殊の外、息子・タク(生後3週間)が泣きまくる日であった。
嫁も二児の母ともなると肝っ玉母さんになったようで、その程度では
動じない。料理に没頭したままである。そうなると金玉父さんの出番
であり、
「おお、タク、何故泣いているの?阪神が負けたから?」
と、抱き上げてあやすのだが、にっちもさっちもどーにも泣いてばかり
いる子猫ちゃん。おそらく腹が減っているのだろうと思い、
「母はあの通りだからとりあえずコレで我慢してくれ」
僕の小指をタクの口元にそっと含ませてやると
「ちうちうちうちうちうちうちう」
おおお。なんという吸い込みだ。池袋のヘルス嬢あたりには必須の
バキュームテクニークだぞこれ。嫁にもこれぐらいの技術があれば
もっと夜も楽しかったろうに。
以前嫁の母乳を飲もうとして(子を授かった夫婦は必ずやると思われ
る行為)結局吸えなかったことがあったが、成る程こういう舌使いで
攻めればいいのか、と負うた子に教えられたまましばし恍惚のひと時。
「ううう、うわあああん」
しかし至福の時間は長くは続かなかった。たとえ生後3週間の赤子とは
いえ、乳首と小指ぐらいの区別はすぐ付くようで、僕の指をぶっと吐き
出してから再び泣き始めた。
「そうだよなあ。お前も男なら乳首吸ってた方がいいよなあ」
結局ようやく台所仕事を終えた嫁が生乳プレイ(授乳と言え)を始めた
ので、タクは泣き止んだ。やはり母でないと駄目なものである。
こうしてタクは貪欲に乳を吸って1日50グラムずつ成長している。
このペースでどんどん大きくなって欲しい。
…と思ったが計算してみたら6年で100キロオーバーになってしまう
ことに気付き、ちょっと戦慄したのであった。
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