実家にいる間、子供達の相手をしてくれた我が弟。
娘・R(4才)も息子・タク(2才)も「おじちゃん、あそぼー」と時には僕を放置プレイにして懐く。
その弟がRに付き合わされて何やら踊りを踊っていた。相手にされなかった僕は箱根駅伝を真剣な目で見るフリをして
「山梨学院大のモグスって黒人。あだ名は『モグタン』なんだろうな」
とか
「箱根駅弁〜淫らな関所を駅弁ファック・花の肉を10人抜き〜」
みたいなAVタイトルとかありそうだ、などと考えていたら
「パパとたっくん(タクのこと)、こんさーとがはじまるよ!こっち来て見て!」
とRに呼ばれた。
「コンサート?」
「Rちゃんとおじちゃんでダンスするの!Rちゃんがお姫様でおじちゃんが王子様」
「そうかそうか。がんばってな」
駅弁、じゃなかった駅伝がわりと面白かったので適当にあしらおうとしたが
「見ててよ!パパとたっくんはお客さん!」
逃げられなかった。
Rは最近「お姫様」に凝っている。ディズニーのキャラクター商品で、白雪姫やシンデレラ他、お姫様キャラを集結させた「ディズニープリンセス」というのがあり、それが好きなのである。クリスマスにシンデレラのドレスをプレゼントしたことから火が付いてしまった。
そしてRの言う「ダンス」とは、どこで覚えたか知らないが王子様とお姫様がお城で踊るような社交ダンスをイメージしている。男女が手を繋いで、男の人が手を上げて女の人がその下をクルリと回るアレ。トワールって言うのか。とにかくお上品なカップルがよく踊りそうな動作。それがRのお気に入りなのである。
勿論Rが勝手にイメージするお姫様ダンスなので、幼稚園のお遊戯が半分以上混ざっており全然上流階級ダンスではないのだが、彼女なりに一生懸命である。それを僕の弟とやるから見ておれと言うのである。
観客役として指名された僕はもうひとりの観客であるタクを無理矢理連れて来た。
「たっくん、ぱずるであそぶの!」
自分の遊びを中断されたタクはイヤイヤをするが
「すまん、お姉ちゃんの晴れの踊りの舞台に付き合え」
と言うと
「え、おどるのォー?」
素直な子でよかった…。
「Y(弟の名)もごめんなー」
出番待ちでボーっと突っ立っている弟にもすまぬと思って謝ったが、実はRと一緒に踊るのはまんざらイヤではないらしい。我が弟、三十路彼女なし。
僕とタクはR達と向かい合ってタタミに座ると
「いすにすわるの!」
Rが顔を真っ赤にして怒る。ギャラリー側にもRがイメージする細かい設定があるようだ。強制ギャラリー。まさにRのジャイアンリサイタル。手ごろな椅子がないので母愛用の「踏み台」の上に座り
「はい、ちゃんと椅子に座ったよー」
とスタンバイした。
「…」
「Rちゃん、まだ?」
Rは何故か無言のまま踊ろうとしない。顔がまだ赤いしプルプル震えている。まだ何か僕らに至らぬ点があるため、怒っているのであろうか。そして相変わらずボサーっと突っ立っている弟。彼女が出来ない理由が分かるような気がする。
「パパ、あのね…」
「ん?どうした?」
「うんち…」
ズコー!!
Rのウンコー状況によりコンサートは急遽延期!
「ではちょっとお花摘みに…」
僕はRを抱えてトイレへ急行。Rはお姫様というより王様になってしまったようである。
便意の王様。
すなわち、ベンEキングである。
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今日もアリガトウゴザイマシタ。