許さぬ。だったら最初から「たけのこの里」を買え、という話だ。
「ほら、コレも食べなさい」
無残に残されたピザの生地部分を差し出すと
「あっかんべー」
またも反抗的なリアクション。これが「魔の2才児」というやつか。基本的に素直な子である娘・R(4才)にはこのようなレジスタンスはあまり見受けられなかったので、今初めて面食らった思いであった。
「こら、なんですかその態度は!」
目を逸らそうとするタクの両頬を押さえ、アッチョンブリケ状態にしてタクを叱る。
「あー!」
遂にタクは奇声を上げスプーンをぶん投げた。言葉より態度で徹底抵抗の意思を見せたのである。
「この排泄物お子様め!」(子供の前なので「クソガキ」等下品な言葉は自粛)
「あー!」
もう魔の2才児などという表現は生ぬるい域に達していた。魔王。そう、最早魔王である。
おーとーさんおとーさん。マイファーテルマイファーテル。
「タク!すぐにスプーンを拾いなさい!」
匙を投げたいのはこっちである、とタクと睨み合いの膠着状態が続いた。その均衡が破れたのは
「パパ、おこらないで」
横からRが僕の袖を引っ張ったことによる。
「おお、お前はタクを庇うのか。優しい子だねえ…」
弟を思いやるよい子に育った…とRの頭を撫でていると
「違うのよ。Rはパパが怒るのが怖いのよ」
このやりとりを高見の見物していた嫁が解説者ヅラして語った。
「僕だって怒るぞ。僕は、タクが改めるまで、怒るのをやめない!」
「あなたは滅多に怒らない人だから、たまに怒ると余計に怖いのよ。私が怒るのは見慣れてるけど、あなたが怒ると非常事態なのよ」
怒るのはレアだけに、その時は怖いという。そういう意味では地震雷火事親父健在、ということなのだろうか。
「んじゃまあ分かったから、タク、スプーンだけは拾いなさい」
「はーい」
怒りモードを解除して普通の口調で言ったら、魔王はあっさりトコトコとスプーンを拾ってピザの残りをガツガツと食べ続けた。押してもだめなら引いてみろってか。
しばらくはこの魔王との攻防が続きそうであり、楽しみなような大変なような。とりあえず一息ついてトイレに行くと、閉めたはずの戸がギイイと開き、
「パパ、何してるのォ」
またもや魔王が!魔王は魔王でものぞき魔王!
何をしてるのかと言われましても、タチション大魔王でございます。
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