「ちょうど1ヵ月前の今頃…陣痛が来たんだよね」
「あっという間だったなあ」
「早いものね」
僕は嫁と寝床で語り合っていた。
2005年11月2日から3日になろうとしていた深夜11時過ぎ。
今日1日のエピローグ、クロスオーバー・イレブン。
もうすぐ時計の針は12時を回ろうとしています。
今日と明日が出会う時、クロスオーバー・イレブン。
(懐かしいなあ)
息子・タクは10月3日の午前2時45分に生まれた。まもなく生まれて
1ヵ月になろうとしていたひとときであった。
「ということは…解禁」
産後1ヶ月は夫婦の契りを禁止されていたが、間もなく僕の下半身の
妖刀村雨も解禁になり、タマキン全力投球であり、禁欲生活バイバイ
キーンになるはずであった。嫁の体ともクロスオーバーになる瞬間。
しかし嫁は
「疲れてるし、今日はいいよ」
固く心と体を閉ざしたままであった。
「あ、そう…」
既に上半身裸になった僕であったが、行き場を失って虚ろになって
いたら嫁が哀れんだのであろうか、
「すぐ終わるならいいよ」
極めて事務的に、やる気のないソープ嬢のように言った。
「すぐ終わらせろとは…俺は犬か!」
男としてここは怒るべきである局面かもしれなかったが、今はそんな
こと言える立場ではない。怒りより1ヵ月分の悶々が溜まっているので
ある。
「それでは失礼して…」
「はい…」
タクが1ヶ月前に通ってきた道の封印を解く。1ヵ月ぶりに対面するた
その入り口は…。
「…」
「…」
「形、変わってない?」
「うそー?!」
完。
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